大雪の鳥取に行ってきました。

しかも酔狂にも新幹線と在来線を乗り継いで陸路を延々と鳥取駅へ。朝、東京駅を出た新幹線は、関ヶ原付近で雪のため徐行運転を行なっていて、姫路で鳥取行きの「スーパーはくと」への乗り継ぎが無事できるのかどうか、不明な状況のままでした。

結局、ダイヤが全般的に乱れていたせいで「スーパーはくと」も遅延しており、無事に乗り継ぎができました。智頭急行線経由の「スーパーはくと」は、姫路を出ると徐々に山道をのぼっていきます。周辺は雪景色に変わっていきました。

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予定よりはかなり遅れましたが、ようやく鳥取駅に到着。やはり飛行機にすればよかったのか、などと思いましたが、雪の状況が不安だったので、電車のほうが確実だと思ったのです。

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だいぶ余裕を持ってでかけたので、ちょうどいい感じで昼を食べる時間がありました。やはり日本海沿いの街なので、駅中の食堂でお寿司を選択。

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地物を使っているらしく、なかなかおいしかったです。うどん付きで1000円くらいでした。

駅中には鬼太郎ショップも。鳥取市は「ゲゲゲ」とはあまり関係ないと思いますが、やはり観光客の需要があるのでしょう。

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そうして夕方くらいまでに用事を済ませ、再び駅に戻って喫茶店でこの日の予定を検討しました。鳥取に泊まるかどうかは決定していませんでしたが、帰れるなら帰ったほうが、何かとつごうが良かったのです。しかしやはり実際に鳥取まで来てみると、せっかくここまできたので一泊くらいしたいという思いが強くなりました。

一応宿のリストを準備してきていたので、まず「旅館  常天」に電話しました。電話に出た女将さんは上品な感じの話し方で「食事も用意できますけど、寿司屋を兼業していますので夕食をお寿司にすることもできます。どうしますか」といいます。お昼もお寿司を食べたわけですが、そういうことならやはり寿司かな~、ということうでお寿司を頼みました。

そうと決まれば少し時間があるので、まず翌日の朝一の電車のチケットを買ってしまい、街中へでかけました。

今年はどこも雪が多いようですが、タクシーの運転手さんの話しによると、今年の鳥取は昨年末にドカ雪がきて、それが消えきらないうちに、何度か大雪があったようです。そういえば、クルマの渋滞が雪が閉じ込められて、夜明かししたという事件もあったような気がします。

そうはいっても鳥取市内は、それほどの雪ではなく、中心街はアーケードが多いので、そんなに歩きにくくありません。

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食料品をのぞいたりしながら歩いていくと、川にかかった橋にぶつかりました。

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こうしてみるとけっこうすごい積雪量です。そのへんを歩き回っているうちに日が暮れてきて、グッと寒くなってきました。ほんとうはお城の跡などにも行ってみたかったのですが、ちょっと寒さにへたれてしまい、早々と宿に入ることにしました。

宿は大通りから少し路地を入ったところにあります。

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雪のせいか、なんとなくうらぶれた雰囲気の路地。現代の日本とは思えない感じ。左手に宿が見えてきました。

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見たところ普通の家で、お寿司の店舗と宿の入り口が隣あっています。下はお寿司屋入り口。

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誰が作ったのか、玄関前には雪だるまもいました。炭で目鼻をつけたけっこう本格的なでかいやつです。

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玄関を入って声をかけるとすぐに女将さんが出てきました。「電話した者です」というと、「はいはい、いらっしゃい」てな感じで、早速部屋に通してくれました。玄関は狭いですけど、最近リフォームしたのかけっこうきれいな感じです。

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しかし建物自体はかなり古さが感じられます。私としてわくわくするようないい雰囲気。

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ちなみに部屋の名前は「砂丘」でした(笑)。

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女将さんがお茶を入れてくれながら、「本当だったら近所に温泉銭湯がいくつかあるのでおすすめしているんですけど、この雪だと道もあぶないので、家のお風呂にしますか?  そんなに広くはないですけど」というので、私もいまさら外に出るのが面倒なので、食事の後に家の風呂に入れてもらうことにしました。

女将さんによると、この宿は昭和9年に寿司屋として創業し、お座敷を貸したりしていたそうです。しかしその後鳥取市に大火があり、家も焼けてしまったので、昭和20年代に立て直したのが今の建物だとか。そして座敷を使って旅館を兼業するようになったそうです。

「火元からここまではけっこう遠くて、間にお掘りもあったのですが、みるみるうちに延焼してきてどうしようもなかったそうです」と女将さんがいいます。確かに鳥取市は大きな城下町の割には古い家が少ない。そんな感じがしたのですが、大火には何度かあっているということでした。

近所の観光スポットもマップを持ってきて教えてくれました。なかなか学のある女将さんで、歴代の鳥取城主にも詳しいようでした。「古い家はあまり残っていませんが、当時の町割もだいたい残っていて、山沿いには“仁風閣”という見どころもあります」ということです。私としては翌朝すぐに帰りの電車に乗るので、そういったところは訪ねられそうもありませんでしたが、なかなかおもしろい話しでした。

女将さんが「うちの宿はどうやって探されたのですか」というので「ネットで」というと、「近頃はビジネスホテルに泊まられる方が多いのでなかなか大変です」ということでした。「いやあ、ビジネスホテルなんかどこに泊まっても同じなので、私はいつも何としてもビジネスホテルだけは避けようと思って、宿探しをしています」というと、「そんな方がたくさんいればいいんですけどねぇ」と嘆息しておられました。

やはりそういうモノ好きはあまり多くはないようです。

夕食まで時間があるので館内を探検。

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廊下の一部にソファが置いてあり、マンガなんかも備えてありました。

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複雑な構造のようですが、なかなか風情を感じる建物。いかにも昔の旅館のような感じがします。

時間になったので、一階に降りると、女将さんが出てきて外にでなくても店に回ることができる秘密の通路を案内してくれました。

カウンターにはご主人ともうひとりのおっちゃんの2人体制。ほかに客はいませんでした。お寿司は席につくと順次おまかせのネタで握ってくれました。

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やはり地物のネタ中心だそうで、特に旬のネタとしては、「モサエビ」とか、甲羅の柔らかい「若松葉ガニ」などを出してくれました。「若松葉ガニは身が少ないけれども、むしろ味としてはおいしいと思う」とご主人はいってました。あとイカもおいしかった。

いろいろ昔のことを話してくれて、おもしろいので時間を忘れました。ビールとお酒を飲みながら、話し込みましたが、雪については「昔はこのへんはもっと降って、2階から出入りするようなこともあった」ということでした。やはり大雪とはいっても昔よりは少なくなっているようです。

私は近いうちにまた鳥取に遊びに来ようと思ったので、見どころなどを聞いてみると、少し離れた「智頭」に、なかなか見どころのある古い商家があるそうです。その写真も見せてくれました。「智頭」は、電車で通ってきたのですが、街が雪に埋もれている感じでした。あんなところで古い宿を探して一泊してみるのもいいな、と思ったので、次回は行ってみようと思います。

けっこう粘ったあげく部屋にもどると布団が敷いてありました。

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2階の部屋の窓を開けてみるとかなりきつめの寒気が入ってきます。宿の前には何となくそそられるような居酒屋の赤ちょうちんも見えたます。しかし寒いので今回は勘弁しておくことにしました。

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お風呂は家庭用よりは立派で、びっくりしたのは浴室内にもエアコンがあって、女将さんは「寒かったらつけてください」というのですが、「普通は付けるんですか」と聞いたら、「いえ、お好きなように」ということでした。実際のところ寒かったので、私は暖房を付けてお風呂に入りました。

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この日は長旅で疲れていたのか、気がついたら眠ってしまっていました。朝早く目が覚めたのですが、寒いのでしばらく布団で待機。しかし電車の時間が決まっているので、早めに頼んでおいた朝食の時間がきてしまいました。

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きのう食べたイカのゲソがタレで焼いてあって、すごくおいしかったです。

出がけに女将さんに「ご主人の話しがおもしろかったと伝えておいてください」というと、「ふだんはあんまりしゃべらないんですけどねぇ」といってました。この日も朝から雪が舞っていて、玄関の外には少し積もっています。女将さんがスコップで道を作ってくれたので、そこを通って出立。

宿から駅までは歩いて10分かからないくらい。途中の脇道では鳥取市民が懸命に雪かきをしておりました。

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すぐに鳥取駅に到着。天気はすっきりせず、この日も断続的に雪が降り続けるようです。

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鳥取駅の売店で「鬼太郎キャラメル」を買って、電車に乗り込みました。来た時とおんなじ「スーパーはくと」。姫路まで出て新幹線に乗り換えます。山陰側の山は、やはりかなりの積雪です。

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それに対して山陽側に出ると、あまり天気は良くないものの、一転して雪はほとんどありません。つくづく日本列島は真ん中の山脈をはさんで気候がまったく違うな、と実感しました。

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そういうわけで、どこに寄るでもなく、ただ一泊しただけの鳥取滞在でした。しかし独特の風情のある宿といい、趣のある山陰の風土といい、私としては改めて魅力を感じました。近いうちに再び山陰を訪ねる予定があるので、今度はもう少しゆっくり回ってみようと思っています。

[旅館  常天](2011年1月宿泊)
■所在地 〒680-0831  鳥取県鳥取市栄町230
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