日本ボロ宿紀行

ボロ宿にあこがれ、各地のボロ宿を訪ねています。

岐阜の宿

「ボロ宿」というのはけして悪口ではありません。
歴史的価値のある古い宿から単なる安い宿まで、ひっくるめて愛情を込めて
「ボロ宿」といっています。自分なりに気に入った、魅力ある宿ということなのです。
もともと、できるだけ安く旅行をしたいということから行きついた結果ではありますが、
なるべく昔の形を保って営業している個性的な宿を応援していきたいと思います。
湯治宿や商人宿、駅前旅館など、郷愁を誘う宿をできるだけ訪ねて、
記録に残していくこともいずれ何かの役にたたないかなと‥‥。

昭和6年創業。木造本館や洋館が立ち並ぶ老舗旅館 [下呂温泉 湯之島館]

今回はあらゆる意味で“ボロ宿”ではないので、こんなブログに載せてしまうと問題になるかもしれませんが、話の流れなのでさらっと紹介しておくことにします。下呂温泉の「湯之島館」です。

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高山市内見物の後、暗くなってから下呂温泉に移動し、駅まで迎えにきていた送迎バスに乗車。高台にある「湯之島館」に向かいました。

泣く子も黙る高級宿なので、私一人では絶対に泊まることはない宿。しかし考えてみれば私は下呂温泉といえばここにしか泊まったことがありません。前はバイクツーリングで来ていて、今回で3回目。歓楽色の強い温泉街から離れ、静かで自然が多いのが魅力でしょうか。

もう暗くなってしまいましたが、バスは宿の入口に到着。チェックインすると、まず女性客には浴衣を選ばせてくれます。浴衣があるだけましという宿ばかり泊まっているので、こういうのは感心します。

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浴衣選びが終わると広い広い館内を仲居さんの案内で部屋へ。

エレベーターもあり、階段もありなかなか覚えにくい構造です。敷地は5万坪もあるとか。

私は3回目なのでだいたいわかるのですが、今回、かみさんと義理の母はお風呂の帰りに本気で迷子になってしまい、なんとかフロントに戻って助かったそうです。

部屋は私が日頃泊まっている宿と比べるとやはり立派です。

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アメニティグッズもしゃれてますね。

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変な形をしたあがりの間も。

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室内には奥に向う廊下があり、お風呂やトイレがあります。

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お風呂はこんな感じ。部屋でも温泉に入れるというわけですが、まあ、あまり利用する人はいないでしょう。

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それというのも、この宿には大浴場や露天風呂のほかに、貸し切りの家族風呂がいくつかあって、それに入るだけでもけっこう忙しいからです。

今回大浴場のほかに私が入ったのは、お座敷の脱衣所がついた風呂。

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家族風呂のもそのほかいろいろあります。

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デッキのような構造のところには足湯もありました。

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今回少し館内を探検してみたのですが、洋館部分には劇場風のホールがあって2階席もついていました。ここは要するにカラオケスナックみたいなものですが(違うか)、大きなホールになっています。

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卓球場も。

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下呂温泉の夜景が見える展望室もあったのですが、写真がうまくとれませんでした。

とにかく広いので、全部回っているときりがないほど。館内スタンプラリーというのもあって、全部のスタンプを押すと売店のおみやげが10%引きになります。私はひまなので、今回はスタンプを完成させ、おみやげを10%引きで買いました。

夕食もなんだか豪華で手間がかかっています。
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こうなるともう、ひとつひとつは何だかよくわかりませんが、飛騨牛はおいしかった。

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3人分のふとん。敷き方が斬新だと思ったので写真を撮ってみました。

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朝食は広い食堂で食べました。やはり朴葉みそ付きだったので、つい朝からビールを飲んでしまいました。

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ちなみに会計の時に朝のビールが付いていなかったので「しめしめ」と思いましたが、やはり気がとがめるので自己申告して払ってきました。

出発前のロビー。囲炉裏付きの雰囲気のあるスペースです。

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到着時には暗くて良く見えませんでしたが、やはり歴史を感じる外観です。

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この日特に計画もなく、かみさんと義理の母親という、手のかかるのを2人も引き連れてどうしようかと考えていましたが、送迎バスが「合掌村」というのに行ってくれる、というのでそこに行ってみることにしました。

送迎バスは下呂駅にいったん寄って、ここで降りる人を降ろし、合掌村に行く人は荷物をコインロッカーに預けて、改めて送迎バスで送ってもらいました。

私は白川郷や五箇山といった本物の合掌造りの村を見学したことがないので、前から興味を持っていました。合掌造りの民宿にもいずれは泊まってみたい。

今回は移築したものとはいえ、合掌造りの家がたくさんある「合掌村」に行ったのは大正解でした。なかなか本格的でおもしろいところでした。

こんな感じの風景。合掌造りの家もたくさんあります。

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部屋に上がって写真を撮ろうと思っていると、囲炉裏端のおっちゃんがポーズをキメてくれました。そのまま撮影すると、このおっちゃんが「あんた写真のプロかい」と聞いてきます。「そんなわけないでしょ」というと、「この部屋にきてフラッシュをたかないのはだいたいプロなんだよ。暗いからといってフラッシュをたくと煙で何にも写らない」ということでした。
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その後も、見物にきた若者を囲炉裏のそばに座らせて、いろいろ講釈しておりました。なかなおもしろいおっちゃんみたいでした。

この家も2階の養蚕室など、なかなかおもしろかったのですが、完全にウケ狙いの人物模型はいかがなものか。ばあちゃんがかなり怖いですね(笑)。

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何とこの家がかの平沢勝栄先生の生家を移築したものだとは驚きました。

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しかし合掌造りの家というのはやはりいいですね。あこがれます。

最後にちょっと小腹が空いたので「合掌茶屋」というところでそばを食べてきました。

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このそばがなかなかおいしいやつでした。

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そんなわけでかみさんと義理の母親をつれた旅は無事終了しました。帰りは名古屋で「信長膳」という駅弁を買ってみましたが、これもなかなか良かったです。焼きおにぎりというのが珍しい。

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[下呂温泉  湯之島館](2011年12月宿泊)
■所在地  岐阜県下呂市湯之島645番地
■泉質  アルカリ性単純泉
■楽天トラベルへのリンク→下呂温泉 湯之島館

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風情のある温泉付きの旅人宿 [飛騨高山 お宿 吉野屋]

今年はなぜか名古屋周辺への出張が多く、12月に入ってまた行くことになりました。新幹線で行くと名古屋は近いので、日帰りすることが多いのですが、今回は週末だったこともあり、義理の母親とかみさんを誘って待ち合わせて、高山と下呂温泉に行ってみることにしました。

私は名古屋での仕事が午後からだったので、その日の夕方に高山まで移動して一泊。その翌日に高山で合流し、ちょっと市内観光をした後、下呂温泉に移動して温泉で一泊という計画です。

いつもひとりでぶらぶらしているのとは違い、義理の母親をつれていくとなるとそれなりの宿に泊まらないとならないわけですが、下呂温泉の宿は何回か泊まったことがある高台の「湯之島館」を予約しました。

その前日に自分ひとりで泊まってみたのが高山市内の「吉野屋旅館」です。今回は朝食付きで予約しました。

宿についた時の写真がこれ↓。ほぼ満月。

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この日は3時くらいに名古屋駅に戻り、高山に行くのに電車で行くか高速バスで行くか迷ったのですが、ワイドビューひだは何回か乗っているので、バスに乗ってみることにしました。

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とりあえず名鉄のバスセンターに行ってみると4時出発の高山行きがあったのでこれのチケットを購入。1時間くらい時間があったので、地下街で回転寿司を食べ、天むすを買いました。この日の夜は夕食を予約していなわけですが、もし宿の近くに何もなくても天むすがあれば大丈夫という作戦。

夕暮れが迫り、やがて暗くなっていく中をバスは走っていきます。

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このバスは濃飛バスというやつでしたが、途中で長良川SAで休憩があります。コーヒーを買ったくらいですぐにバスに戻りました。しかし後でわかったのですが、この日はどこかの人騒がせな老夫婦が、古い接着剤などをSAのトイレに捨てたやつが発見され、危険物ではないかと大騒ぎになっていたそうです。午前中は長良川SAも閉鎖されていたとか。

そんなこととは知らず、名古屋から2時間くらいで無事高山駅に到着。もうすっかり暗くなっていました。

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宿に伝えていた到着時間は過ぎていたので、駅前のコンビニでワンカップとビールを買って、すぐにタクシーに乗車。たぶん駅からは十分歩ける距離だと思いますが、時間も遅いし寒いのでタクシーにしました。

着いてみると最初に紹介したように期待以上に良さそうな外観です。飛騨国分寺前の通りをまっすぐ行き、高山別院のすぐ近くにありました。けっこう歴史のある建物ではないかと思います。

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入り口の格子戸なども、なんとなく風情を感じます。こういうのを見るだけで、きて良かったと思ってしまいます。

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近くに飲食店も見当たらず、面倒なのでこの日は天むすだけを食べることにして、すぐに宿にチェックインしました。

出てきたご主人らしきおっちゃんは、ちょっと上品そうな感じの60代くらいでしょうか。

「まず先にお風呂とかをおしえておきます」といって、1階の廊下を奥に向かい、「トイレはここ。2階にもありますけど数が少ないので」などと解説していきます。お風呂は「一応温泉で、朝は6時から入れます」ということでした。

こういう古い町宿で朝もお風呂に入れるというのはすごく貴重です。だいたい温泉であること自体が珍しい。すごく寒い日だったので、お風呂の価値はさらに高まります。

そして入口付近の階段に戻り、2階の部屋に案内してもらいました。さらに上に向う階段もあったのでここは木造3階建てのようです。

部屋もなかなかきれい。

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部屋の鍵にはさるぼぼがついていました。

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この家は古いとは思いますが、内装や設備は近代化されているので、かなり手を入れたものと思われます。

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ご主人にこの家はいつごろの建物かを聞くと「昭和二十年。創業はもっと古いんですが、終戦間際に目の前の通りが軍の命令で拡幅されることになって、この並びは古い家が全部取り壊されました。そしたらその半年後に終戦ですよ。もしそれがなかったら、このへんも上三之町などと同じように、古い町並みが残っていたはずなんですが」ということです。それはすごく残念。

高山は空襲を受けていないので古い町並みが残り、観光の目玉になっています。しかしやはり戦争の影響がこんなところにあったということです。

付近の見どころについてもいろいろ教えてくれました。この宿がある場所から歩いて市内どこでもいけそうですが、近場では「飛騨まちの博物館」が最近新しくなって見る価値がある、ということでした。いろんな記念館や古い建物だけでなく、高山城址も少し歩けば行けるということでした。

私は高山は陣屋があるので天領だと思っていたのですが、お城もあったとは知りませんでした。


私は「それもそうなんですけど、それよりおいしい高山ラーメンの店を知りませんか」と聞いてみました。

実は私は昔高山に遊びに来た時に、すごくうまいラーメンを食べた記憶があるのです。その店はちょっと休憩に入った喫茶店で、女主人に「おいしいラーメン屋を教えてくれ」と頼んだところ、店の客全員に大声で「おいしいラーメン屋さん知ってる人?」と聞いてくれて、お客で来ていた人々の多数決で推薦された店だったのです。さすがに地元民の多数決だけに本当においしかった。

しかしだいぶ前の話で、店の名前も場所も忘れてしまいました。そこで翌日のお昼を食べるために、改めて宿のご主人に聞いてみたわけです。

主人は「おいしいラーメン屋ですか。それは難しい。ラーメンには好みがあるからねぇ~」と悩んでいます。

その気持は私もよくわかります。自分がうまいと思っても、誰にでも当てはまるわけではないので、簡単に「ここ」と一口にいうわけにはいかないのです。

「なるべく典型的な高山ラーメンがいいんですが」というと、「じゃあ2~3軒、地図に書き込んで持ってきます」といって下に降りていきました。

すぐに戻ってきて地図に書き込んでくれた店が2軒。「なかつぼ」と「桔梗屋」でした。「桔梗屋」は超有名店なので名前だけは知ってましたが、「なかつぼ」は知りませんでした。ご主人の話によると、「どちらも私が子供の頃からあったような昔ながらの高山ラーメンで、支那そばっていう感じですかね。味は濃過ぎるという人もいるけれど、私はそれくらいのほうがちょうどいい」ということでした。

「桔梗屋」は純粋なラーメン屋で、「なかつぼ」は餃子とかビールとかもあるそうな。「私は『なかつぼ』に行くことが多い」ということでした。

私としてもそのどちらかに行くことに決定。ご主人にお礼をいって、お風呂に入ることにしました。お風呂は温泉であり、こじんまりとしていますが浴室は2つありました。空いているほうに鍵をかけて入っていいそうです。

私が下のお風呂に行くと、ひとつは誰か使っているようでしたので、大きいほうのお風呂を使いました。

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かなりきれいで新しい感じです。循環していますが、やはり温泉はいいな~。

部屋に戻ってすぐに食事。といっても天むすが少しあるだけ。ビールとお酒を買ってありましたが、寒い日なのでビールはやめておいてお酒だけ飲みました。こうして写真を見るとかなりわびしいですが、どうせ翌日は豪華夕食付きの旅館なので、こんなもので十分です。

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その後は隣の部屋がパソコン室兼喫煙室になっているので、そこで少し過ごしました。囲碁もすぐにできる状態でセットしてありました(笑)。一晩いましたがどうも物音ひとつせず、2階には誰も客はいないようでした。

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翌朝も6時に起きてお風呂に入り、7時半くらいから朝食。玄関脇の食事部屋に行こうと階段を降りるとご主人が出てきました。「もう食べられますか」と聞くと「ああ、もう準備できてます。私は何にもやってないけど」と笑います。

部屋に入ると食事の準備ができていて、こんな感じ。

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女将さんらしき人が出てきて朴葉味噌に火をつけてくれました。「今日は高山でも今年一番というくらい寒い」といってました。

朴葉味噌は飛騨牛入りの豪華版。

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漬物はあとから追加で持ってきましたが、これがすごくおいしかったです。

ここのご主人はいろいろ博学そうな人でしたので、出がけにもう少し話もしたかったのですが、どうもちょっとばたばたしているようだったので、すぐに出かけることにしました。

改めて明るい時に撮影した宿の外観。やはりなかなか立派で風情があります。

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この日はお昼に高山駅でかみさんと義理の母と待ち合わせているので、それまではフリータイム。宿からぶらぶら歩いて古い町並みを見たり、高山陣屋の朝市なども行ってみました。

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クリスマスが近いのでこんなのもいました。

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寒いので古い喫茶店に入ってコーヒーを飲んでみたり。大正ロマンみたいな喫茶店でしたが、ここの主人は慣れているせいか外人觀光客にもちゃんと英語で応対していました。えらいものです。

そして昼頃無事に落ち合って、まずは宿のご主人に教えてもらったラーメン屋へ。古い歓楽街みたいな裏道を探すと、「桔梗屋」がすぐに見つかって、行列もできていなかったのでここに入ることにしました。

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やはりおいしかったです。それにしても私が昔食べたすごくおいしかった店はどこにあるのでしょうか。謎のまま残ってしまいました。

そのあとは型通り上三之町、上二之町などを見物。だいたいみんなが行くようなところをきっちり回りました。

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味噌汁の無料サービスを試したり、喫茶店でぜんざいを食べたり。

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ここで宿屋も見つけました。「旅館河渡」。後で調べてみたら素泊まり専門の宿のようですが、場所的にはすごくいいので今度はここにも泊まってみたいと思います。

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かみさんが昔泊まったことがあるという「長瀬旅館」も訪ねてみました。すごく良さそうな建物ですが、どうも近年結婚式場になってしまったみたいです。

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再び陣屋にも行ってみて、中も見学してきました。もう何度も見てますが、例によってお白州を撮影。

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そんな感じで夕方になったので下呂温泉へ。特急電車で下呂温泉に到着したのが6時前くらい。

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宿のバスが待っていたので早速「湯之島館」に直行したわけですが、その話はまた次回にします。

[高山市  お宿  吉野屋](2011年12月宿泊)
■所在地  岐阜県高山市馬場町2-89
■泉質  低張性弱アルカリ性泉
■楽天トラベルへのリンク→お宿 吉野屋
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平安時代創業の東山道の宿。座敷には旅籠時代の趣が [関ヶ原 旅館 桝屋]

先日、名古屋から京都へと一泊で移動するという用事ができました。

名古屋で仕事をして、翌日の午後は京都。宿泊するのは京都でもいいし、名古屋でもいい状況でした。でもせっかくなのでふだん通り過ぎるだけのどこか小さい町で泊まってみようと、関ヶ原で宿を探しました。なぜか関ヶ原にあこがれがあったからです。何より歴史上最大の決戦である「関ヶ原の戦い」の古戦場として有名。ふだん新幹線でも在来線でも、山に囲まれた関ヶ原盆地を通りますが、関ヶ原付近から伊吹山山麓あたりの天気は、なぜかほかとまったく違うことが多いという不思議なエリア。前から探訪してみたいと思っていたところなのです。

こんな機会はめったにないので、しめしめと思って宿を探し、結局予約をした「桝屋」は、創業が永長元年というす ごさ。そんな元号聞いたことがなかったので、どれくらいすごいのかピンときませんでしたが、西暦だと1096年でした。平安時代です。もちろん建物はずっと新しいのですが、それでもそんな歴史のある宿ならぜひ泊まってみたいと思いました。

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名古屋から京都まで通しの普通乗車券を買って電車に乗り込み、夕方関ヶ原駅に到着。実際駅に着いてみると、有名な地名とは裏腹に駅前はひどく寂しく、観光用の地図はあるものの、売店ひとつありませんでした。もっと観光化されているとばかり思っていました。

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駅から見ると夕焼けのシルエットで、石田三成が布陣したという笹尾山が浮かんで見えます。

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一方反対を振り返ると徳川家康の本陣があったという桃配山もすぐ前に見えています。こんなせまいところで大軍が対峙したわけですから、それはものすごく激しい戦いだったのでしょう。

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「桝屋」は駅から歩いて1分くらいの旧中山道沿いにあります。すぐに着いたのですが、宿に入る前に薄暗くなった付近を歩いてみました。何しろここは古代からの交通の要衝で、伊勢に向う街道もありました。しかしその道はただの狭い路地でした。こんな何でもないような道が重要な街道だったわけです。古そうな家もたくさんありました。

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宿の玄関に当たる正面側は新しくなっているのですが、奥は古い建物でたいへん情緒があるいい宿でした。廊下にも畳が敷いてあるのは、必要に応じて襖や柱をとっぱらって、大きな広間として使うためだそうです。部屋は中庭に面していてなかなか風情があります。

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玄関から一番奥の部屋に向う廊下もなかなかいいムードでした。部屋と廊下が一体化してしまっている感じ。


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「お客さんは古戦場めぐりですか」と聞かれたので「いや、今日は名古屋で仕事だったんですけど、明日午後には京都にいなくてはいけないので、途中のどこか知らない土地で泊まってみたいと思っただけなんです」と正直に話しました。

隣の部屋には旧中山道を歩いてきたというご夫婦が先着していましたが、何しろ襖一枚で欄間は素通しなので、すべての会話が筒抜けです。それにしてもよくぞこんな宿が残っていたものです。

女将さんは「午前中だけでも、何か所か回れますよ。あとでご紹介しましょう。すぐにお風呂に入りますか」といいます。私が「入れるなら、すぐに入りたい」というと、隣の客のところにいって「お風呂はお済みですか」と確認してくれて、それで私も入ることにしました。

お風呂は新しくなっていますが、宿の雰囲気をこわさいない木製の湯船で、小さいけれどなかなか快適なお風呂でした。

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そのあとの食事は鍋。豚鍋とごはんのみ(笑)。部屋にはガスボンベが設置してありました。「前は旅館風の天ぷらとかお刺身も出していたんだですけど、そういうのには飽きたというお客さんが多くて最近はずっと鍋にしています。1年中。夏、どんなに暑くても鍋です。私が楽をしたいというのもありますけど(笑)」

確かに少し冷めたような天ぷらや焼物より、鍋のほうがうれしいかなあとも思いました。けっこう量があったのですが、ビールを1本飲んで、鍋は全部食べてしまいました。

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食事の片づけの時に女将さんと少し話しをしました。

私「すごく風情のあるいい宿ですね」
女将さん「昭和に建て替えたんです。その前はもっと古い建物だったんですけどね。写真が玄関のところに飾ってありますけどね。もう土台が傷んでいてどうにもならない感じだったんです。工事も大変でした」
私「女将さんはここの娘さんですか」
女将さん「いいえ嫁です。だから私もそんなに古いことは知らないんです。態度がでかいのでいつも家付きと思われるんですが(笑)」
私「いやいや、態度がでかいだなんて、そんな‥。しかしこの宿は平安時代からといいますけど、本当ですか?」
女将さん「そうです。ですから中山道というより、東山道の時代ですね」
私「そうすると関ヶ原の合戦の時はすでにあったわけですよね。すごいことですね」
女将さん「そういうことになります。でも最近は、観光のお客様は大垣あたりのホテルに泊まって移動しますから、あまりこのへんで泊まる方は多くないです。たまに街道歩きのお客さんがきますけど。ただうちは毎年海外の大学の先生が学生を連れてくるので、けっこうその時は大変なんです」

その外国の先生はよほどこの宿が気に入っているのでしょう。そのほかにも固定的な客がいて、土日はだいたい満室になってしまっているそうです。こんな貴重な宿なら当然のことだと思うのですが、逆に日本人はビジネスホテルを好むという矛盾。

この付近はこの家を入れて3軒の和風旅館があるそうですが、あまり景気は良くないようです。そのうち一軒は80歳を超えたばあちゃんがひとりでやっていて、去年あたり「もうやめる」といっていたそうですが、最近の話しでは「もう1年はやる」というふうに延長されたそうです。大変でしょうが、がんばってほしい。

女将さんは「私はそんな80までなんて、とてもとてもできませんから、適当にやめようと思っています」ということでした。とても頭の回転の早そうな、おもしろい女将さんだったので、おそらく将来のことについてもそれなりに考えがあるのだと思います。
こんな会話をなんだかんだと1時間近くもしたでしょうか。

女将さんが去ってしばらくして気づくと、隣の部屋の電気が消えていて、テレビの音もしません。まだ9時くらいだったのです。そうするとこっちも早寝しないと悪いなと思って、とりあえず電気を消し、テレビも消音にして、もらった地図などを眺めて計画を練りました。開けっ放していて気持のいい風が入っていた中庭側のガラス戸も、少し寒くなってきたので閉めて、ふとんに入って計画立案。

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とにかく早起きして「不破の関跡」には行ってみたい。「関ヶ原」の「関」は、この不破の関なわけですから、地名の元になった関所の場所だけでも見ておきたいと思ったのです。地図上の目分量では2kmくらいありそうでしたが、早朝なら車も少ないし、どうってことはないと思いました。そんなことをしているうちに私も寝てしまいました。

翌朝は5時くらいに起きてこっそりと出かけました。このへんの旧中山道は今も幹線国道ですから、朝から大型トラックなどが通っています。しかし並んでいる建物にはどこか旧街道らしいの風情があります。

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この町で貴重だったはずの夜の歓楽ビルは、廃業してしまったようでした。

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途中には関ヶ原の合戦の時の首塚もあり、歴史を感じさせます。このへんでもずいぶん多くの兵が死んだのでしょうか。

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しばらく行くと、旧街道が国道からそれ、急に静かな道になりました。きれいな舗装路ですが、両脇には古そうな建物も多く、昔を感じさせます。不破の関跡もすぐに見つかりました。不破の関はだいぶ古い時代に廃止されてしまったのですが、その後も関守はいたらしいです。

この国境は古代に大海人の皇子が越え、東国の兵を募って壬申の乱に勝利しています。岐阜と滋賀の境には国境を挟んで寝ながら会話ができたという「寝物語の里」もあるとか。どこか伝奇的で風流な話しです。

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この付近には宇喜多秀家の陣や福島正則の陣跡もあるみたいです。とにかく朝食までには戻ろうと、また2kmの道のりを歩きました。ますますクルマは多くなっていて、歩道が狭くて危ない感じ。しかし、気分は古代ロマンに浸りきっていたので、あまり気になりませんでした。

部屋にもどってしばらくすると、女将さんが「あら、戻ってらしたの。全然気がつかなかった。よっぽど静かに戻られたんでですね」というのですが、いや、普通に戻りましたけど。宿の玄関で昔の写真も見ました。やっぱり昔の宿のほうがいい感じです。

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朝食は旅館風のスタンダード。おいしかったです。食事のあと、いくつか見どころポイントを教えてもらいました。あまりにも詳しいなあと思ったら、ふだん、ボランティアで関ヶ原町の観光ガイドもしているそうです。

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そんなわけでいろいろお世話になり、宿を出る時は、原哲夫が描いた戦国武将が表紙になったパンフレットもくれました。マンガの影響で人気が高いパンフレットだそうです。

この日は結局、お昼ごろには京都に到着しました。あまり観光名所を見ることはできなかったのですが、付近の街道といい、古戦場といい、いろんな見どころがあることがわかったので、今度行く時はゆっくりと歩いてみたいと思います。

[旅館  桝屋](2010年9月宿泊)
■所在地  不破郡関ケ原町大字関ケ原597 
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