日本ボロ宿紀行

ボロ宿にあこがれ、各地のボロ宿を訪ねています。

鹿児島の宿

「ボロ宿」というのはけして悪口ではありません。
歴史的価値のある古い宿から単なる安い宿まで、ひっくるめて愛情を込めて
「ボロ宿」といっています。自分なりに気に入った、魅力ある宿ということなのです。
もともと、できるだけ安く旅行をしたいということから行きついた結果ではありますが、
なるべく昔の形を保って営業している個性的な宿を応援していきたいと思います。
湯治宿や商人宿、駅前旅館など、郷愁を誘う宿をできるだけ訪ねて、
記録に残していくこともいずれ何かの役にたたないかなと‥‥。

湯治場風情の残る自然豊かな温泉場[妙見温泉 妙見館]

久しぶりの更新でやり方がまだよく思い出せていません(笑)。

さてブログ更新をサボっている間に古いネタがだいぶたまってしまいました。あまり古い話を書いてもどうかと思いますが、当面、その中でも特によかったところに絞って書いていきたいと思います。今回紹介する「妙見館」は2014年11月に泊まっています。今でも妙見ホテルの湯治棟として、やや体制は異なるものの、営業はしているようです。ただ、工事などで休業期間もあったようで、詳しい営業状況はわかりません。

この時は鹿児島の隼人駅近くで仕事の予定があり、前日に飛行機で鹿児島空港に到着。バスで妙見温泉まで行って一泊する計画でした。

ネットで探して、空港からも近く、隼人への便もいいということで予約したのですが、結果としては想像以上にいい温泉でした。昔、全国の自炊宿に詳しい東鳴子温泉まるみや旅館のご主人に、“ボロ宿”というなら、行ってみるべき宿として、100軒くらい候補を教えてもらったことがあるのですが、後で調べてみたら「妙見館」も書いてありました。あのきくちゃんが認めるほどの宿だったわけです。

当日は鹿児島空港からバスで妙見温泉に。途中嘉例川という駅にも停まるのですが、ここに観光客らしき人が集まっていました。築100年を超える歴史ある駅舎で、登録有形文化財にもなっているのだそうな。

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今回はここは通過し、妙見温泉バス停に到着。「妙見ホテル」はバス停のすぐ近くにあり、「妙見館」は川向こうにあることを確認。次の日のバス時刻も確認しておきました。

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温泉街とはいっても人通りもまったくなく、賑やかさもないのですが、いくつか宿や商店などがあったので歩いてみました。

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「天狗食堂」もいい感じ。こういう食堂があれば普通なら絶対寄ってみたいところですが、この日は宿を2食付きで頼んであったので、天狗食堂で食べることはあきらめました。

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次に「きらく温泉自炊部」を発見。ここも良さそう。

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この看板が、レトロという言葉ではもはやいい表しきれない、現代人では製作不可能であろうかという、独特のテイストを持っています。

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鮮魚店もありました。隣りの雑貨店はもう営業していない感じ。

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いけすの鯉やウナギを置いてあるようですが、やはり宿が晩飯付きなのでそういうものは買わず、この日はチップスターだけ買いました。

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さてこの日の宿「妙見館」へは吊り橋を渡って行きます。

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どういう人にどういうふうに案内されたのかは忘れてしまいましたが、部屋に到着。かなり広い、天降川に面した部屋。けっこう設備も揃った快適な部屋でした。お茶菓子は「さつまぼっけもん」。

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自炊できる共同設備などもあり、たぶん湯治客中心だった宿のはずなのですが、私が泊まった時は2食付きで頼んだ場合、部屋に食事を持ってきてくれました。

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さて、部屋で少し休んだ後、お風呂が2か所にあるということだったので、まずは食事前に川に面した風呂に行ってみました。

川沿いの明るく清潔感あふれる浴槽ですが、感動的だったのは湯船からドバドバあふれて捨てているお湯の量です。これだけの量のかけ流しは最近あまり見たことがありません。

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もうひとつのお風呂も行ってみました。こちらも人がいなくて写真撮り放題。どうもこの日は私一人で、自炊棟の留守番状態だったのかもしれません。こちらもお風呂も大量のかけ流し。夜も何度か入りましたが、本当にぜいたくないいお湯でした。

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運ばれた夕食は、ホテル用をベースにしていると思われる豪華メニュー。湯治宿でこんないいものを食べていていいものかどうか。

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翌朝も早く起きてお風呂へ。部屋から川を見ると鳥がたくさん集まっていました。エサが多いのか、温泉のお湯があたたかいからなのか。

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朝食はこんな感じ。やはり普通の温泉旅館にひけを取らない、かなり立派な内容でした。

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箸袋には「妙見旅情」の歌詞。やっぱりこのへんは龍馬ゆかりの恋の旅が売りなのでしょう。

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風呂に入る以外はずっと部屋にいて、ほとんど館内を探検しませんでしたが、ただひたすらのんびりお湯を楽しむというか、静かな環境とともに、ぜいたくな空間を提供してくれる宿でした。

とにかくこの日は隼人で仕事なのでバスで隼人駅へ。

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隼人駅は木造風のなかなか凝ったつくり。ここにも龍馬とお龍さんの看板がありました。

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この日は仕事が終わった後、夜の飛行機まで時間があったので、鹿児島市内に行き、城山なども見学しましたが、その話はまた別の機会があれば書きます。

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[妙見温泉 妙見ホテル(妙見館)](2014年11月宿泊)
■所在地 鹿児島県霧島市隼人町嘉例川4386
■泉質 炭酸水素塩泉
■楽天トラベルへのリンク→妙見温泉 妙見ホテル

岩の割れ目から湧き出す源泉に浸かる。正真正銘のおすすめボロ宿 [白木川内温泉 旭屋旅館]

2009年12月に訪問した鹿児島県出水市の温泉です。まあいろんな温泉がありますが、ここはまさに秘湯というか、出水駅からは車で20分程度なのですが携帯も通じず、トイレは汲み取り式。当日はほかに宿泊客もなく、秘湯で孤独な一夜を過ごすはずだったのですが……。

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一番上の写真が「旭屋旅館」、下の写真はその隣にある別の温泉ですが、相互にお風呂を開放しています。

当日は、まだチェックインには早かったので、出水市の名所を巡る巡回バスに乗ってみました。出水市といえば鶴が有名で、ちょうど最盛期に当たっていたので飛来地を見に行こうと思ったのです。巡回バスは1000円最初に支払ってカードをもらうと、何回でも乗れるシステムです。

バスに乗ってみると客がほかにいなかったので一番前に座りました。すると運転手さんがいろいろ解説をしてくれて、目的地である「ツル観察センター」で降りて、1時間くらい待っていたらまた巡回バスが来るから、それに乗って駅に戻ればいい、と教えてくれました。「次のバスが最終なので、乗り遅れないようにね。遅れたら面倒なことになるよ」と注意されました。

結局そのアドバイスにしたがったのですが、1時間後のバスの運転手も同じおっちゃんで、結局一人で何回も回っているようでした。

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1時間あったので鶴が遊んでいるのをじっくりと見学したうえに、ビデオを見たり、団体旅行の案内人の解説を盗み聞きしたおかげで鶴についてずいぶん勉強しました。今後どこかで鶴の話題が出た時には、ひとしきり語ることができるくらいになったと思います。

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帰りのバスも客は私一人。運転手さんは、本来のルートにはない名所の解説をしてくれたり、「ここがいつも自分が買っている宝くじ売場」とか、関係ない解説(ギャグ?)もあり、さらには武家屋敷町では特別に臨時停車してくれて、5分くらい見学することができました。ここが意外にも良かったです。その節はずいぶんお世話になりありがとうございました。

そうしているうちに夕方になったので、駅前からタクシーに乗って宿へ。白木川内温泉は、車がなければタクシーでいく以外ないのです。タクシーに乗ってみると昼間乗ったタクシーと同じ車で、昼間はこのへんの温泉についていろいろ教えてくれた運転手さんでした。「またお会いしましたね」とお互い目で挨拶をしながら、結局翌朝もこのタクシーに迎えに来てもらったので、この車につごう3回乗ったことになります。タクシー料金は宿まで片道3000円ちょっとだったので、往復すると宿泊代(5000円)を超えてしまうという不条理なことになりますが、この際仕方がありません。

宿につくと30代くらいの若いご主人がでてきて2階の部屋に案内してくれました。冬のことで、もう暗くなりかけていたましたが、到着したのはまだ5時くらいだったと思います。部屋は下の写真のような感じ。

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玄関口付近もずいぶん乱雑な感じでしたが、部屋も障子が破れていたり、けっこう期待通りのボロ宿でした。トイレの汲み取り式は知っていたので驚きませんでしたが、廊下に掃除機が出しっぱなしになっていたり、いろんな道具類があちこちに置いてあって、衝撃的な宿ではあります。2食付きで5000円という値段ですので、まああまり細かいことをいうべきではありませんが、なかなか手がまわっていない感じがありありと出ています。

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窓から宿の外を見ると、渓流が流れています。やはり市街地から近いとはいっても山の中であることにまちがいはなく、私としてはボロい雰囲気だけでなく、ひっそりと孤立した宿の雰囲気も気に入りました。ご主人によると「私が子供のころなど、昔は道も悪く、ここまで来るのはもっと大変だったんだ」ということでした。

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ご主人は食事の時間を確認した後、「寝るのは隣の部屋に布団をしいてあるので、そちらに寝てください」というので一応見に行きました。部屋の中央に布団が敷いてあり、ただいま布団乾燥機稼働中でした。

そのほか2階にはいくつか客室がありました。ご主人によると最近は1日に一組の客があるかないかという状態なので、日帰り客の休憩に使うほうが多いということでした。

早速お風呂にいってみましたが、この風呂がまれに見るすばらしい泉質の、温泉マニアなら垂涎の風呂でした。

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岩をくり抜いた浴槽の底から自噴する源泉で、かなりワイルドな感じ。透き通ったきれいなお湯がたっぷりたまっていてかけ流しになっています。温度もちょうどいい感じで、かすかに硫黄のにおいがしました。隣の女湯との間には小さな扉があり、ここから男性用浴槽にある飲泉用のカップを受け渡しできるようになっています。

それにしてもボロ宿とはいいながら、これだけのいいお湯を持っていれば安泰です。近隣の住民らしきおじいさんも集まっていて、このときは戦時中の駆逐艦の性能について熱く語っていましたが、そのへんの知識がなく、鹿児島弁もけっこうきつかったので、話題に参加できず残念でした。


風呂からあがって部屋に戻る途中にご主人と会ってちょっと話していたら、ご主人の大学在学中にちょっとしたゆかりがあったことがわかりました。思ってもいない偶然でご主人も驚いていました。世間は意外に狭いものです。それで一気に話が盛り上がり、そのついでにいろいろ温泉のことも教えてくれました。「前は両親がやっていた宿だけど、今は亡くなって一人でやっています」ということでした。秘湯とはいっても雑誌などでけっこう紹介されて、連休中などはけっこう混むそうです。一人だとかなり大変そうでした。「特に食事の用意がねえ…」と、苦労しているようです。

ただ泉質の評判が良く、いろんな病気・症状の改善効果もあることから、周辺の集落からの入浴客が多いので、宿泊客は少なくてもそれなりにやっていけるということです。

食事は下の写真のような感じ。まあ家庭料理だと思いますが、値段からすれば期待以上。特に名前のわからない光りものの刺身がすごくおいしかったです。「無理してこんなにいろんなおかずを出さなくてもいいのにな」と思いましたが、そうもいかないのでしょう。

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ここのお風呂は夜9時以降は入れないことになっているのですが、「7時過ぎるとだいぶすきますから」ということで、7時過ぎにもう一度行ってみました。2人ほど地元の人がいましたがすぐに出て、ひとりでゆっくり岩場の浴槽に浸かりました。お湯はあくまでも澄んでいて、深い浴槽の足元までくっきり見えます。こんなぜいたくなお湯を独り占めできて最高の気分でした。

しかしその後、夜はなにもすることもなく、廊下にたくさん積んであった「ゴルゴ13」を久しぶりに乱読してしまいました。「ゴルゴ13」は基本的に1話完結で前後のつながりはあまりないので、昔はよく床屋の待合室なんかにも置いてありました。あいかわらず年も取らず、クールに活躍しているようです。

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そうしているうちにこたつで寝てしまいました。昔はよくやったものですが、こたつで寝るのも久しぶり。途中、目が覚めかけたりしましたが、気持がいいのでそのまま朝まで寝てしまいました。結局ほとんど使わなかった布団が上の写真です。隣の部屋に敷いてくれていた布団を、寒いのでもともとの部屋に運んでもらったので、ここで寝るつもりでいたのですが。


そして朝風呂へ。この日鹿児島は初雪で、ちらほらと雪が舞っていました。もちろん積もるほどではありません。朝もお風呂を独り占め。よく事情がわからないまま来てしまった宿ですが、来て良かったとつくづく思いました。

でがけに玄関口で例のタクシーを待っていると、ご主人が「またきてください」といってくれてうれしかったです。おなじみの運転手さんは車に乗ったあと「下は降ってませんけど、このへんは降ったみたいですね」といってました。「あの宿は息子さんがやっていて、下の宿も親族です」ということでした。

出水駅からはぜひ乗ってみたいと思っていた九州新幹線に乗ってみました。まだ新八代までしか通っていないので、乗客は少なかったですが、いかにもJR九州らしく特色のあるきれいな客車でした。

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そういうわけで、秘湯とかボロ宿とかいっても、実際にはそれなりに豪華で近代化された宿が多い中、ここは久しぶりに発見した本当の秘湯といってもいいと思います。東京からは遠いですが、ぜひまた訪ねてみたいと思っています。また、宿のご主人だけでなく、バスやタクシーの運転手さんなど、鹿児島県民の暖かい人情に触れたこともいい思い出になりました。

[白木川内温泉・旭屋旅館](2009年12月宿泊)
■場所 〒899-0341 鹿児島県出水市上大川内5002
■泉質 単純硫黄泉
■楽天トラベルへのリンク→白木川内温泉 旭屋旅館
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プロフィール

もんすけ

 古い湯治宿や駅前旅館など、日本が高度成長時代に入る前からあったような雰囲気の宿が大好きで、各地を回っています。
 どこにいってもそれなりに立派な宿が多く、個性的なボロ宿に出会うことは少なくなりました。
 10年、20年前ならもっといろんな宿が残っていたと思いますが、しかしいま現在でも、10年後、20年後に比べたら多くの貴重な宿が残っているはずです。そうした宿を記録に残していけたら、と思っています。

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