先日茨城の鹿島に用事があって、東京駅から高速バスで出かけました。高速バスを使うとあのあたりもけっこう便利です。「鹿島セントラルホテル」というところで降りて用事をすませ、夕方再びそのホテル前の高速バス乗り場に戻ってきたのですが、せっかくここまできたのだからどこかに泊まっていこうかなと思いました。

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今年1月に千葉の佐原に1泊しているので、今度は利根川の茨城側に当たる、潮来に行ってみることにしました。どうみても「いたこ」とは読めない漢字を当てている不思議な地名や、「潮来の伊太郎」とは何者なのか、などなど、さまざまな謎を持つ水運の街・潮来には前から興味があって、しかし一度も行ったことがありませんでした。この機会に街を見物したいと思ったのです。古い歴史のある街なので、宿もけっこうおもしろいのがあるのではないかと期待もしていました。

潮来は鹿島セントラルホテルからごく近いのですが交通の便が悪く、タクシーに乗るしかありませんでした。だいたい4時過ぎくらいにとりあえず潮来駅前に到着。駅前はかなりの寂れようですが、コンビニもあり、駅前のビジネスホテルも3軒ほどあったので、たぶん宿泊するのに問題はないだろうと思いましたが、とにかくホテルよりは古い旅館を探そうと思って、観光協会に聞いてみました。

しかし「私、留守番なんです」という女性しかおらず、要領を得ませんでした。「ホテルじゃダメなんですか?」というので、「いや、旅館がいいんです。できれば古くて貧しげな旅館はありませんか」と食い下がったのですが、やはり留守番なのであまり知識がないようで、とにかく旅館のリストが載った観光パンフレットをくれました。

最初良さそうだと思って電話した旅館は、留守番の兄ちゃんが出て、担当者が電話中なのであとでかけてくれということでした。留守番の多い街、潮来‥‥。

潮来は霞ヶ浦から太平洋に注ぐ「常陸利根川」に沿った街なので、川沿いに旅館がたくさんありす。そのどこかに泊まろうと思い、宿が決まらないまま商店街や川沿いの道を散策しつつ、旅館がある方面に向かいました。飛込みでもどうせどこかに泊まれるだろうと思ったからです。

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市内を流れる「前川」という川には雰囲気のある橋がたくさんかかっていて、河原には大量のあやめの株が。たぶん6月くらいになると満開になって大変きれいなのだと思います。そのころが、潮来の本来の観光シーズンということなのでしょう。

しかし3月なので人通りも少なく、商店街は寂れきった感じです。路地などを巡り歩いて常陸利根川沿いに出ると、「十二橋めぐり」の遊覧船などがつないである乗り場もありました。いかにも水郷らしい雰囲気です。

そうしているうちにさっき電話した宿の前に到着。もう面倒なのでそのまま中に入って聞いてみると、どうもようすが変で、おかみさんらしき人が出てきて泊めるとも泊めないともあいまいなのです。聞いていると奥の壁の裏にいる「社長」と呼ばれるおっさんが泊めることに反対で、おかみさんとしては泊めたいみたいなのです。

当日の飛込みで宿を探して、断られるなんてことは珍しくもないので、ダメならダメではっきりしてくれればいいだけなのですが、宿の内部で意見の対立が生じているというパターンは初めてでした。

いずれにしてもそういうことなら、おもしろいのでしばらくやりとりしていると、奥の社長が「部屋のそうじができていないので、かえってお客様に失礼に当たる。だからお断りしなさい」といいます。最後まで社長は姿を現さず、不気味な天の声のように指示を与えていました。

おかみさんらしき人は「まあ、私どもも社長の指示には従わなければいけないのでね、残念ですが‥‥」とあきらめて最終結論を出しました。その宿が下の写真。いったいどんな状況だったのか、いまいちよくわかりません。

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ほかにも旅館や豪華ホテルなどがたくさんあったので、歩き回るよりまず電話をしてみようと思って、すでに散策中に見かけていた「水郷旅館」という宿に電話してみました。こちらはすぐさまおばあさんらしき人が出て、「どうぞ、いらっしゃい」といってくれて、ここに素泊まりをお願いしました。


宿が決まったので、まだ夕食には早いですが食事をすることにしました。すでに散策中に目を付けていた「いこい食堂」という古びた食堂があったので、ここでラーメンでも食べようと見当を付けていました。

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「いこい食堂」に行ってみるとのれんは出ているのに中が真っ暗なので、休業中かと思いましたが、入ってみると暗い中で主人夫婦らしき二人がテレビをみています。「やってますか」と聞くと「どうぞ、どうぞ」といって電気を点けてくれました。どうも省エネしていたみたいです。

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ラーメンがなかったので、鯉のあらいとわかさぎフライの定食にしました。水郷に来たので地場の淡水魚を食べるのも悪くないと思ったからです。しかしなんとういか、いまいち活きが悪いというか‥‥。厳しいものがありました。でもビールを頼んだら、定食の鯉を先に持ってきてくれたり、ごはんも「好きなだけおかわりしてください」と、なかなか親切な店でした。

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近くで工事をしているおっちゃんが一人、後から入ってきて「さんま定食」を食べていました。「実にこの、さんまというのは外で食べるとうまいんだよなあ」などといいながら。遠くから現場にきているみたいで「今日も残業だけど、帰るのは大変だからお金があったらここらの旅館にでも泊まりたいよ」といっていました。用もないのに酔狂で1泊してしまう私は、申し訳ないような気持になりました。

このあとさらに街をもう1周くらい散策しました。けっこう市街地は狭く、すぐに歩ききってしまいます。それで6時過ぎくらいになって「水郷旅館」に到着しました。ようやく暗くなりかけていました。

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屋根には「水郷旅館」のネオン付き。残念ながら1文字消えてしまっています。出迎えたおばあさんは、思ったより若い感じで、ちょっとかわいい感じのおばあさんです。ご主人らしき人はロビーでテレビをみていました。

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素泊まりの場合は前金だといわれたので「いくら」と聞いたら「4000円‥‥でいい?」とこっちをうかがうようにいいます。「いい?」といわれても「ダメ」といったらどうなるのでしょうか。あとで調べてみると、このへんの素泊まりの宿はだいたい3000円から3500円が相場のようなので、少し高かったようです。今度行く機会があれば、おかみさんと交渉して、3000円にしてもらうつもりです。

2階に部屋があり、3階に風呂があります。案内する時おかみさんは「もうお風呂に入れるから入ってください」というので、すぐに入ることにしました。途中の廊下はかなり散らかっており、壁なども染みだらけでしたが、部屋だけはきれいで広い部屋でした。おかみさんに「こんなに広い部屋でなくてもよかったのに」というと、「うちは全室和室10畳なんです」ということでした。

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風呂は日中なら常陸利根川や筑波山なども展望できるそうです。ここのお湯の出口に「源泉」と書いてあって、それを無理やりはがした跡がありました。昔は「温泉」を称していたが、その後いろいろまずいのでやめたのかもしれません。そのへんの事情は聞き忘れてしまいました。

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翌朝宿を出る時にはおかみが起きていて、「またぜひお寄りください」といいます。「3000円なら」と思いつつ外に出ると、宿の前の宿泊客名を書く看板に、私の名前がいまさら書かれていました。どういう意味が???

この日は、とにかく東京に帰るだけなのですが、ここまできたらついでにほかの知らない街にも寄っていこうと思い、とにかく電車で佐原方面に出ることしました。鹿島線から成田線に乗り換えることになります。

宿を出て、駅まで行く途中に再び前川沿いを歩きました。きのうは気づかなかったのですが、川の乗船場の近くに「潮来笠」の像と、「潮来花嫁さん」の像がありました。私は、こういう安易なものを新しく作り、観光スポットにしようという最近の風潮には賛成できません。見せしめのために写真を撮ってきました。

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このあと、少し早めに駅に行くと、やはり鹿島線は本数があまりないので、1本逃したら大変だという感じでした。

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鹿島方面に行く電車も佐原方面に行く電車も、通学客が多いらしくホームは高校生だらけで、けっこう混んでいました。やたらと女子高生が多いのは女子高でもあるのかどうか。

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みんな目的を持って電車を待つ中で、自分だけもの好きにも季節はずれの潮来に来てしまった身分。なるべく席も譲って遠慮して乗ろうと思っていましたが、それほどの混み具合ではなく、座ることができました。そして成田線乗り換えの「香取駅」には、川を渡ってすぐに到着してしまいました。

このあと、実は銚子まで足を伸ばして街を見学したのですが、その話はまた別の機会に書いてみたいと思います。

[潮来・水郷旅館] (2010年3月宿泊)
■場所 茨城県潮来市潮来104-3
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