ボロ宿に泊まりたいと思えば、昔は田舎の民宿なんかにいけばたいていボロでした。その名の通り大きめの民家でしかなく、「ボロ宿遭遇率」はそれなりに高かったのです。最近は民宿とはいってもけっこう豪華な造りだったり、旅館と変わらない設備を持った立派な宿が増えています。

ここで紹介する御宿の「第八福市丸」は微妙なところで、それほどボロではありません。部屋も独立性が高くきれいなので、古い民家のような造りとはいえませんでした。ただいかにも漁師の家といった感じの料理や、女将さんがまさに漁師の女房といった感じで、漁師町の民宿ならではの風情を感じることができました。宿は浜の真ん前で部屋からも海がよく見えます。

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この宿を訪ねたのは、どこか外房のほうの漁村の民宿で冬の海でも見てみたくなったからです。御宿の駅から少し離れたところにあり、駅から電話したらおっちゃんがワゴン車で迎えにきてくれました。もう暗くなっていましたが、季節はずれで人通りは少なく、海岸に沿って宿に向かうと次第にとさびれた感じが出てきて、古い民家や干物屋さんなどの建物が目につきました。何となく期待通りの雰囲気なのでうれしくなっきたのを覚えています。

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たぶん夏ならまた違うのだと思いますが、付近には何となく昔の漁村らしい感じが残っていました。実際には御宿はリゾートマンションなどが立ち並び、別荘などもできて観光開発の盛んなところです。でも、ちょっとした部分に昔の漁村風情が残っているなあと思いました。

上の写真は翌日の昼間、駅までゆっくり散策しながらとったものですが、なかなか渋い雰囲気が残っています。こういう古い家はなるべく大事にしてほしいと思います。でもちょっと横を向くと下の写真のような風景が……。

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なんだかムードぶちこわしだと思いますが、なんでもこの付近が童謡「月の沙漠」のゆかりの地だそうで、記念館もありました。挿絵画家の加藤まさお先生が、病気療養のために滞在した御宿の海岸をモチーフにして書いた詩。それが今「月の沙漠」として歌い継がれているということです。

そういわれてみると何もいえませんが、古い日本の漁村文化とは相容れないこんなものが、大々的に目立っているのはいかがなものか、という気もします。でも観光客誘致という側面もあるのでしょう。せっかくなので、ついつい記念館にも寄ってきてしまいました。

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第八福市丸では舟盛りの刺身のほか、さざえの網焼きなども出て、なかなか豪華な食事。食事前に「まだかな~」と思って台所をのぞいていたら、迫力女将が「舟盛りを自分で部屋に運べ」と命令します。いつもそうなのか、台所をのぞいた客だけ罰として命じられるのかはわかりません。とにかく指示通りに部屋にでかい舟を運んでいると、そのほかにも伊勢海老とか鍋物などを持ってきてくれて、かなり豪快に食べました。白身魚には少し小骨が残っていましたが、漁師はそんなものは食べてしまうのだと思って、必死に食べました。

とにかく大雑把な感じはあるものの、魚は質量ともに最高でした。実際に漁をやっている家なので、魚は新鮮で安くできるのでしょう。料金は1泊2食付きで確か1万円ちょっとだったと思います。非常にお得感がありました。

かすかに昔の記憶が残っているどこかの海の民宿では、お寺の本堂みたいな広い部屋に雑魚寝したり、食事も人の家の台所みたいなところに集まって下男のように食べたことを覚えています。そんなのと比べるときれいな部屋で部屋食ができるこの宿は、いまどきの民宿なのかもしれません。ただ、あの迫力女将だけは、あまり近代化されずに末長く民宿をやっていただきたいと思います。その節はお世話になりありがとうございました。

[第八福市丸](2006年12月宿泊)
■住所 〒299-5105 千葉県夷隅郡御宿町岩和田946
■楽天トラベルへのリンク→第八福市丸
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