「別府温泉」は日本でもトップクラスの規模の温泉地で、いろんな宿がありますが、「鉄輪温泉」は湯治色が強くて、独特の雰囲気を感じる温泉街でした。「陽光荘」は、この地で独特の“貸間旅館”というシステムを取っており、要するに食事なしの素泊まりが基本。自炊か外食しながら滞在するのが基本です。このシステムは「鉄輪温泉」のほかの旅館にもあるようで、湯治で長期滞在するのに向いている、昔からのやり方なのだと思います。おそらく昔の湯治客はこうした宿で部屋を借り、各自で共同浴場に通っていたのではないでしょうか。

私たちは一泊しただけですが、確か料金は3000円ちょっとだったと思います。できたらまたいってみたいと思わせる、おもしろい宿でした。

鉄輪温泉には前泊地である別府八湯のひとつ「明礬温泉」からバスで行きました。別府八湯はそれぞれ雰囲気が違いますが、鉄輪温泉周辺はにぎやかな温泉街になっていました。歓楽色はあまりありません。古びた商店やお寺などもあり、なかなかいい雰囲気で、中にはちょっと場違いな感じの大衆演芸の劇場(なぜかヤングセンターという名前)なんかもありました。バス停の案内所で宿への道を聞いて、この温泉街を歩いているだけで、ちょっとしたタイムスリップ感を味わいました。

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宿につくと、最初に「足などが悪くありませんか」と聞かれました。つまり急な階段を上がった部屋に通してもいいかということでした。おそらく3階だと思うのですが、廊下や階段が入り組んでいて、どうも正確な配置はわかりませんでした。部屋は2面が廊下に面していて、非常に古い造り。部屋の独立性はほとんどなく、湯治宿というより、昔の安い下宿部屋のような感じでした。

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この宿の特徴は共同自炊場に温泉の噴気を利用した「地獄蒸し」という釜が1階と2階にたくさんあることで、これを使うとご飯も炊けるしさまざまな料理ができます。私たちは近くのスーパーで海老とじゃがいもと卵を買ってきて、夕食はこれらを蒸して食べました。ざるに並べてふたをして待つだけなのですごく簡単。調理器具や食器は借りました。調味料類も借りましたが、長期滞在するなら持っていったほうがいいと思います。地獄釜で蒸したいもや海老は、塩くらいしか使っていないにもかかわらず絶品でした。

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私たちがいった大きなスーパーのほか、すぐ隣にコンビニもどきの商店もありますのでいろいろ便利です。そのほか周辺には共同浴場や日帰り入浴施設の「ひょうたん温泉」もあり、一泊ではとても入りきれないので、もったいないと思いました。「ひょうたん温泉」にも行ってみましたが、ここはお湯をたっぷり使った豪華入浴施設で、休憩スペースや食事処も充実していて、とても良かったです。

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「陽光荘」自体、内風呂のほかにいろいろお風呂があって、内湯には薬草を使ったむし湯もついていました。このほか近くの別館にも岩風呂や露天風呂などがあって、宿泊客は入ることができます。私たちも宿のおばちゃんに勧められたので行ってみましたが、当日ほとんど人影が見当たらず、どこのお風呂もゆっくり入ることができました。

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旅館には表の玄関のほかに裏口もあり、構造が複雑です。1階には「地獄釜」の炊事場近くに洗濯機が2台おいてあり、宿泊客は自由に使うことができます。私たちも使わせてもらいましたが、炊事場や洗濯機置場周辺は生活感にあふれ、他人の家の裏口にきたみたいな雰囲気でした。宿の人もみんな何かと親切で、次第に旅館に泊まっているという意識は薄れ、知り合いの家にでもきたように気分になってきます。

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とにかく全体的にすべてが貧乏くさく、まさにボロ宿なのですが、何となく自分の家のようにくつろいでしまう感じ。宿泊当日には温泉街の道路工事をしていて、石畳などを敷いてきれいにするということでした。それもいいのですが、なるべくなら今のままの雑然とした雰囲気を壊さないでほしいと思いました。せっかく古い時代の雰囲気を残しているわけですから、その価値を大切にしてほしいと思います。


[鉄輪温泉・陽光荘](2006年10月宿泊)
■住所 〒874-0043 大分県別府市鉄輪井田3組
■泉質 塩化物泉(源泉かけ流し)
■楽天トラベルへのリンク→入湯貸間 陽光荘
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