去年、書籍「日本ボロ宿紀行2」の書き下ろしネタを書くために泊まった宿にはすごくいい宿が多く、ブログでも紹介したいと思っていました。ふだんのように仕事のついでではなく、本に書くために自分で選んで出かけたわけなので、いい宿が多いのは当然としても、ブログでは紹介できなかったのです。

しかし今回「井出野屋旅館」については、昨年の11月に再訪しました。書籍とは別にその時の話を紹介したいと思います。何といってもこの宿は、映画「犬神家の一族」のロケが行われた宿として有名。ここの“女中”として登場していたのが坂口良子様で、石坂浩二扮する金田一耕介が滞在する、古びた旅館「那須ホテル」として登場します。

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この映画を見た時から、「こんな宿が実際にあったら泊まってみたい」と思っていたわけですが、実際にあったので泊まってみることにしたわけでした。そのほか、私は見ていませんが、「君を忘れない」(木村拓哉・水野真紀・反町隆史出演)という映画の撮影にも使われたようです。

実際に泊まってみて非常に良かったので、長野で仕事があったついでにかみさんを連れて再訪することにしました。今回はその時の話です。

当日は取りあえず長野電鉄の「村山」という駅近くに用事があったので新幹線で長野をめざします。天気が良く浅間山もきれいに見えました。

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長野駅で長野電鉄に乗換。前に来たのはだいぶ前で、今から思えばその時は中国国旗を持った中国人群衆とチベットの旗を持った人々が争っている最中でした。

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村山到着。なかなか渋い駅舎です。

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仕事は午前中でちゃらっと終わり、再び長野電鉄へ。今度は善光寺でかみさんと待ち合わせをしていたので、善光寺下駅で下車。少し歩いて善光寺前で落ち合いました。泣く子も黙る名刹善光寺。

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おばちゃんたちが群がる「びんずる尊者」。

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六地蔵。

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門前を歩いていると、なかなか良さそうな宿も発見しました。今度機会があれば泊まってみたいと思います。

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お昼はこのへんのそば屋で食べました。かなり寒い日だったので、鍋焼きうどんと熱燗にしてみました。

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せんと君みたいな仏像も発見。

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ここから宿に向かうわけですが、宿はJR佐久平の駅からバスで20分くらいのぼったところにある、旧中山道沿いの望月宿にあります。

宿のおっちゃんご主人が、佐久平駅に着く時間がわかったら迎えに行くといってくれたのですが、送迎を軽く頼めるような近い距離でもないし、バス停も宿の近くで便利なので、バスで行くつもりでした。しかしせっかくの心配りなので、今回は、だいたいの時間をみはからって電話し、迎えに来てもらうことにしました。

長野駅から佐久平駅までは新幹線に乗ればすぐですが、この日は急ぐ旅でもないのでしなの鉄道で小諸まで出て、小海線で佐久平へ。ご主人はすでに駅前で待っていてくれました。

クルマの中でご主人がいうには、「11月ともなると望月はだいぶ冷えるので、まあ寒さを楽しんでいってください」ということでした。前に来たのは確か9月頃で昼間はまだ暑いくらいの日でしたが、宿に着くと涼しい風が通って、クーラーもいらないほどだったことを思い出しました。

宿に到着。外観は映画「犬神家の一族」よりかなりきれいですが、大正時代の建物。2回目なので勝手知ったる家のように、上がり込みます。

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↓映画「犬神家の一族」より
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玄関口も映画のまま。ここで原作者の横溝正史氏が、宿の主人役で登場していました。映画の中で坂口良子様は「ホテルなんて名前だけで古びた旅館よ」と紹介しておりました。

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↓映画「犬神家の一族」より
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この上がりのところで金田一耕介は宿帳を書き、坂口良子様は下足箱からスリッパを出して、ほこりをはたいてから出してくれます。その下足箱がこれ。これも映画のまま。

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↓映画「犬神家の一族」より
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前に泊まった時と同じ2階の部屋へ女将さんに通してもらいます。この廊下の雰囲気が非常にいいです。

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前回と違って今回はこたつが出ていました。

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↓映画「犬神家の一族」より
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ふとんは隣の部屋に敷いてありました。

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正直いってこの宿は“ボロ宿”というのではなく、古い建物ですがしっかり手入れされていて、すごくきれいで上品な雰囲気があります。

まだ夕食までに時間があるので、付近を散策してみることにしました。

この望月宿は平安時代から知られた馬産地らしいのですが、江戸時代には中山道の宿場として栄え、戦前までは花柳界の町としても大変に繁盛したそうです。「井出野屋旅館」も町の中に数件の支店を持ち、芸者衆も総勢50人ほど抱えていたそうですが、この建物だけが残って旅館を営業しているわけです。

付近には旧宿場町らしい雰囲気も残っています。

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旧本陣と脇本陣のあったところ。現在の建物がいつ頃のものかはわかりませんが、脇本陣のほうはかなり古そうです。

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重要文化財「真山家」。中は見学できませんでした。

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「井出野屋旅館」からも近い、望月歴史民俗資料館。前回はここに入ったので今回はパス。道祖神も飾ってありました。

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そんなことをしているうちに寒くなってきたので再び宿へ。

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お風呂の準備ができていました。かなり大きい家族風呂です。

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お風呂からあがり、部屋でのんびり風情を味わっていると、おかみさんが食事の準備ができたと知らせてきました。前は部屋出しでしたが、今回は廊下をはさんで別部屋に用意してくれたようです。この廊下の奥の階段を降りたところは、映画では、タバコに仕込まれた青酸カリで探偵の若林さんが殺された現場になります。

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食事はかなり手が込んでいて上品な感じ。しかも地物が多く、いかにも山中の旧宿場町に来たという、旅の気分を味わうことができました。


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焼きたてがうれしい川魚の塩焼き。ヤマメかも。

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馬刺し。凍らせたのが溶け始めたくらいの感じ。にんにくをつけて食べました。

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佐久といえば欠かすことができない鯉の煮付け。佐久地方の長寿の秘訣は鯉を食べるから、という説もあるそうな。

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箸休めのなめこ。

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後から出てきた天ぷらには地元産の藥用ニンジン付き。このへんでは昔からニンジンの畑を作っていて出荷していたそうです。

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最後に近で採れる蕎麦をひいてご主人が手打ちしたそば。前に来た時は一人だったので、食べられなかったやつです。非常にうまいです。

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さらにデザートのりんごも出てきました。

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みんなおいしくて、けっこう満腹になります。われわれはビール2本とお酒2本飲みました。

食事が終わるともう夜が更けて、部屋に戻ってテレビなどを見ていましたが、早めに寝てしまいました。夜になるとひときわ寒いですが、石油ストーブのほか、毛布も電気で温めるやつが仕込んであって快適。夜は本当に静かでした。

2006年に「犬神家の一族」がリメイクされた時も、「井出野屋旅館」にロケハン隊が来たそうです。しかしその時は監督の市川昆さんが高齢で体調に不安があったため、結局はセットでの撮影に切り換えたそうです。しかしリメイク版でもこの宿の雰囲気はそっくり再現されていました。

廊下には原作者横溝正史氏の色紙や坂口良子様と石坂浩二のサインも。

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さて翌朝も同じ部屋で朝食でした。こんな感じの部屋。

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朝食はこんな感じ。

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この日の予定は決めていませんでしたが、近くを少し歩いて早めに東京に戻ろうと思っていました。またも佐久平までご主人が送ってくれました。前回は、ご主人ともいろいろ話して、余計なことまで本に書いてしまったのでその点は怒られましたが、おおむね喜んでくれたようでした。

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ご主人は「こういう田舎は土地も安いし、畑もやれるし、田舎暮らしには興味はないの」と聞いてくるのですが、私としては田舎や古い家に興味はあるものの、こういうところでのんびり暮らせるようになるためには、まだまだ働かないと厳しいというのが実感です。


余談ですが、坂口良子様と石坂浩二が出会う場面は上田市内で撮影されています。井出野屋旅館に泊まったら、ついでに寄ってみるのも一興かも。

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↓映画「犬神家の一族」より
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[佐久市  井出野屋旅館](2013年11月宿泊)
■所在地   長野県佐久市望月254
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井出野屋旅館
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