弘前の石場旅館といえばボロ宿業界では有名な由緒ある宿であり、私としては以前から機会があれば泊まってみたいと思っていました。明治12年創業で弘前城にも近い古格を感じる宿だとか。いわゆる安宿ではありません。こういう名旅館はちょっと敷居が高い感じがしていましたが、しかし泊まってみたい気持は抑えきれず、試しに電話してみました。

そうすると意外に若いにいちゃんが電話に出て、料金体系を説明してくれました。素泊まり料金に加えて夕食の料理によっていくつかプランが選べます。また朝食も付けたり付けなかったり、自由に選択できます。非常に明解な料金システムになっています。私は常に一番安いプランを選ぶのですが、その場合8000円ちょっとでした。

そんなわけで、今回は秋田から弘前に回り津軽鉄道で金木まで行くという企画を立てている中で、弘前の石場旅館はそのハイライトともいえる重要イベントと位置づけていたわけです。

途中、大鰐温泉にも泊まりたい気持がありました。大鰐温泉には今では珍しい客舎形式の宿があり、そういう宿にも泊まってみたいと思っていたのです。しかし今回はスケジュール的な事情で大鰐温泉では乗り換えるだけで、客舎には泊まらないことに決定。

鷹巣からの奥羽線普通列車は、雪のため遅延していて、ダイヤは乱れていました。この日、まれにみる大雪が津軽、秋田地方で降り続いており、雪に慣れた地域とはいえ、けっこう大変なことになっていました。

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大館から弘前に行くのにも、そのまま弘前に行く手もあれば、大鰐温泉から弘南鉄道に乗り換えていく手もあります。今回はとにかく大鰐温泉駅で降りてみました。

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大鰐温泉駅も、昔のにぎわいからすると寂れているのでしょうか。ちょったした商店やおみやげ屋はありますが、ちょっと寂しい感じ。しかしワニの像がありました。

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こういうオブジェで媚びるような観光化には、私は否定的です。せっかく古い湯宿があるのですから、そのままのイメージを大切にしてほしい。しかし私の意見はしょせん少数派ですので、仕方がないことなのでしょう。

ここでせめてお昼ぐらいは食べていきたと思い、店を探すとすぐ駅前にありました。「山崎食堂」。この時期、大鰐温泉の名物は温泉熱で育てたモヤシだそうです。モヤシラーメンを食べました。

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モヤシもおいしかったですが、ラーメン自体が素朴な味付けでおいしかったです。東京にあったら、毎日食べにいくのに。

このあと弘南鉄道で弘前に向かいます。質素な駅。

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乗り込んで大鰐の観光パンフレットなどを眺めていると、謎の女性がいきなり話しかけてきました。「観光ですか?  今の時期だとモヤシラーメンがおいしいですよ」などと。モヤシラーメンなんか、今食べてきたばっかりで、何をいまさらいうのかと思っていたのですが、いろいろ話していると、どうもこの女性は弘南鉄道の車掌さんのようでした。一見して気がつきませんで失礼しました。観光案内をしたり、お年寄りの世話をしたりいろいろ働いていました。

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それで「これから弘前に行く」というと、弘前の観光マップをくれました。古い洋館などが多いそうで、いろいろ見どころを教えてくれたので、そういう知識がなかった私は大変助かりました。このマップも大変役に立ちました。

「吊革がリンゴをかたどっているんですよ」とか。

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こういう地域の鉄道もいろいろ工夫をこらしていますね。本当にがんばってほしいです。

弘南鉄道・弘前中央駅に到着。

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この日も雪が断続的に降っており、少し風があるため寒さもひとしおでした。駅前でコーヒーを飲み、いろいろ考えましたが、まずはお城の近くにある石場旅館に荷物を預け、それから市内散策をしたらいいのではないかという結論に至りました。

まだ2時前だったのですが宿に電話すると「チェックインはまだできないけれど、荷物はいつでも預かる」ということでしたので、とにかく歩いて宿に向かうことにしました。

そんなに遠くはないはずのですが、雪が激しく降ってきたせいで、宿までいくのは大変でした。土手町という繁華街も通ったのですが、みんな傘を斜めにさしながら無言で歩いています。

こんな感じだとお城を見学するのもちょっと無理かな、と思いながら宿に到着。

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やはりかなりいい感じの宿です。

つららがすごい。

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声をかけるとおばちゃんが出てきました。「いやあ、荷物を預けようと思ったけど、この天気なので、もう入ってしまおうかな。いいですか」と聞くと「ああ、いいですよ」といって2階の部屋に案内してくれました。

もうすでに入り口付近から部屋に向かう階段に到るまで、すごく古そうでいい感じの宿です。

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よくも今まで保存してくれたものとうれしくなるような宿でした。

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宿への意見、苦情は投書箱へ。

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部屋も古いとは思いますが、ストーブも暖かく、設備も近代化していてなかなか快適です。窓は中庭に面していて、すごい積雪があったことがわかります。

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部屋でお茶を飲みながらおばちゃんと話してみると「弘前も雪が多いところで、1月、2月ならこれくらい降るけれど、12月にこんなに降るのは珍しい」といってました。

ちなみにこのおばちゃんに「女将さん」と呼びかけると「私は女将さんではなく手伝いです。この宿は今、若主人がやっております」ということでした。

とにかく雪がすごいのでこのまま夕食まで引きこもろうと思っていたのですが、少しすると外が明るくなり、雪がやみました。そうなるとせめて弘前城くらいは見学したい気分になってきます。

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下に降りてさっきのおばちゃんに見送られ外に出ました。帳場には若主人もいて「家にも風呂があるけれど、もし良かったらあとでで近くの温泉まで送っていく」といってくれました。かなり若いご主人でした。それもいいな、と思ったのですが、とにかくそれは後で考えることにして、お城見学へ。雪が積もって歩きにくいですが、弘前城は宿からすぐ近く。高さもあまりないので、すぐに到着しました。

途中、津軽為信と思われる像も発見。

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弘前城のお堀は凍っていました(笑)

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歩いているうちに再び雪がひどくなってきて、天守あたりではもう豪雪状態。それでも数人の觀光客が見物していました。

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写真ではわかりにくいですが、このへんではそうとうすごく降っています。

私はお城の北門を出たところにあるという古い商家を見学したいと思っていたので、このあと大雪が降るなかを北門方面に向かいました。

これが北門。

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門を出るとすぐに古い大きな家がありました。これが代々続く商家です。

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今でも酒屋をやっているようで、店に入って「見学したい」というと、「今はあまり片づいていなくて、土間だけなら見せられるけど」というので、100円払って見学することにしました。

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中に入ると薄暗くて大きな土間に面して座敷があります。土間と座敷の天井はひたすら高い。というか天板はなく、屋根組が見えていたような。囲炉裏では炭ではなく薪を燃やしていました。本当に昔のままのたたずまいのような気がします。

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ここのおばちゃんが「本当に昔のままなんですよ」というので、「いやあ、本当にうらやましい。いい家ですね」というと、「あんまり古くて住むのはいろいろ大変だ」といってました。そうでしょうね。でも雰囲気のあるいい家でした。

この近くにいろんなおみやげを売っている大きな売店があり、そこにも寄ってみました。結局ここでは地酒を買って、宿に戻ることにしました。このへんでもうだいぶ暗くなってきました。

あとは宿に戻ってお風呂に入り、夕食を食べたのですが、そのへんの話は次回にまわします。


[弘前  石場旅館](2011年12月宿泊)
■所在地  青森県弘前市元寺町55
■楽天トラベルへのリンク→石場旅館
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