兵庫城巡りの続きです。
夕方豊岡から城崎温泉へ。普通列車でも10分くらいのところで本来190円なのですが、普通列車が少なく、この時間帯は特急こうのとりに乗るしかありませんでした。そうすると自由席でも820円もかかるというジレンマ。バスも出ているみたいだったのでバスにすれば良かった。
そんなせこいことを考えている間もなく城崎温泉駅に到着。ここは前に一度訪れたことがありますが、宿泊するのは初めて。前に来た時に見学した「やなぎ荘」を予約してあります。「やなぎ荘」は、以前はウェブサイトなどでボロ宿自慢をしています。
その言葉がひっかかって前から機会をうかがっていた私は、いよいよ今回やなぎ荘に泊まることにしたわけです。
前にチェックして場所もわかっているのでまっすぐ「やなぎ荘」へ。
見た目は普通。しかもこの本館のほか、高級別館や名物料理「かにかまくら」などもあり、本当は「ボロ宿」扱いしてはいけない宿なのです。
この日、土曜日ということもあってか城崎温泉は人が多く、「やなぎ荘」も客が次々とチェックインしていました。私たちもとりあえず3階の部屋に案内してもらいました。
古いといえば古いかもしれませんが、まあ私がふだん泊まっている宿と比較しても、普通というか、そんなにボロではありません。
次の間付きで、冷蔵庫や金庫などの設備もありました。
窓からの景色。1本裏に入っているので、山も見えますが、なかなか渋い建物が並んでいます。
しばらく待っていると係の仲居さん登場。まあおばちゃんという感じの年齢だと思いますが、かなりベテランというか、熟練した人でした。「お客さんは城崎は初めて?」と聞かれたので、「いや~前にボロ宿を見にきたことがあります」というのもなんなので、「だいぶ前に一度‥」というと、「じゃあ初めてみたいなもんだから、ちゃんと説明しますね」といって、城崎温泉ガイドマップを取り出し、説明を始めました。
要するに城崎温泉は、昔から外湯めぐりをするべき温泉地なので、内湯はあまり使われないというのが前提。その外湯めぐりをするのに、それぞれ営業時間なども異なるので、どうすれば今日と明日朝で効率よく全部まわれるか、という解説でした。
私はそんなに全部入りたいという執念はなかったのですが、まあせっかくなので話を聞きました。重要事項はペンで書き込んでくれます。
さらにおばちゃんは「これから出かけたとしても、あまり何か食べたりしないほうがいいですから。うちはボロ宿だけど、料理だけはすごくいいから。ボロ宿だけど」としつこく“ボロ宿”発言。私は「そうはいっても私は一番安いプランで頼んだのでそれほどでもないのでは?」と聞き返したのですが、「安いプランだろうが、とにかくすごくいいから余計な買い食いはやめておいたほうがいいです」というのです。
そういうことなら、素直に従うことにして、ちょっと休んですぐに浴衣に着替え、風呂道具を持ってでかけました。風呂道具を入れる便利な袋も宿でくれました。
城崎温泉の宿泊客は、バーコードのついたカードを渡され、それを使うとどの外湯でも無料で入ることができるシステム。近代化されています。
しかしいずれにしても全部入るのは無理だと思っていたのでここパス。私としては優先順位の高い「一の湯」に向かいました。
「一の湯」外観。
そして内部。ゴージャスで規模も大きい。お風呂もなかなか良かったです。
出ようとすると、下足番の人がげたを揃えて出してくれます。げたに宿の名前は書いてありますが、どうして私のげたがわかるのでしょう?????? まさか記憶しているのか。
そんなことを思いながら、さらに温泉街を奥に進みます。しかしこの道は幹線道路らしく、車が多くて、あまりのんびり歩ける感じではありません。
この日人が多かったのは、何か部落解放関係の会合があり、その関係者が泊まっているからだそうです。垂れ幕や看板で「歓迎」と掲げている店も多かったです。
この先にもうひとつ入りたいと思っていた「御所の湯」というのがあるのですが、ここは行列ができていました。なのでここもパス。たくさんあるので、あまりこだわっている場合ではありません。
途中で「三木屋」を発見。志賀直哉せんせいが泊まった宿として有名。私もこんな高級宿に泊まって、ブログで「城崎にて‥」などと書ける身分にいつかなりたいものです。
この少し先を左に入ったところにあったのが「まんだら湯」。ここは「一の湯」より小さいですが、なかなか豪華な建物でした。
ここを出る時にもやはりげたがすぐ出てきたので、番の人に聞いてみると「まず浴衣とげたの宿名で覚える。あとは何人で来たか、男性か女性か、などと見当をつけるためのヒントを覚えている」ということでした。なるほど。しかし城崎温泉に宿も数ある中で、その浴衣の柄などをすべて覚えるとすると、かなり大変な仕事です。
次に向かったのがさらに奥にあるという「鴻の湯」。ロープウェイの近くになります。ここもそんなに大きくありませんでした。
このへんでだいたい食事の時間が近くなってきたので、宿に戻ることにしました。もう暗くなってきています。
城崎温泉街を流れる川の夜景を撮影。柳の木がなかなかの風情。城崎温泉といえば、もはや大温泉地ですが、こんな風情が残っているから人気があるんでしょうね。
夜の「やなぎ荘」に戻ってきました。けっこう歩きました。思えば朝から山登りあり、街歩きあり、とかなり脚力を使った一日でした。
部屋に戻るとすでに食事の支度がほぼできていました。そのまま待っていると、例のおばちゃんが次々と料理を運んできました。見習いの新人(若い女性)が、手伝いに付いてきています。「まだ見習いだから、私の後を付いて歩くけど、よろしくね」とおばちゃんがいいます。
料理の細かいことはあまりわからないのですが、確かにボリュームがあり、季節はずれなのでしょうがカニもあり、エビもあり、豚肉のせいろ蒸しもありました。
この焼いたエビは皮を向いて食べるわけですが、おばちゃんは「私なんかは酒飲みだから、皮ごと食べるけどね。皮ごと食べると香ばしくておいしいですよ」というので、そうして食べてみたらおいしかったです。
あとほかにもいろいろ出てきました。問題はしゃもじが出てなかったことでしたが、電話で呼ぶのも面倒なので箸でごはんをよそって食べました(笑)
この日はよく動いて温泉も入ったせいか、ビールがおいしい上に、熱燗も頼んでだいぶ飲んでしまいました。
そうして食後の片づけには若い女性2人でやってきました。見習い2人組。
この2人が布団を敷いてくれたのですが、途中で別のおばちゃんがやってきて、シーツのしわが出ないようにとか、いろいろ実際にやってみせて指導しています。しかもやはりおばちゃんは手早い。私も素人ながら、見習いとはだいぶ力量の差を感じました。
さて、これでいつでも寝ることができるので、この後もちょっと散歩に出てみました。すると柳湯のすぐ前のあたりで、琴と三味線の演奏準備をしているグループがいたので、これを聞いてみようと思い、柳湯の足湯に座りながら待ちました。
しかしなかなか始まらないので、先に狙っていた射的屋へ向かうことに。道路はぼんぼりでライトアップされています。
射的屋ではまじめに狙いましたが、この前積善館の夏祭で取ったのと同じようなのしか取れませんでした。
宿の方向に戻ってみると演奏が始まっていました。こんなサービスも地元の人たちが観光活性化のために協力してやっているでしょう。確かに温泉宿に泊まると夜は意外にひまなので、こういうのは健全でいいのではないでしょうか。
宿に戻ってさらに内湯に入ってみました。ここの内湯は城崎温泉の内湯としては珍しいかけ流しだそうで、実際なかなか良かったです。「外湯めぐりしなくてもここでいいじゃないの」と思ったくらい。写真がうまくとれなかったので、下の写真は宿のサイトから借りました。
別館に行くと、こんな↓貸し切り湯もあるそうです。なかなかいい雰囲気ですね。
そういうわけでお風呂から上がり、この夜は疲れて寝てしまうところだったですが、隣の部屋の学生の団体が夜中までうるさくて、時々目が覚めました。実は昼間のうちから仲居のおばちゃんにいわれていたのです。「うるさかったらこっちから注意するからいってね」と。
しかしあの学生のバカ騒ぎも、こっちの疲れには勝てず、やがて寝てしまいました。
朝食は食堂で取ります。確か2階にあったと思います。早めに行くとまだ空いていましたが、やがて例の学生たちもやってきました。やはりいかにも夜中に奇声を発して騒ぎそうな、アホそうな顔がそろっています。
そういえば私も昔、温泉で騒いで隣の部屋におばちゃんに怒鳴られたことを思い出しました。
食事はこんな感じ。鍋は湯豆腐でした。名前のわからない焼魚が妙にうまくて、お酒を頼みそうになりましたが、やめておきました。
例の見習い女子2人もいて、おばちゃんの指令を受けて、「おかわりはいかがですか」などとキャッキャいいながら学生たちの席を回っています。何が可笑しいのか。箸がころげても可笑しいのか。学生もおばちゃんによそってもらうより、見習いによそってもらうほうがうれしいようでした。私のほうにはおばちゃんが「おかわりは」といってきましたが、もうお腹いっぱいなのでやめておきました。
この日はついに但馬地方の城巡りミッションが終了する日。この後、別件で宝塚に一泊することにしていましたが、それは普通のホテルなので、ここで「兵庫・ブロガー100人戦国トリップ」としては終了になります。
宿を出る時、おっちゃんがいたので最近の景気を聞いてみると、「まあ悪くはない」といった感じの答えでした。何よりのことです。
会計の時に、木製のしゃもじをくれました。これは夕食の時にしゃもじを忘れていたからなのか、いつものおみやげなのかわかりません。とにかく宿を出て駅に向かいつつ、お土産などもみようかと思って歩き始めました。
前に来た時に見た廃業した「遊技ホール」や、ラーメンを食べた店などの前も通りました。
駅まで行く途中にあるのは「地蔵湯」。ここに入っていっても良かったのですが、今回はいずれにしても全部制覇はできないのでやめておきました。
駅前に来て思い出したのですが、前はたしかカニの足のオブジェがあったと思うのですが、なくなっていました。
その替わりかどうかわかりませんが、こうのとり様の像がありました。
顔はめなどもひととおりやって駅の窓口に行くと、ちょうど宝塚に直行する特急が出るところだったので、あわててチケットを買い電車へ。
城崎温泉を後にしました。今回、だいぶ様子がわかったので、ぜひまた訪ねてみたいと思います。
[城崎温泉 やなぎ荘](2013年10月宿泊)
■泉質 ナトリウム・カルシウム塩化物泉
■所在地 兵庫県豊岡市城崎町湯島701