日本ボロ宿紀行

ボロ宿にあこがれ、各地のボロ宿を訪ねています。

2011年12月

「ボロ宿」というのはけして悪口ではありません。
歴史的価値のある古い宿から単なる安い宿まで、ひっくるめて愛情を込めて
「ボロ宿」といっています。自分なりに気に入った、魅力ある宿ということなのです。
もともと、できるだけ安く旅行をしたいということから行きついた結果ではありますが、
なるべく昔の形を保って営業している個性的な宿を応援していきたいと思います。
湯治宿や商人宿、駅前旅館など、郷愁を誘う宿をできるだけ訪ねて、
記録に残していくこともいずれ何かの役にたたないかなと‥‥。

風情のある温泉付きの旅人宿 [飛騨高山 お宿 吉野屋]

今年はなぜか名古屋周辺への出張が多く、12月に入ってまた行くことになりました。新幹線で行くと名古屋は近いので、日帰りすることが多いのですが、今回は週末だったこともあり、義理の母親とかみさんを誘って待ち合わせて、高山と下呂温泉に行ってみることにしました。

私は名古屋での仕事が午後からだったので、その日の夕方に高山まで移動して一泊。その翌日に高山で合流し、ちょっと市内観光をした後、下呂温泉に移動して温泉で一泊という計画です。

いつもひとりでぶらぶらしているのとは違い、義理の母親をつれていくとなるとそれなりの宿に泊まらないとならないわけですが、下呂温泉の宿は何回か泊まったことがある高台の「湯之島館」を予約しました。

その前日に自分ひとりで泊まってみたのが高山市内の「吉野屋旅館」です。今回は朝食付きで予約しました。

宿についた時の写真がこれ↓。ほぼ満月。

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この日は3時くらいに名古屋駅に戻り、高山に行くのに電車で行くか高速バスで行くか迷ったのですが、ワイドビューひだは何回か乗っているので、バスに乗ってみることにしました。

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とりあえず名鉄のバスセンターに行ってみると4時出発の高山行きがあったのでこれのチケットを購入。1時間くらい時間があったので、地下街で回転寿司を食べ、天むすを買いました。この日の夜は夕食を予約していなわけですが、もし宿の近くに何もなくても天むすがあれば大丈夫という作戦。

夕暮れが迫り、やがて暗くなっていく中をバスは走っていきます。

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このバスは濃飛バスというやつでしたが、途中で長良川SAで休憩があります。コーヒーを買ったくらいですぐにバスに戻りました。しかし後でわかったのですが、この日はどこかの人騒がせな老夫婦が、古い接着剤などをSAのトイレに捨てたやつが発見され、危険物ではないかと大騒ぎになっていたそうです。午前中は長良川SAも閉鎖されていたとか。

そんなこととは知らず、名古屋から2時間くらいで無事高山駅に到着。もうすっかり暗くなっていました。

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宿に伝えていた到着時間は過ぎていたので、駅前のコンビニでワンカップとビールを買って、すぐにタクシーに乗車。たぶん駅からは十分歩ける距離だと思いますが、時間も遅いし寒いのでタクシーにしました。

着いてみると最初に紹介したように期待以上に良さそうな外観です。飛騨国分寺前の通りをまっすぐ行き、高山別院のすぐ近くにありました。けっこう歴史のある建物ではないかと思います。

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入り口の格子戸なども、なんとなく風情を感じます。こういうのを見るだけで、きて良かったと思ってしまいます。

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近くに飲食店も見当たらず、面倒なのでこの日は天むすだけを食べることにして、すぐに宿にチェックインしました。

出てきたご主人らしきおっちゃんは、ちょっと上品そうな感じの60代くらいでしょうか。

「まず先にお風呂とかをおしえておきます」といって、1階の廊下を奥に向かい、「トイレはここ。2階にもありますけど数が少ないので」などと解説していきます。お風呂は「一応温泉で、朝は6時から入れます」ということでした。

こういう古い町宿で朝もお風呂に入れるというのはすごく貴重です。だいたい温泉であること自体が珍しい。すごく寒い日だったので、お風呂の価値はさらに高まります。

そして入口付近の階段に戻り、2階の部屋に案内してもらいました。さらに上に向う階段もあったのでここは木造3階建てのようです。

部屋もなかなかきれい。

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部屋の鍵にはさるぼぼがついていました。

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この家は古いとは思いますが、内装や設備は近代化されているので、かなり手を入れたものと思われます。

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ご主人にこの家はいつごろの建物かを聞くと「昭和二十年。創業はもっと古いんですが、終戦間際に目の前の通りが軍の命令で拡幅されることになって、この並びは古い家が全部取り壊されました。そしたらその半年後に終戦ですよ。もしそれがなかったら、このへんも上三之町などと同じように、古い町並みが残っていたはずなんですが」ということです。それはすごく残念。

高山は空襲を受けていないので古い町並みが残り、観光の目玉になっています。しかしやはり戦争の影響がこんなところにあったということです。

付近の見どころについてもいろいろ教えてくれました。この宿がある場所から歩いて市内どこでもいけそうですが、近場では「飛騨まちの博物館」が最近新しくなって見る価値がある、ということでした。いろんな記念館や古い建物だけでなく、高山城址も少し歩けば行けるということでした。

私は高山は陣屋があるので天領だと思っていたのですが、お城もあったとは知りませんでした。


私は「それもそうなんですけど、それよりおいしい高山ラーメンの店を知りませんか」と聞いてみました。

実は私は昔高山に遊びに来た時に、すごくうまいラーメンを食べた記憶があるのです。その店はちょっと休憩に入った喫茶店で、女主人に「おいしいラーメン屋を教えてくれ」と頼んだところ、店の客全員に大声で「おいしいラーメン屋さん知ってる人?」と聞いてくれて、お客で来ていた人々の多数決で推薦された店だったのです。さすがに地元民の多数決だけに本当においしかった。

しかしだいぶ前の話で、店の名前も場所も忘れてしまいました。そこで翌日のお昼を食べるために、改めて宿のご主人に聞いてみたわけです。

主人は「おいしいラーメン屋ですか。それは難しい。ラーメンには好みがあるからねぇ~」と悩んでいます。

その気持は私もよくわかります。自分がうまいと思っても、誰にでも当てはまるわけではないので、簡単に「ここ」と一口にいうわけにはいかないのです。

「なるべく典型的な高山ラーメンがいいんですが」というと、「じゃあ2~3軒、地図に書き込んで持ってきます」といって下に降りていきました。

すぐに戻ってきて地図に書き込んでくれた店が2軒。「なかつぼ」と「桔梗屋」でした。「桔梗屋」は超有名店なので名前だけは知ってましたが、「なかつぼ」は知りませんでした。ご主人の話によると、「どちらも私が子供の頃からあったような昔ながらの高山ラーメンで、支那そばっていう感じですかね。味は濃過ぎるという人もいるけれど、私はそれくらいのほうがちょうどいい」ということでした。

「桔梗屋」は純粋なラーメン屋で、「なかつぼ」は餃子とかビールとかもあるそうな。「私は『なかつぼ』に行くことが多い」ということでした。

私としてもそのどちらかに行くことに決定。ご主人にお礼をいって、お風呂に入ることにしました。お風呂は温泉であり、こじんまりとしていますが浴室は2つありました。空いているほうに鍵をかけて入っていいそうです。

私が下のお風呂に行くと、ひとつは誰か使っているようでしたので、大きいほうのお風呂を使いました。

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かなりきれいで新しい感じです。循環していますが、やはり温泉はいいな~。

部屋に戻ってすぐに食事。といっても天むすが少しあるだけ。ビールとお酒を買ってありましたが、寒い日なのでビールはやめておいてお酒だけ飲みました。こうして写真を見るとかなりわびしいですが、どうせ翌日は豪華夕食付きの旅館なので、こんなもので十分です。

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その後は隣の部屋がパソコン室兼喫煙室になっているので、そこで少し過ごしました。囲碁もすぐにできる状態でセットしてありました(笑)。一晩いましたがどうも物音ひとつせず、2階には誰も客はいないようでした。

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翌朝も6時に起きてお風呂に入り、7時半くらいから朝食。玄関脇の食事部屋に行こうと階段を降りるとご主人が出てきました。「もう食べられますか」と聞くと「ああ、もう準備できてます。私は何にもやってないけど」と笑います。

部屋に入ると食事の準備ができていて、こんな感じ。

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女将さんらしき人が出てきて朴葉味噌に火をつけてくれました。「今日は高山でも今年一番というくらい寒い」といってました。

朴葉味噌は飛騨牛入りの豪華版。

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漬物はあとから追加で持ってきましたが、これがすごくおいしかったです。

ここのご主人はいろいろ博学そうな人でしたので、出がけにもう少し話もしたかったのですが、どうもちょっとばたばたしているようだったので、すぐに出かけることにしました。

改めて明るい時に撮影した宿の外観。やはりなかなか立派で風情があります。

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この日はお昼に高山駅でかみさんと義理の母と待ち合わせているので、それまではフリータイム。宿からぶらぶら歩いて古い町並みを見たり、高山陣屋の朝市なども行ってみました。

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クリスマスが近いのでこんなのもいました。

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寒いので古い喫茶店に入ってコーヒーを飲んでみたり。大正ロマンみたいな喫茶店でしたが、ここの主人は慣れているせいか外人觀光客にもちゃんと英語で応対していました。えらいものです。

そして昼頃無事に落ち合って、まずは宿のご主人に教えてもらったラーメン屋へ。古い歓楽街みたいな裏道を探すと、「桔梗屋」がすぐに見つかって、行列もできていなかったのでここに入ることにしました。

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やはりおいしかったです。それにしても私が昔食べたすごくおいしかった店はどこにあるのでしょうか。謎のまま残ってしまいました。

そのあとは型通り上三之町、上二之町などを見物。だいたいみんなが行くようなところをきっちり回りました。

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味噌汁の無料サービスを試したり、喫茶店でぜんざいを食べたり。

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ここで宿屋も見つけました。「旅館河渡」。後で調べてみたら素泊まり専門の宿のようですが、場所的にはすごくいいので今度はここにも泊まってみたいと思います。

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かみさんが昔泊まったことがあるという「長瀬旅館」も訪ねてみました。すごく良さそうな建物ですが、どうも近年結婚式場になってしまったみたいです。

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再び陣屋にも行ってみて、中も見学してきました。もう何度も見てますが、例によってお白州を撮影。

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そんな感じで夕方になったので下呂温泉へ。特急電車で下呂温泉に到着したのが6時前くらい。

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宿のバスが待っていたので早速「湯之島館」に直行したわけですが、その話はまた次回にします。

[高山市  お宿  吉野屋](2011年12月宿泊)
■所在地  岐阜県高山市馬場町2-89
■泉質  低張性弱アルカリ性泉
■楽天トラベルへのリンク→お宿 吉野屋
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青梅旧街道に面したレトロ系ビジネス旅館 [青梅市 橋本屋旅館]

御岳山の御師宿坊を出て、あまりにも天気がいいので、せっかくここまで来たからにはもう一泊できないかと考え始めました。青梅あたりには古い宿もありそうです。岩蔵温泉なんてのも良さそうですが行ったことがありません。

ちょっとウェブで調べてみると、青梅の旧街道沿いに「橋本屋」という良さそうな“ボロ宿”があることがわかりました。さっそく電話してみると、「満室」。確かに紅葉シーズンでもあり、週末だったので、当日予約は無謀だったかもしれません。

そうなるとあとはなりゆきまかせで、もしいい宿が見つけられなかったらそのまま帰るつもりで出かけました。

とにかく天気が非常に良かったので、「みたけ渓谷」を歩いてみることにしました。御嶽駅から沢井駅まで。川沿いに散歩道が作られています。

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「沢井」というと、大菩薩峠の机竜之助の生地で、沢井道場があったという「武州沢井村」のことでしょうか。確か御岳山の近くであったような気もしますが、しかし大菩薩峠のふもとまで行くにしてもここからかなり遠いし、あまり確かではありません。

とにかく、遊歩道に降りて歩き始めました。

天気が良く、けっこう暑いくらいです。紅葉も色づいており、カヌーやバーベキューなど、遊んでいる人もたくさんいました。

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それに山奥の渓谷沿いの細い散歩道でありながら、けっこうカフェやそば屋、野菜の直売店などがたくさんあるのが意外でした。私が知らないだけで、けっこう観光客の多い有名スポットなのでしょう。

私の狙いは、美しい渓谷美というより、沢井駅近くにある小澤酒造の利き酒をやることでした。銘酒「澤乃井」で有名。本社ちかくに「澤乃井園」とかいう庭園があって、ここで利き酒とか食事もできるということでした。

歩いているうちに沢井駅が近くなり、「澤乃井園」はすごくにぎやかなのですぐに見つかりました。

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売店も盛況でしたが、まずは利き酒処へ。

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一応、ちょっと高そうなやつを2種類ぐらい飲んでみました。料金は2種類飲んで、「ぐい飲み代」が含まれていて500円くらい。このぐい飲みは持ち帰って愛用しております。かなり大きいので2杯飲むとかなりききます。なかなかコクのあるいい酒でした。ちなみにつまみ持ち込みは禁止。

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ここでお昼も食べようと思ったのですが、メニューの種類が少なく、しかも売り切れが多かったのでやめておきました。「澤乃井」の安い四合ビンを1本買って出発。

そして沢井駅から青梅へ。

青梅はレトロタウンとして町おこしを狙っているようで、駅のホームの立ち食いそばもなかなか良さそうでした。「青梅想ひ出そば」。

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普通ならここで食べるところですが、この日はもっと本格的に町中で食べようと思っていたのでパス。

改札口にはバカボンのパパの像。どういういわれかわかりませんが、赤塚不二夫も青梅の町おこしでキーアイテムになっているようです。私の個人的な考えをいわせてもらうなら、青梅のような街道筋の歴史ある町は、こんな方向に走る必要はないと思います。

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駅前はそれなりに商店もあるのですが、やや寂れた感じ。

とにかく今夜の宿泊を断られた「橋本屋旅館」を見学に行くことにしました。電話に出た若い女性は非常に感じが良く、「あまりやる気がないので面倒だから断る」という感じではなく、本当に満室で、申し訳ないという感じが伝わってきました。これだけで私としてはいい宿だということが実感できます。今後のために、せめて見るだけでも見ておきたいと思いました。

駅から歩くと、わざとらしいレトロ演出が目につくなかで、橋本屋を発見。駅からはけっこう遠く、10分くらい歩いた感じ。しかし、なかなかいい宿です。

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こういうランプがなかなか渋い。

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ここは泊まりたかったな~。でも次の機会に期待することにして、駅方向に戻りました。

だいたい、こういう古い映画看板が目立ちますが、これはすでに夕張市でやって、あまりうまくいっていないパターンでは?  シャッター通りの侘しさと皮肉な対照を感じますが、でも、努力をしている感じは伝わってきます。

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本当のことをいえば、青梅本来の歴史をもっとそのままにアピールするほうが、私のような偏屈人は魅力を感じます。ちょっと反省をうながしてやろうと、まず橋本旅館の近くにある「昭和幻燈館」というやつに寄ってみました。

入口に力道山のパネルが置いてあったり、すでにわざとらしいです。

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中に入ると受付に人がいません。有料なのですが、誰もいないので勝手に中に入ってみました。

すると、思いも寄らなかった魅惑の空間が広がっていました。

早くいえばジオラマです。

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私は実は、こう見えてこういうのが大好きなのです。

古い日本のいろんな町を再現していました。本当によくできています。

じっくり見るなら、1日いてもいいくらい。

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昭和というより、もしかしたら大正の雰囲気も混ざっているかも。

とてもすべては紹介できませんが、中でもいいと思ったのが、どこかの山の温泉宿を再現したジオラマです。

藁葺き屋根と露天風呂。こんな宿が実際にあったら私は通いつめると思いますが、本当に今の日本にはなくなってしまいました。

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ボーっとした気分でジオラマ室を出ると、受付におばちゃんがいました。「お金を払おうと思ったけど、誰もいなかったので勝手に入った。けして怪しいものではない」という趣旨のことをきっぱりといったのですが、あまり聞いてもいないようで、「ここは200円ですけど、ほかの昭和レトロ商品博物館や赤塚不二夫会館も見るなら、共通券がお得で700円」といわれたので、つい700円払ってしまいました。200円割引になるようです。

お昼がまだでおなかがすいていたのですが、とにかく買ってしまったからにはこれら2つのイベント館に行ってみるしかありません。

「昭和レトロ商品博物館」と「赤塚不二夫会館」はすぐ隣合わせにありました。

まずは「赤塚不二夫会館」へ。

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ここもバカボンのパパの像が置いてあり、観光客をなめきったようなディスプレイが盛りだくさんでした。マンガのキャラと引っかければ、それだけでけっこう人が集まってしまうという最近の風潮。私は厳しく批判の鉄槌を下そうと思い、そうであるからには実際に見ておこうと思って入ってみました。

手前に受付やいかにもテキトーなキャラクターグッズが置いてある売店。バカボンの靴下とか誰が買うのでしょう。そんなものを横目に見ながら奥に入っていきました。

そこでいきなり目についたのが「トキワ荘」のジオラマです。トキワ荘といえば泣く子も黙る日本マンガ業界の歴史的名所ですが、現存していません。それが当時のようすさながらに再現されています。

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よ~く見ると、流し台で体を洗っているやつや、ラーメン屋「松葉」の出前を待っている人も。こんなに凝ったものをよくも作ったものです。見ていてまったく飽きることがありません。

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私としてはつくづくジオラマが好きだな~と思い知らされた一日でした。ただ、後でわかったのですが、この館内は写真撮影禁止のところが多く、このジオラマも撮影して良かったのかどうかわかりません。もしダメだったとしたら、こんなところに載せてしまったので今後私にしかるべく刑罰が課されるおそれがありそうです。

とにかく赤塚不二夫という人は、まあ、私の世代くらいになると知らない人はいないわけで、あまりにも多くのヒット作があるため、もはや空気のような存在です。いちいち記念館で業績を確認したい、というような存在ではないわけです。

イヤミの隣で「シェー!!」をやって記念撮影できるスポットなどもありましたが、あまりにバカバカしいため、一応見せしめのために私もポーズをして撮影しておきました。手先の切れ具合といい、完璧な「シェー!!」でしたが、ここで公開するのはやめておきます。

2階にあがると、原寸大バカボンのパパがおぜんに座っていました。つい、記念写真を撮ってしまいました。

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まあそんなこんなで、こういうふざけた記念館がどれほどの意味があるのかわかりません。しかし、私としてはこういう安易なアプローチの是非を検討する意味でも、なるべく多くの人に一度行ってみることをおすすめします。しつこいようですが、その場合、3館共通券がお得です。

さて次は、隣接する「昭和レトロ商品博物館」へ。ここは古い駄菓子屋の雰囲気を再現し、懐かしいレトロ商品をたくさん並べています。駄菓子だけでなく生活用品なども多数置いてありますが、最近、こういうのはけっこうあちこちにあるので、別にたいしたことはなかったです。ただ商品の充実度というか、収集したレトログッズはなかなかのボリュームがありました。

黄金バットの紙芝居も。これは古い。「どこから来たのか黄金バット。こうもりだけが知っている」。

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しかしそんなことより、ここの見どころは雪女の部屋です。2階にあがる古い急階段があり、たぶん昔はカイコの繭を育てていたような屋根裏部屋につながっています。

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ここが雪女の部屋。

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「なんでまた」と私も思いましたが、いろいろな考証の結果、雪女という民話の舞台は、この青梅であったという説が有力なのだそうな。そういうわけでいろんな雪女の造形物が置いてありました。

私はああいう話は、雪で命を落す危険があるようなところでは、日本のどこにでもあったのではないか、と思っているのですが、とにかくけっこうにぎわっていました。もともと古い家を活用しているだけでなく、古い本や資料も置いてあり、なかなかおもしろいスペースになっていました。

そんなわけで青梅の町起こしレトロ路線にどっぷり浸かり、宿を探すような余裕もありませんでした。駅前にはビジネスホテルもありましたが、結局このまま帰ることにして、とにかくお昼がまだだったので2時過ぎくらいに食堂を捜索。

駅のすぐ近くにそば屋を発見。

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なかなか良さそうだったのでここでビールを飲みラーメンを食べました。歩きまわった後なのてビールがおいしくて、つい冷奴も頼んでしまいました。

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懐かしいレトロラーメンの味がたまらない。そばもなかなかおいしかったです。

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今回、青梅・奥多摩方面に出かけたのは御岳山の紅葉狩りが目的でしたが、やはり古くから人が住んできたこのエリアには、なかなか捨てがたい魅力があると感じました。「橋本屋旅館」は本当に良さそうだったので、東京からは近いですけれどいずれ泊まってみたいと思っています。

[青梅市  橋本屋旅館](2011年11月見学)
■所在地  東京都青梅市西分町2-40
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下界から隔絶した天空の宿坊を訪ねる [御岳山 駒鳥山荘(後編)]

駒鳥山荘の続きです。

早めに宿についたのですが、やはりこの日は異常な冷え込みであったようで、すぐに石油ストーブをつけてもらいました。

あらためて良くみるとなかなかいい部屋です。

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隣の部屋に布団をしいてあり、こっちもなかなかいい感じ。ふとんには湯たんぽが入れてありました。

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見た目以上に歴史を感じます。古い手紙が額懸けしてありましたが「馬場」という名前が読めます。このへんは「馬場」という名前の御師の家が多いようで、武田の重臣であった「馬場美濃守」の流れをくむといわれているそうです。

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寒いので早くお風呂にはいることにしました。ここのお風呂は男女別に2つあるのですが、女将さんが「今日はお客さんがそれほど多くないので、貸し切りにしてもたぶん大丈夫です」といってくれたので、入る時に声をかけて、「使用中」の札をかけて貸し切り入浴しました。

このお風呂が山頂とはおもえないぜいたくなもので、大きな桶を使用した湯船でした。貸し切りだとかなりゆったりしていて、冷えた体もすっかり温まり、くつろぐことができました。

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早く宿に着いたので夕食までやることがなく、テレビなんかを見てみましたが、6時を過ぎて待ちに待った夕食。電話で知らせてくれました。

食事の場所は大広間でした。神棚もあります。

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食事はおでんと川魚の塩焼きがメイン。こんにゃくとか、山芋とか山らしいものが並んでいますが、まあ普通の家庭的料理です。精進料理ではありませんでした。あとから天ぷらも出てきました。

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最初ビールを飲んだのですが、この日は寒かったのですぐに熱燗に変更。2本くらい飲んで、いい気分になりました。

この時、となりのテーブルにあとからきた客は、たぶん20代くらいのイケメンにいちゃんでした。黙々とひとりで飯を食っており、酒などは飲む気配もなし。

「いったいどういうつもりでこんな山の上にひとりできたのか」といろいろ考えていると、,女将さんがそのにいちゃんのところに着て、明日の滝行は5時くらいに出ますからよろしくとかいって、たぶん装束などが入っていると思われる袋を渡していました。

このイケメンにいちゃんにいったい何があったのか、一人で滝に打たれるために来たみたいです。この寒いのに大丈夫なのでしょうか。

ほかにも2グループほどの客がいて、その中の2人くらいが同じように装束を渡されていたので、イケメンにいちゃんを含む3人が滝行参加者なのでしょう。

ちなみにイケメンにいちゃんは、食後に共用の急須を独占してお茶を飲んでいたのですが、私たちもお茶を飲みたいなと思って見ていると、あわてて「すみませんでした」といって急須を持ってきました。ただ見ていただけなのに、何かプレッシャーを与える殺気を感じる視線だったのでしょうか。

部屋に戻ろうとすると女将さんが朝食の時間をきいてきて「7時頃」というと、「明日の朝は滝行のお客さんが、7時から神棚に拝礼する行事(正確な名称は忘れました)をやるので、それに参加したいならしてもいい」ということでした。

滝行と比べるとだいぶ楽そうなので、それには参加させてもらうことにしました。

部屋に戻って夜が更けるとますます寒くなりました。ふとんは隣の部屋に敷いてくれていたのですが、せっかく暖めた部屋で寝たほうがいいと思い、ふとんを引っ張ってきて寝ました。とにかく湯たんぽが効果絶大で、これがなかったらけっこう厳しかった。

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翌朝早くトイレに起きたらまだ5時頃でした。今頃、例のイケメンにいちゃんは滝に打たれにでかけたのだろうか、などと思いながら、天気を見ようとベランダ越しに外を見ると、まだ暗い中で、すごい夜景が広がっていました。朝方でこんな感じですから、前日の夜が晴れていたらすごくきれいだったと思います。

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そうして見とれているうちに徐々に夜があけていき、少し空が赤くなっているものの、雲が少なくいい天気になりそう。食堂のおばちゃんがいっていたように、天気の回復が予報より早まっているようでした。

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遠くに都市も見えます。

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前日の女将さんの話によると、このベランダの方角は八王子や高尾山、その向こうが川崎や横浜で、「天気が良ければ江ノ島や三浦半島も見える」ということでした。こういう風景を毎日見ながら暮らすとすると、気分も大きくなりそうな気がします。

むりやり望遠で撮ってみました。何となく海が見えるような気もします。

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さらにもっとむりやり望遠にしてみました。もうなんだかよくわかりません。

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すっかり明るくなると、いい天気だということがわかります。

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昨日の段階ではこの日も雨だと思っていたのですが、こうなると何となく気分もウキウキしてきます。

部屋に差し込む朝日も暖かい感じ。せっかく2間あるのに、隣の部屋は結局まったく使いませんでした。やはり私の場合、ひと部屋で十分なようです。

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朝食も同じ大広間です。7時から拝礼があるので早めに行くと、滝行帰りらしき数人がいました。話を聞いてみると「滝行自体は短時間だが、行き帰りで1時間くらいは歩いた」ということでした。

その後かっぷくのいいご主人がやってきて、神棚の前に数人が並び、拝礼しました。太鼓を叩きながら、なにやら祝詞をあげており、私たちは正座をして平伏しておりました。

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足がしびれてやばいかと思う頃、ようやく終了。このごろは東日本大震災の被災者のために長めに祝詞をあげているそうです。

朝食はこんな感じ。バナナヨーグルト付き。

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部屋にもどって荷物をまとめ出かけることにしました。天気がいいので少しは山歩きができそうです。

出かける時に女将さんと少し話をしていて、最近テレビの取材があって近々放映されるということも聞きました。けっこうそういう機会が多い宿のようです。

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そうしているうちにご主人も出てきて、「今日は天気がよくなったので、御嶽山駅からスカイツリーも見えるよ」といってました。

そんな感じで宿を出発。結局宿坊とはいっても、それなりに過ごしやすい普通のいい宿でした。

前日に通った道を通って、例の商店街へ。この日はまだ朝早いのに、やたらと参拝客が多いのでびっくりしました。

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名物の「神代けやき」も見物できました。このけやきは写真で見る以上に迫力がありました。推定樹齢は1000年くらいにもなる天然記念物。そうすると平安時代に生まれた樹です。

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ひと晩山上で過ごしてみて思ったのですが、山の上の集落というのは景色がいいだけでなく、下界から隔絶されたような不思議な雰囲気があり、なかなか魅力的です。

途中に商店を発見しましたが、こんな家の2階の部屋でも借りて、1か月くらい暮らしてみたい。そんな無理なことを妄想してみたりしました。

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狭い集落の道にもなかなか風情を感じてしまいます。

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この日は普通に御嶽山駅まで行くのではなく、展望台を通ってリフトで降りてみることにしました。それにしても登ってくる客が多い。これから山を降りようとしているのは私たち以外、ほとんどいませんでした。途中の空き地がなにかのパワースポットとして知られているそうで、女の子が数人集まっていました。

展望台に到着。今登ってきた客が眺望を楽しんでいます。

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残念ながら少し雲が出てきてスカイツリーは見えませんでしたが、東京の街並みが遠くに見えました。自宅の近くの中野サンプラザも見える、と書いてありましたが見つけられませんでした。

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リフトに乗って御嶽山駅へ。

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この付近に売店がいくつかあるので、ひやかしていると、おみやげ屋のおばちゃんがお茶をいれてくれたので、少し休憩。駅前では小菅の岩魚だか山女だかも焼いていましたが、まだ焼けていないから売れないということでした。

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ケーブルカーの時間を気にしていたのですが、もうひんぱんに昇り降りしていて時刻表は必要ありませんでした。名残惜しいところをついに下山。

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下の滝本駅もケーブルカーに乗ろうとする人の行列があふれ、バスの停留所付近まで渋滞していました。

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これを見ると天気は悪かったものの、人が少ない時に登れてよかったのかもしれないと思いました。またも来た時にのったバスにのってJRの御嶽駅へ。

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この後、天気がいいので多摩川沿いを歩き、青梅にも寄ってみたのですが、その話は次回にします。

[御岳山  駒鳥山荘](2011年11月宿泊)
■所在地  東京都青梅市御岳山155
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プロフィール

もんすけ

 古い湯治宿や駅前旅館など、日本が高度成長時代に入る前からあったような雰囲気の宿が大好きで、各地を回っています。
 どこにいってもそれなりに立派な宿が多く、個性的なボロ宿に出会うことは少なくなりました。
 10年、20年前ならもっといろんな宿が残っていたと思いますが、しかしいま現在でも、10年後、20年後に比べたら多くの貴重な宿が残っているはずです。そうした宿を記録に残していけたら、と思っています。

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民宿すずき屋(湯野上温泉)

山形県
最上屋旅館(酒田市)
松井旅館(肘折温泉)
若松屋村井六助(肘折温泉)
亀屋旅館(肘折温泉)
福島屋(滑川温泉)
亀屋万年閣(小野川温泉)
三木屋(かみのやま温泉)

栃木県
雲海閣(那須湯本温泉)
江戸屋(板室温泉)

群馬県
伍楼閣(老神温泉)
汪泉閣(宝川温泉)
長寿館(法師温泉)
奈良屋(草津温泉)
浜屋旅館(川古温泉)
まるほん旅館(沢渡温泉)
積善館本館(四万温泉)
松坂屋旅館(草津温泉)
湯の花旅館(万座温泉)
山水荘もりや(沢渡温泉)

千葉県
第八福市丸(御宿町)

埼玉県
山崎屋旅館(寄居町)
ゲストハウス錦(秩父市)

東京都
駒鳥山荘(青梅市)
御岳山荘(青梅市)

神奈川県
岩亀荘(湯河原温泉)
富士屋ホテル(箱根宮ノ下温泉)

山梨県
古湯坊 源泉館(下部温泉)
赤石温泉(山梨県増穂町)
元湯 蓬莱館(西山温泉)
民宿たちばな(丹波山村)
リーベン古奈家(富士吉田市)

新潟県
旅館 附船屋(上越市)
海老名旅館(佐渡市)
ほてる大橋館の湯(岩室温泉)

富山県
勝江旅館(富山市)

長野県
民宿すわ湖(上諏訪温泉)
湯元齋藤旅館(白骨温泉)
つるや旅館(白骨温泉)
泡の湯(白骨温泉)
金具屋(渋温泉)
野沢温泉ホテル(野沢温泉)
河鹿荘(鹿教湯温泉)
井出野屋旅館(佐久市)
金具屋(渋温泉)
国楽館 戸倉ホテル(戸倉上山田温泉)
河鹿荘(鹿教湯温泉)

静岡県
白壁荘(湯ヶ島温泉)
ケイズハウス伊東温泉(伊東温泉)
金谷旅館(伊豆下田河内温泉)

愛知県
尾張温泉 湯元別館(蟹江町)

岐阜県
お宿 吉野屋(高山市)
湯之島館(下呂温泉)

三重県
旅館 薫楽荘(伊賀市)
山田館(伊勢市)
星出館(伊勢市)

滋賀県
ホテル大津(大津市)
清瀧旅館(彦根市)
三谷旅館(長浜市)

京都府
富貴 若竹(京都太秦)

奈良県
旅館 白鳳(奈良市)

大阪府
南天苑(あまみ温泉)

兵庫県
やなぎ荘(城崎温泉)
いずみ旅館(朝来市)

和歌山県
金剛三昧院(高野山)
巴旅館(和歌山市)

岡山県
あけぼの旅館(津山市)
ホテルグランヴィア岡山(岡山市)

広島県
ふろや旅館(広島市)
佐藤旅館(尾道市)
ホテル清風館(きのえ温泉)

鳥取県
旅館常天(鳥取市)
まきた旅館(倉吉市)

島根県
持田屋旅館(出雲市)

香川県
小豆島グランドホテル水明(小豆島)

愛媛県
旅館 常磐荘(道後温泉)
ホテル椿館(道後温泉)
夏目旅館(道後温泉)

大分県
新ほり井(別府温泉)
陽光荘(鉄輪温泉)
伯亭 若の屋(日田市)

長崎県
長崎にっしょうかん(長崎市)

鹿児島県
旭屋旅館(白木川内温泉)
妙見ホテル(妙見温泉)

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