日本ボロ宿紀行

ボロ宿にあこがれ、各地のボロ宿を訪ねています。

2011年11月

「ボロ宿」というのはけして悪口ではありません。
歴史的価値のある古い宿から単なる安い宿まで、ひっくるめて愛情を込めて
「ボロ宿」といっています。自分なりに気に入った、魅力ある宿ということなのです。
もともと、できるだけ安く旅行をしたいということから行きついた結果ではありますが、
なるべく昔の形を保って営業している個性的な宿を応援していきたいと思います。
湯治宿や商人宿、駅前旅館など、郷愁を誘う宿をできるだけ訪ねて、
記録に残していくこともいずれ何かの役にたたないかなと‥‥。

下界から隔絶した天空の宿坊を訪ねる [御岳山 駒鳥山荘(前編)]

前にブログでも書いたように、10月に秩父の御嶽山方面に行ったわけですが、紅葉には少し早くてあまり満喫できるほどではありませんでした。何とか近場でもう一度紅葉狩りにトライしてみようと、今度は青梅の御岳山にでかけました。それにしても御岳山とか御嶽山とか全国にはたくさんありますね。

青梅の御岳山は私の住む中野からはかなり便利なところで、最寄駅であるJR青梅線の御嶽駅まで電車で1時間20分くらい。青梅線直通電車に乗った場合は、青梅駅で1回乗り換えるだけで到着します。

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そこから山頂まではバスやケーブルカーを乗り継ぐことになりますが、いずれにしてもかなり近くて便利なのは確か。付近の吉野梅郷や奥多摩などは何度も行ったことがありますが、あまりにも近いせいか御岳山には行ってみたいと思いつつこれまで何となく機会を逃してきました。

青梅御嶽山は標高が929メートルと、それほど高い山ではありませんが、下界から隔絶された山頂に武蔵御嶽神社があり、その周辺には宿坊が並ぶという天空の不思議な集落が有名。よくテレビなどでも紹介されているみたいです。日本のマチュピチュといったらおおげさか。とにかくそのあたりの宿坊にはぜひ一度泊まってみたいと思っていたのです。

今回予約を入れた「駒鳥山荘」は、希望すれば早朝の滝行も体験できるのですが、さすがに11月なのでやめておきました。

当日は秩父の時と同じくまたも雨。青梅で乗り換えて御嶽駅についた頃も、けっこう本格的に降っていました。

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当日の宿泊は決まっていましたが、それまでの具体的な計画は特になし。とりあえず駅前の多摩川を見下ろす崖上に観光案内のようなところがあったので、そこに寄ってみました。

ここでは御岳渓谷の案内図などをもらいました。けっこう寒かったのでセーターを着込んで、コーヒーを頼み、時間はお昼前でしたが、ついでに持ってきたおにぎりを食べてしまいました。おにぎり3個一気食い。

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ここにいたおっちゃんが「今日はあいにくの天気だし、最近は上流のダムが放水しているから川の水が濁っているけど、本当なら泳いでいる魚がここから見えるくらいきれいなんだよ」と話しかけてきました。

この案内所の地下に写真を展示しているスペースがあるので、ぜひ見ていったほうがいいと。せっかくなので階段をおりて写真を見学。確かに御岳渓谷で撮影された四季の写真がたくさん展示してありました。野鳥の写真など、なかなか貴重なものだそうです。どうもこのおっちゃんが自分で撮影した写真も多いみたいです。どういう立場の人なのかは聞きもらしました。

こんなことをしていても雨はあがるようすはありません。天気予報では翌日まで雨だとか。もうしょうがないので、とにかく御嶽山にのぼることにしました。

まず駅前からバスに乗り、御岳登山鉄道の滝本駅をめざします。バスはたぶん10分か15分ほどでした。バス停から駅までほんの少し歩くのですが、ここののぼりがきつかった。

滝本駅到着。天気が悪いせいか観光客らしき人は数人しかいません。ここの立ち食いそばも惹かれるものがありましたが、おにぎりを食べたばかりなのでパス。

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ケーブルカーはひんぱんに出ています。かなりの急勾配を山頂近くの御嶽山駅までのぼります。

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本当はさらにこの上の展望台までリフトが動いているはずなのですが、天候のせいか運行しておらず、歩いて山頂をめざすことにしました。カッパを被って歩き始めました。

山頂にある武蔵御嶽神社までは徒歩20分か30分程度。歩く途中に、宿坊が集まっている御師集落も通るようです。

雨の中を歩き始めました。標高1000メートル近い山といっても、かなり道路が整備されていて、難所は特にありません。勾配がきついところもありますが、そんなに大変ではありませんでした。途中の眺望も晴れていたらきれいなのでしょうが、雲なのか霧なのか、まったく遠くは見えません。

まだ昼過ぎ。宿には4時くらいに到着するといっておいたので、それまでどうすればいいのか。そんなことを考えながら歩いていると、忽然と立て込んだ集落が現れ、山の頂上とは思えないような町ができていました。

最初に書いたように、この山上の集落は、武蔵御嶽神社に関連する神職に連なる家が「御師」として参拝客を泊めていたという宿坊が多いことで有名。確か伊勢神宮にも似たような制度があったような気がしますし、昔は大きな神社のそばには参拝客を泊めたり、世話をする家があるのが普通だったのではないでしょうか。

どうもそれらしい古い建物がいくつも目の前に現れてきました。

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この家は今は宿坊としては営業していないそうです。残念。やっていたら絶対泊まりたかった。

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「御岳山荘」というのもありました。もみじが落ちてなかなか風情のあるたたずまいです。

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神社に続く道沿いに、この日泊まる「駒鳥山荘」もありました。外観はそれほど古さを感じません。赤い門があり、宿坊らしい雰囲気がそれなりにありました。

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集落内の道路はかなり狭くてクルマ1台通るのがやっとという感じ。急勾配も随所にありますが、それなりに大きな集落がこんな山の中にあるのが不思議な感じがします。

とにかくかなり寒いです。何か温かいものが飲みたいと思って歩いていると、神社の参道近くで繁華街発見。数軒のおみやげ屋兼飲食店が並んでいました。

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私は迷わず一番手前の「宝亭本店」に入りました。テーブル席ばかりですが、入り口付近にこたつが仕切られており、そこでばあちゃんが店番をしながらあたっていました。

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寒いので甘酒とコーヒーを注文。

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壁に「ちい散歩」のロケが来た時の写真が貼ってあったので聞いてみると、数年前に店番をしていると、いきなり地井武男がひとりで店に入ってきたそうです。それで「こたつにあたらせて」といってこたつに入り、いろんな話をしたあげく、「また帰りに寄るから」といって神社に上がっていったそうな。

その直後に撮影のクルーがやってきて、実際に撮影したいと頼まれたそうですが、ばあちゃんは地井武男も「ちい散歩」も知らなかったので、わけがわからなかったといってました。

とにかく何にしろテレビに出るとなれば、この御岳のことを良くいわなければいけないので緊張したそうです。ヘタなことをいっては集落の人々に申し訳ないという気持だったとか。

実際に放映された後は、集落の人々にも「よく話していた」と称賛されたそうです。地井武男は、すごく温かい、明るい人で、いろんな話を聞き出すのがうまいといっていました。神社でも神主さんにいろいろ質問攻めをしたそうで、神主さんは歴史などの知識が深いので質問に答えるのも大変だったといっていたそうです。

このばあちゃんは80歳を超えても店を切り盛りしている立派な女主人でした。しかし子供たちは跡をつぐこともなさそうなので、後継者のことを心配していました。偶然ですが中野のうちの近所に息子さんが住んでいたそうで、やたらと詳しいのでびっくりしました。

とにかくこの山で店をやる人がいなくなると観光客も困るので大変です。どうもこの家は神主さんとも同族であるようで、せまい土地に昔から住んでいるわけですから、いろんな関係があるのでしょう。

私が「この山頂に住んでいるのは何人くらいですか」と聞くと「だいたい300人。年寄りと子供が多いのが特徴だね」ということでした。なぜ子供が多いのかちょっと不思議ですが、理由は聞きもらしました。しかし翌日御嶽山駅付近のおみやげ屋のおばちゃんに聞いた話では「150人くらい」ということで、どっちを信じればいいのか‥。

この店で話し込んで、少し温まったので、いよいよ神社にのぼることにしました。出掛けにばあちゃんは竹でできた「味噌ベラ」をくれました。

武蔵御嶽神社は御岳山の山頂にあります。普通なら長い階段をのぼる参詣はパスするのですが、ここまで来てしまうのとほかにすることもないので、行ってみることにしました。しかし階段は一部工事中になっていて、迂回する坂道をのぼることに。この坂がまたけっこうきつかった。

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ようやく坂や階段をのぼって立派な奥の院に到着。山頂とはいえやはり雲が多く眺望はいまいち。しかし、山ひだにそって雲だか霧だかがわだかまっている感じは、なかなか壮厳な感じがしました。

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お参りして坂道を下る途中、今日泊まる御師の集落も見えました。雨に煙っていますがすばらしい景色。まさにマチュピチュ。

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天候には恵まれませんでしたが、紅葉もきれいだし、きて良かったなあと思いました。

まだチェックインには早いので、もう一度商店街の食堂に入りました。同じ店に入るのも芸がないので、今度は神社側に近い寿屋に。ここには数人の客がいてやや混んでいましたが、私が入るとストーブの近くの場所を空けてくれて「よかったら、座敷へどうぞ」といってくれました。

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私はカッパが濡れているので座敷は遠慮し、ストーブそばのテーブル席を占拠。ここのおばちゃんに「お酒ある?」と聞くと「あります。ビールもあるよ」というので「じゃお酒を熱燗で」と頼みました。もう私としては、それしかオーダーしようがないというくらい寒い日でした。

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この店も天気が良ければ窓からの眺望がすばらしいと思います。少し空が明るくなってきた感じがしたので「雨が上がるのかな」というと、おばちゃんは「予報より早く雲が通るようなので、明日は完全に晴れになるようです」といいます。

お酒には地物のわさび漬けが付いていて、これが辛くておいしかったので、おばちゃんに頼んで少し包んでもらいました。場合によっては、今夜の宿でのつまみにもできるという魂胆です。この店もでがけに竹製の「孫の手」をくれました。このへんの店はこういうしきたりなのでしょうか。お酒1本の客にものをくれていたら、あまりもうからないのでは、と心配になります。

そんなわけで、いろいろ時間をつぶしたのですが、まだ2時30分くらい。しかし本格的に山歩きをするには天気も悪く、寒くもあったので、早めに宿に行くことに決定。通りがかりに場所を確認しておいた「駒鳥山荘」に向いました。参道の商店街からはすぐそばで、歩いて1分くらい。

おみやげ屋のおばちゃんに「駒鳥山荘に泊まる」といって評判を聞いたのですが、やはり同じ山で暮らす同業者であるせいか、格別な情報は得られませんでした。

「駒鳥山荘」に到着すると、まだ早いですが女将さんが快く迎え入れてくれました。

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この宿は部屋数も多く、新しく立てました近代的な新館もあるようなのですが、この日は「ブッポーソーの間」という広い2間続きの古い部屋を頼んでありました。日本画の川合玉堂先生、棟方志功先生、野鳥家の中西悟堂先生など著名人が泊まった部屋だそうです。この宿は楽天トラベルで予約したのですが、部屋を選ぶことができたのでせっかくなのでここを指定しました。

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通されてみると、8畳間2つですが、外廊下に囲まれて、さらに広いベランダがついているため本当に広く感じました。トイレも専用のやつがついています。今回、われわれは2人旅だったので、その割にはちょっとぜいたくだったかもしれません。

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窓から見える景色も山と雲だけ。幻想的です。

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ここまででだいぶ長くなったので続きは次回にします。

[御岳山  駒鳥山荘](2011年11月宿泊)
■所在地  東京都青梅市御岳山155
■楽天トラベルへのリンク→駒鳥山荘
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秩父往還に面した小さな集落の素朴な民宿 [秩父市 みたけ]

旧大滝村時代にも一度訪問したことがある奥秩父。前に来た時は大滝村から雁坂トンネルを通って甲州方面に出ました。秩父往還から雁坂みちを経て、塩山に出るすごく印象的なルートだった記憶があります。

今回は西武秩父駅からバスで紅葉まつりのイベント会場である三峯神社をめざしました。秩父鉄道沿線から見える山々は、まだほとんど紅葉していなかったので、たぶん時期的には少し早かったのだと思います。

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バスは1時間くらいかけて三峯神社までの山道を登っていきます。乗ってみてわかったのですが、このバスは特急バスで、すべての停留所には止まりません。ただ秩父湖から三峯神社までの区間は自由乗降できることになっています。

細かいことがよくわからないまま、とにかく三峯神社へ。もう夕方になっていたので、紅葉まつりの露店なども撤収を始めていました。オープニングイベントのゲストとして「おぼんこぼん」が来ていたはずなのですが、当然もういません。残念。

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バスの運転手さんに聞いたところ、帰りのバスも特急で、「とにかくここから出るバスはみんな特急なので、特定のバス停にしか止まらない」ということでした。

そうなると、このあと泊まる予定の民宿「みたけ」がある落合停留所にも泊まりません。こんな奥秩父の山の中で、歩いて宿を探すことができるのかどうか。ただ、落合集落の近くの大滝温泉には止まるので、そこから歩くのが一番近いようです。

そうなると、どれくらい歩くことになるのかよくわからないので、早めに山を降りることにしました。

三峯神社参拝も中止。一応鳥居の前まで行って、アリバイのために写真を撮ってきました。

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紅葉にはまだ早いのは明らかですが、一部は色づいていました。しかしこのへんの紅葉は自然の植生というより、紅葉まつりのためにあえて植えたような感じもします。たぶん最盛期はすごくきれいになると思います。夕方ですがまだ観光客もけっこういて、おみやげさんもやっていました。

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暗くなってから宿まで歩くのは大変なので、最終よりひとつ早いバスに乗りました。

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そして大滝温泉で下車。ここは道の駅に併設された入浴施設がありますが、前にバイクで来たので、今回は入浴はパス。宿までどれくらい歩くことになるのかわからないので、それどころではありません。

そうはいっても秩父湖から三峰口駅の間は、旧大滝村の中でも中心市街地に当たるので、それなりに人家もあります。いくつかの小さな集落があって、民宿なども多いのです。しかし人通りはまったくありません。

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大滝温泉から歩き始めると、意外なことに10分くらいで落合バス停を発見。思ったより近かったようです。そしてすぐに民宿の「みたけ」を発見しました。これで一安心。まだそんなに暗くなっていませんでした。

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しかも宿について見ると、歓迎ビラまで出ていました(笑)

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このへんは秩父御岳山の登山口に当たるので、登山やハイキングの客が多いのだと思います。

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声をかけるとご主人らしきおっちゃんが出てきて、すぐに2階の部屋に案内してくれました。部屋もこじんまりとしていますが清潔な感じの部屋。最近冷えこんだせいか、こたつが出ていました。

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内装はみたところそんなに古く感じないのですが、基本構造自体はけっこう古い家だと思います。しかしいろいろ手が入っているようで全体的にきれいな感じ。見た目よりかなり大きな建物で、部屋数もたくさんありました。

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ふすまを勝手にあけて隣の部屋も撮影。

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部屋でのおっちゃんとの会話。

おっちゃん「お風呂は温泉になっていて、もういつでも入れますから」
私「温泉ですか。それはいいですね」
おっちゃん 「夕食は下の食堂に用意します。準備できたら呼びにきますから。朝食は何時くらいがいいですか?」
私「別に何時でもいいですけど、じゃあ8時くらいでお願いします」
おっちゃん「いや~できたら、もう少し早く食べてもらうと助かるんだけど」
私「いいですよ。7時半にしますか」
おっちゃん「すみませんがそうしてもらえますか。実は明日葬式があって、8時には出なくちゃならないんで。8時過ぎると食事の用意できる人間がいなくなっちゃうんですよ」
私「では7時半で」

ということでしたが、たぶん葬式などというものは急に入るわけですから、予約時には予定もしていなかったことでしょう。そういう事情を先にいってくれれば、朝食なんて何時でもよかったのに。

ご主人は恐縮しつつ去っていきました。

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早速お風呂に行ってみると、けっこう近代的な大きめ湯船でした。浴室は2箇所あり、この日はほかに客がいないのでひとつだけ使っているようでした。はっきりとはわかりませんが、鉱泉を汲んで使っているものと思われます。

お風呂から出ても、食事前に少し時間があったので外に出てみました。缶コーヒーでも買おうと思っていたのですが、商店らしき廃墟はあるのですが自販機ひとつみつかりません。

最初山のほうをめざしたのですが、神社や公民館みたいなのがあるだけで、何もなさそうだったので、Uターンして山を降りる方向へ歩いてみました。結局バスを降りた大滝温泉の道の駅まで歩いてようやく自販機を発見。ここでお茶とか缶コーヒーを買って宿にもどりました。

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もう付近はまっくらで、この道の駅付近の明かりだけが目立ちます。

部屋にもどってしばらくすると、おっゃちんが夕食ができたと呼びにきてくれました。もうめしを食う以外やることがないので、待ちに待った感じ。

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1階の広間におりると、やはりこたつが出してあって夕食の準備がしてありました。この日は使っていませんでしたが囲炉裏らしき部分もあるなかなか快適な居間で、大きな神棚がありました。また先代か先々代がもらったと思われる勲六等瑞宝章の授与状も飾ってありました。なかなかえらい人がいたようです。

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食事はボリューム感いっぱい。登山客向けなのか炭水化物、たんぱく質がありあまるような内容でした。特にうどんは小麦の素朴な味がしっかりしていておいしかった。スーパーで売っているのとはだいぶ違う感じがしました。川魚も焼きたてでした。この宿は2食付きで5000円くらいだったと思いますが、すごく良心的です。こんな値段でもうけは出るのでしょうか。心配になるくらいです。

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この日、部屋では秩父で買った武甲正宗は飲まずに、持ち込んだジャックダニエルを飲んで、寝てしまいました。

翌朝は時間より少し早めにおっちゃんが朝食の準備ができたと呼びにきました。

朝食も同じ部屋。山の中なのに鯵のひらきがすごくおいしいやつでした。

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おっちゃんは8時に葬式に向かわなくてはいけないので、とっとと朝食を食べ、精算もしました。おっちゃんは「食事さえすましてもらえれば、留守番にばあさんもいるから、精算は出る時でいい」といっていたのですが、ついでなので朝食後にすませました。

入り口付近でうろうろしていると、どこかの親戚のおっちゃんらしき人が奥から出てきて「これはつまらんもんだけど」といってタオルをくれました。

部屋に戻ってしばらく休憩していると、礼服でバチッとキメたおっちゃんがやってきて、入り口にひざを付き、「すまんことですが、それではこれからでかけますのでよろしく」といって去って行きました。

こういう小さな集落では葬式ともあれば一大重要行事でありましょう。偶然のこととはいえ、間の悪い時に泊まってしまい、留守番状態になってしまいました。

9時頃になって、そろそろ出ようかなと思って荷物をまとめ、下に行きました。精算はすんでいるのですが、「ばあさん」がいるはずなので声をかけましたが、誰も出てきません。

玄関そばの厨房をのぞくとついに「ばあさん」を発見。でかい声で「お世話になりました」というと、ようやく気づいて出てきました。どうやら少し耳が遠いようでした。そういえばこの家はやたらとテレビの音量が大きかったのですが、そのせいかもしれません。

「この家はずいぶん立派な家ですね。だいぶ長く宿をやってるんですか」と聞いてみましたが、どうも普通の声ではあまりよく聞こえないようでした。

ばあちゃんは、「立派だなんてことはないよ。古い家だから」というので、「でも神棚なんてすごく大きくて立派ですね」というと、「ああ、神様のことをいってくれて、本当にありがとうね」といって大喜びしながら握手を求めてきました。

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さらに「うちはそこらの畑で百姓もやっているから、ふだんなら何かあるんだけど、今日は何もあげるものがなくて」と、おろおろ回りを探し始める雰囲気。食事にも自家で作った野菜を使っているので何とかなるのでしょう。

私は「いやさっきタオルをもらいましたから」といったのですが、「ふだんなら何かあるんだけど、今日は誰もいなくてね。すまないね。それにしてもいろんなところに遊びに行くのはいいことだね。本当にうらやましいね。私も昔はじいさんと日本全国回ったもんだけどね。だいたい、私も九州の生まれだから」などと。

こんな会話を耳に口を近づけながらでかい声でしました。ばあさんは、どうしても野菜を持たせたかったらしく、ずっときょろきょろ探していました。しかしこういうところで大きな野菜をもらうと、お持ち帰りが大変なので適当にお暇してきました。

東京に近いとはいえ、山の中に住む人は本当に純朴で気分がいいです。

さてこの宿を出て、すぐ隣に普寛神社というのがあったので寄ってみました。

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この普寛という御方は木曽の御嶽山の大滝口を開いたえらい上人で、秩父御岳山はそれにちなんで名付けられたもののようです。いろいろ由来が書いてあり、像もありました。この落合集落の出身であったようです。


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普寛上人、なんか微妙な表情をしておられます。このへんに木曽御嶽山の講もあったようで、現在はどうなっているのかわかりませんが、やはり山岳信仰が根強く残っているのではないでしょうか。

このあと再び大滝温泉の道の駅まで歩き、少し地元産品の売店などを冷やかして、山くるみを買ってみました。

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さらにバスで今度は三峰口駅へ。かなり渋い駅でした。

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この日も天気はいまいちなのでまっすぐ東京に帰ることにして、秩父鉄道で御花畑駅へ。この駅には立ち食いそば屋が2軒もあってそそられたのですが、おなかがすいていなくて食べられませんでした。

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御花畑駅からは徒歩で西武秩父駅へ。特急でまっすぐ池袋まで帰りました。

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結局紅葉狩りが目的の今回の秩父の旅も、時期が早く紅葉はまだそれほど始まっていなくて残念でした。しかし素朴な民宿に泊まることができたのが何よりでした。

このしばらく後、紅葉狩りのリベンジを目的に今度は奥多摩の御岳山にいってみたのですが、その話は次回に。

[秩父市  みたけ](2011年10月宿泊)
■所在地 埼玉県秩父市大滝940
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明治時代の商人宿を改造した渋い無料休憩所 [秩父市 ほっとすぽっと秩父館]

古い宿をいろいろ探索していて、秩父に古い商人宿を改装した観光拠点「ほっとすぽっと秩父館」があることを知りました。今回、秩父の紅葉を見学に行くついでに、絶対に寄ってみたいと思っていたところです。

この日は寄居を朝早く出て、とりあえず長瀞に寄りました。今年6月にも来たばかりなので、特別の感慨はありませんが、やはり川沿いまで行ってみました。

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この日の天気は曇り。前日は雨だったので、降っていないだけましという程度で、あまり良い天気ではありませんでした。

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前に来た時も、この近くのおみやげ屋だかお菓子屋だかの主人が、川原で観光案内をしていたのですが、今回もいました。かなりしゃべり慣れてしまった、くだけた口調なのですが、話がなかなかおもしろいです。

岩畳の上での話を聞いていると、3月の大震災の時、周辺の町は震度5以上の揺れがあったのに、この長瀞は震度3程度だったそうです。それはこのあたりの土壌が岩畳のような岩盤になっているからだそうで、地震には強いかわり長らく農業には向かない貧しい土地柄だったそうな。

この後はいよいよ念願の秩父市街に向かいます。再び秩父鉄道に乗って秩父駅へ。

秩父駅は大きな駅でした。ATMでお金をおろしたいと思っていて、コンビニくらいあるかなあと心配していたのですが、行ってみると銀行なんかいくらでもありました。

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この日の予定は、最終的に三峰口駅からバスで三峯神社まで行って紅葉を見学。その後再び下界に降りてきて大滝の民宿に泊まるというもの。しかしよく調べてみると、秩父駅の近くの西武秩父駅からもバスが出ているようなので、そこまで歩くことにしました。どうせ秩父市内を見学するわけですから、その散歩ついでに西武秩父駅まで歩こうという計画です。この作戦だと、秩父から三峰口までの電車賃も節約できます。

そういうわけで、まずは秩父駅に近い武甲酒造へ。このあたりの銘酒として知られる「武甲正宗」のを作っている酒造メーカーで、古い店構えを見学したいと思ったからです。

駅から歩いてすぐ。実際に行ってみると酒蔵見学には予約が必要なようでしたが、「奥の井戸なんかは自由に見学していいですよ」というので、奥まで入らせてもらいました。

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古い酒蔵特有の雰囲気が漂っています。ここでお酒の小瓶を買いました。場合によっては今日の夜、宿で飲んでもいいなというつもり。

次に目的地のひとつであった「ほっとすぽっと秩父館」へ。ここも思ったより近くてすぐに見つかりました。

外観はまさに商人宿そのもの。だいぶ手を入れたらしくきれいになっていますが、雰囲気は江戸時代の秩父往還の気分を伝えています。

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ここは地元の商店会が運営している多目的スペースで、売店や休憩所、喫茶・軽食コーナーなどがそろった観光拠点になっています。

とりあえず中に入って上がろうとすると、スタッフの奥さんが話かけてきて、いろいろ説明をしてくれました。「2階の広間をぜひ見ていってください」というので、早速上がらせてもらいました。

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現在は集会などにも使用できるよう、襖を取り払って広間になっています。しかし、窓の庇などを見ると、まさに商人宿。この家はもともと明治12年に立てられた宿ですが、そんな時代にここから秩父往還を眺めて見たかった。ここも宿泊させてくれるなら絶対に泊まりたいと思いました。

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急な階段のところに、当時からのものと思われる大きな神棚発見。これはかなり珍しいものではないでしょうか。

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1階に降りると無料休憩スペースになっています。

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このあたり、「あのはな」の関連ポスターだらけ。私はうといのですが、アニメの舞台として有名だったのでしょうか。

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1階の囲炉裏のそばに井戸がありました。これも商人宿時代からの内井戸で、最近はパワースポットとして有名だそうです。

こういう建物をどんなかたちにせよ、残していこうとする努力は敬服に値します。そうしないとどんどんなくなってしまうからです。本当はガラス戸なども使わないでほしいのですが、とにかく建物の古い構造を生かして現代の用途に活用しているということに価値があると思います。

名残を惜しみつつ外に出ると、やはりこの街道沿いにはなかなか渋い雰囲気が残っています。

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古い蕎麦屋もあり、
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うどん屋もありました。
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「あのはな」グッズを売る店も発見。
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さらにすぐ先に「秩父ふるさと館」を発見。こちらは大正から昭和初期の秩父銘仙の問屋を改造した建物で、観光資料コーナーや飲食店が入っていました。ここでお昼近かったので、秩父蕎麦でも食べようと思ったのですが、ちょっと高級そうなのでやめておいてもう少し歩くことにしました。

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2階の窓からは雲がかかった山が見えます。
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「ほっとすぽっと秩父館」の奥さんに聞いたところ、西武秩父駅に行くには、向こうに見える「矢尾」というデパートの角を左に曲がれ、ということでした。

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歩いていると寺で何かイベントをやっていました。秩父も札所巡りで有名なので、この寺もそのひとつとして有名みたいです。

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いったい何の儀式だったのでしょうか。子供も大勢参加していました。

さらに歩いて坂を上がると西武秩父駅に到着。「秩父仲見世通り」でお昼を食べることにしました。この駅は池袋は直行の特急が往復していて、前にも来たことがあります。

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広場では地元の太鼓演奏のイベントが行なわれていました。由来はわかりませんが、しばし聞き入りました。

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ここで入ったのが秩父そばの武蔵屋。普通の観光地にある蕎麦屋という感じでしたが、やはり季節柄か、蕎麦はおいしかったです。

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ムダ寄り!!(©ドンさん)
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この後、バスで三峯神社方面に向かいましたが、その話は次回に。

[秩父市  ほっとすぽっと秩父館](2011年10月見学)
■所在地  埼玉県秩父市宮側町18-2
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明治8年創業の貴重な建物。でも気楽に泊まれる感じの宿 [寄居 山崎屋旅館(再訪)]

今年の6月頃に寄居に行った時に、町を歩いていて発見した「山崎屋旅館」。
(その時の記事はこちら。→
東京からも近い忘れられかけた観光地 [寄居 山崎屋旅館])

その「山崎屋旅館」にいよいよ泊まることができました。

東京からはかなり近いので、泊まる機会はないと思っていたのですが、先日秩父三峯神社の「紅葉まつり」を見物に行くことにしたので、そのついでに泊まってみることにしました。秩父にもいろいろいい宿や温泉もあるのですが、今回はまずは寄居に一泊し、翌日は秩父の民宿に泊まることにしました。

出発当日は早めに行って長瀞なんかを改めて見物して、それから寄居に戻って泊まろうと思っていたのですが、この日の仕事が終わらずいつしか時間はお昼を過ぎ、夕方に。もうこの日のうちに到着するのがやっとという時間になってしまいました。

最初は池袋から東武東上線経由で行くつもりだったのですが、少しは早いかと思って、熊谷まで新幹線で行き、秩父鉄道で寄居に行くルートをとってみました。

熊谷駅に着いた時点で、もう日が落ちかけてきました。秩父鉄道の改札口はなかなか渋い感じ。

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寄居駅に到着した時はすっかり暗くなっていました。

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家を出る前に宿に電話して「予定より到着が遅くなる」といったのですが、電話に出たおっちゃんは「ああ、大丈夫、大丈夫」とまったく意に介していないようすです。この日は素泊まりだったので食事の問題がなかったせいもありますが、なんとなく、到着時間なんか最初から気にしていないような、鷹揚というかテキトーな感じでした。

すでに前回の視察で場所はわかっているので、寄居駅からまっすぐ宿へ。いよいよあこがれの宿に一泊することになります。

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玄関のガラス戸を開けて中に入ると、生活感いっぱいのあがり。そういえば昔、「リアリズムの宿」というマンガがありましたが‥。すぐにおっちゃんが出てきて部屋に案内してくれました。

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建物がどういう構造になっているのかわかりませんが、思ったより奥行きが長く、その途中にトイレやお風呂がありました。1階で兼業している食堂には、数人の客が入っていました。

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通された部屋は2階の1番奥。この宿は明治8年創業ということですが、おそらくその当時からの状態に近い感じのなかなか雰囲気のある部屋。

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テキトー鷹揚なおっちゃんらしく、布団は何となく曲がって敷いてある感じ(笑)。

↓このシーツはどういう運命の変転で、この宿で使われるようになったのでしょうか。

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おっちゃんが「今風呂は使っているけど、すぐ空くから空いたら呼びにきますよ」というので、「できたら先に食事に出て、それからお風呂に入りたい」というと、「ああ、いいですよ。いつでも」というテキトーな返事。

こういう宿は決まった時間にお風呂に入れといわれることが多いので、私は「いつでも入れるんですか。そりゃあ便利ですね」と聞いてみると、おっちゃんは「そりゃあ、いつでも入れるよ。朝でも夜でも、夜中の2時でも3時でも4時でも。別に一緒に入ろうってわけじゃないんだから、好きな時間に入るといいよ」と笑っていました。

そういうわけで夜の寄居の町に出て、どこか飲食店を探すことにしました。この宿自体が食堂をやっているので、そこに入る手もありました。

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しかし、それも芸がないし、駅前には「華屋与兵衛」があることも知っていましたが、仮にも旅先でそういう店に入ってもしょうがないので、散歩がてら、夜の寄居の町を歩いてみることにしました。
DSCN0064

実は前にみかけたこの食堂を狙いたい気持もあったのです。↓

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しかし営業しているのかどうかはっきりしない感じ。この食堂を写真に撮っていると、通りかかりのばあちゃんが「なんだってそんな写真を撮ってるんだね」と聞いてきました。

ボロい家が好きなんだ、などといっても理解してもらえないと思ったので、「いや別に‥。」とごまかしつつ、立ち去ろうとすると「どっから来たね」と聞いてきます。「東京から」というと、「私も昔は東京に住んでたんだ。新橋だけどね。古い話だから懐かしいね。今は年を取って足腰が弱るので、毎日このへんを散歩してるんだ」などと、いろいろ話好きな感じです。

かなりの年のばあちゃんにしては、妙に派手に化粧をしていて、ウィッグらしきものを使用している感じは、ちょっと不気味というか、おもしろそうなばあちゃんだったのですが、つきあっていると長くなりそうだったので、適当に逃げて食堂探しを続けました。

前に来た時に駅近くの路地で飲食店を何軒か見かけたのですが、結局そのとき見かけたような店以外は見つけられず、路地奥にあるラーメン屋に入ることにしました。

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確か「横浜屋」とかいう店名。ラーメンののぼりが出ているので入ってみると、何となく雰囲気がラーメン屋というより、昔のスナックみたいな感じ。

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若い女将さんがいて「食事できますか」と聞いたら「できます、できます」というので、ここで生ビールを飲んで、ラーメンを食べました。メニューにある「大人のラーメン」は、ラー油がきいた辛口ラーメン。そのほかいろんな変わったラーメンがあって、けっこうメニューに凝るタイプの店だということがわかりました。

DSCN0082

女将さんというか、ママというか、そんな感じの女性に、いちいち「このラーメンはどんなやつですか」と聞くと、ていねいに教えてくれます。「本当は違う名前にしたかったんですけど、それで定着してしまったものですから」などと。

私はビールと野菜炒めの後に、半ラーメンを頼んでみました。オーソドックスな醤油ラーメンでしたが、化学調味料の味がしない自然派ラーメン。私は化学調味料がきいていないとおいしいと思えないほうなのですが、ここはけっこう気合を入れてダシをとっているようで、それなりにおいしく感じました。

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DSCN0081

その後常連らしきおっちゃんがきて飲み始めたので、適当に店を後にしました。この店はたぶんラーメン屋でもあるけれど、主に飲み屋として地域に親しまれている店だと思います。

食事後は再び寄居駅前を通って山崎屋旅館へ。駅前も薄暗く、あまり人通りはありません。
DSCN0083

宿に戻って早速お風呂に行きました。思ったより広い近代的浴槽でしたが、浴室自体はかなり古いものだと思います。天井の感じからして、もしかしたら明治時代のものかもしれません。なかなか快適でした。

DSCN0102

全体的にかなり古い旅籠の雰囲気は残しているものの、それなりに便利なように工夫されていることがわかります。地デジがスタートしたせいなのか、薄型テレビも完備。シャワートイレもありました。

何となく玄関といい、廊下といい、片づかない感じのテキトー素朴な感じの宿なのですが、要所要所に近代設備が導入されており、古い宿にありがちな不便というのはあまり感じませんでした。

ほかに宿泊客もいないようだったので、隣のふすまも開けてみました。隣の部屋と比べると、私が通されたのは角部屋のなかなかいい部屋のようです。

DSCN0100

掛け軸や置物なんかもあるし。

DSCN0049

この日は部屋で少しテレビを見て、翌日の山歩きに備えて早寝しました。

翌朝起きてみると天気は曇りでした。雨の予報もあったので、降ってないだけましです。

改めて泊まっている2階を探検してみました。かなり古い建物ですが、明治というほどではないような気もします。


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DSCN0114

階段なんかも相当古そうでいい雰囲気です。

DSCN0123

期待していた以上に古い宿で私としてはすっかり気に入りました。こういう宿は本当に貴重なので、長く営業を続けてほしいと思います。

朝食も頼んでいないので、早めにチェックアウトしようとすると、おっちゃんは見当たらず、食堂の厨房にいた女将さんが対応してくれました。

素泊まりだったこともあり、ほとんど野放し状態の対応でしたが、なかなか快適な宿でした。必要以上に客をかまわないというのもある意味気楽に感じます。

改めて外から見ると本当に貴重な建物だと思います。

DSCN0128
DSCN0130

できたら、奥の部屋ではなく通りに面した側の部屋に泊まってみたい気もしました。

DSCN0131

通りに面した本館は、奥の部屋とは別棟になっているらしく、階段も別にありました。この通りも古くは栄えた街道筋の雰囲気がありますし、往年の繁栄時代に訪ねてみたいという妄想も。

隣にはよくわからない「美髪忍館」という古い電髪屋さん?もありました。

DSCN0135

このあと秩父鉄道を乗り継ぎ、長瀞、秩父、三峯神社などを巡ったのですが、その話は次回以降にします。

DSCN0143

[寄居  山崎屋旅館](2011年10月宿泊)
■所在地  埼玉県大里郡寄居町寄居938
■楽天トラベルへのリンク→山崎屋旅館

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