前編からだいぶ間があいてしまいましたが、「大和旅館」の後編です。
宿に到着してしばらく休憩してから食事にでかけました。私としては何でもいい気分だったのですが、まあ、軽くラーメンでも食べようと思いつつ湖方面に降りていきました。
もう周囲はすっかり暗くなっていましたが、正面の湖岸が提灯で派手にライトアップされていました。けっこう観光客を意識しているようです。
大和旅館には周辺の飲食店をていねいにガイドしている手作りのペーパーがあったので、それを参考に町を歩いてみました。しかしあまり営業している店がありません。
宿に近い焼肉店、ちょっと高級そうな鮮魚料理屋などがありましたが、いろいろ悩んだあげく、一番質素な食堂にはいることにしました。
ガラスの引き戸を開けて中に入ってみると、奥のベンチシートで寝ていたおばちゃんが「いらっしゃい」といって起きてきました。手前のテーブル席につこうとすると、「奥のほうが少しはあったかいから」といって奥に呼んでくれました。
あまり流行っていないような、そんな寂れたムードもありましたが、私はそういう店が好きなので、けっこう満足。大和旅館のガイドでは、この店のおすすめは「カレーラーメン」ということになっていましたが、私はせっかく北海道に来たので味噌ラーメンを注文してみました。
ビールを頼むと大量の柿の種を付けてくれました。味噌ラーメンはこんな感じ。やっぱり素直にカレーラーメンにしたほうが良かったかもしれません。
この店のおばちゃんがけっこう話好きでテレビを見ながら世間話をしかけてきました。
おばちゃん「今日は泊まり?」
私「はい、そこの大和旅館に」
おばちゃん「やっぱり宿の食事より、外のほうがいいよね。このあいだうちに来た運転手さんも、もう旅館の飯は見るのもいやだっていってたからね。どこも同じような内容だから、いつも食べてると飽きちゃうんだよね」
私「そうですね。やっぱり、外で自分で選んで食べるほうがいいですね」
どうやら、何か業務で旅館に泊まっていると思われてしまったようです。ただのひまな観光客なんですけど。
この夜テレビでは「むらさきいも」の収穫のようすを放映していました。おばちゃんは「やっぱりいもは白くなきゃおいしそうに見えないよね~」ということを力説しておりました。
食事後に、ぶらぶら散策しながら宿に向う途中、足湯発見。
すでに真っ暗い中を宿に戻りました。
早速お風呂へ。この宿は料金が安いにも関わらず立派なお風呂でした。源泉をかけ流しているようです。客は地元の人らしきおっちゃんが2人。
風呂から出ると、もうやることもないので布団を敷いていつでも寝る体勢万全。
宿に到着した時、9時くらいに湖に花火が上がると聞いていたので、それを待ちました。やがて音が聞こえてきたので、窓から見学。
花火は温泉街のどこからでもよく見えるように、徐々に移動しながら上がっていきます。これも観光客向けのサービスだと思いますが、季節はずれでもあり、むしろ寂しさを感じるような、ちょっともの悲しいような気分で眺めていました。一人ではなく数人で騒ぎながら見ていたら、また気分も違ったかもしれません。
翌朝も早く起きてお風呂へ。ロビーのところに休憩スペースがあり、なるべくくつろげるように、工夫している感じが伝わってきます。
ご主人らしき兄ちゃん、女将さんらしきかわいらしい人が「おはようございます」と挨拶してきました。2人ともまだ本当に若いご夫婦でした。
食事はこんな感じ。なかなかいい味つけでした。シチューとか、フライドエッグ、ソーセージとかの洋風おかずに加えて、納豆とイカ刺し。ごはんと味噌汁はセルフで、食後のコーヒーも飲み放題。
食堂の壁に、ご主人と女将さんの結婚の時の新聞が貼ってありました。
「流れ星に誓った愛」(笑)
宿を出る時に、フロントで声をかけると女将さんが出てきたので、「有珠山の噴火の時は、ここもだいぶ被害があったのですか」と聞いてみました。
女将さんはすごく愛想がいい人でいろいろ教えてくれました。「私はまだお嫁に来る前で直接は知らないのですが、やはり大変だったようです。宿は大丈夫だったのですが、温泉街への道路が途絶えたりして、お客さんを受け入れられない状況が続いたそうです」ということでした。
いろいろ話を聞いていくと、そもそもこの宿はどこかの企業が運営していたのを、今のご主人と女将さんが買い取って、新たに経営を始めた宿だそうです。ちょっと時系列の関係はよくわからなかったのですが、ご主人は被災しながらも、地元新聞社で記事を書いていたこともあるとか。
若い夫婦でこういう宿をやるというのは、なかなか思い切った決断だったと思いますが、常連のお客さんが多く、けっこう繁盛しているようです。力を合わせて災害からの復興に苦労してきたということは、夫婦の絆を強めるんではないかな、などと思ったりもして。
宿を出るとすぐ前の通りの山側に、砂防壁みたいなのが作ってありました。噴火に備えたものでしょう。
バスターミナルからバスに乗れば洞爺駅まで行けます。その途中、せっかくいい天気になったので、改めて湖岸に出てみました。高校生の時に野宿をした浜はどのへんだったのか。ちょっと思い出せませんでした。
バスターミナルに到着。すでに数人の客がバスを待っていました。
ここから山のほうを見ると、何やらどこかで見たようなゴージャス宿も見えました。
バスに乗って洞爺湖を後にします。駅までの途中、あちこちで噴煙がでており、いかにも活火山エリアという感じがしました。
洞爺駅に到着してみると、子連れの夫婦が前日に荷物をベンチに置き忘れたといって大騒ぎになっていました。買い物袋をひとつ忘れたらしいのですが、駅員が各地に問い合わせても行方がわからないようで、とにかく警察に届けようということになっていました。
そしたら駅売店のおばちゃんが「今朝見かけたけど、タクシーの運転手さんがゴミだと思って捨てていた」と証言。その後駅員たちは駅の外のゴミ箱あさりへ。私も人ごとながら固唾をのんで見守っていましたが、どうやらすでに回収された後だったらしく、見つかりませんでした。残念。この後、この夫婦とは新青森まで一緒でした。
さて、この日はどうやって帰るか決めていなかったのですが、できれば津軽海峡線に乗ってみたいと思っていました。その途中、各駅停車でのんびり移動しながら、駅弁のカニ飯とかイカ飯でも食おうかと。
しかし洞爺駅でいろいろ相談したのですが、やはり今日中に帰ろうと思うと、特急と新幹線を乗り継いでまっすぐ帰るしかないようです。いずれにしてもかなりの長距離移動。
洞爺駅の待合室にはお持ち帰り自由の文庫コーナーがあったので、長旅に備えて2~3冊もらってきました。
そんなわけでお昼は乗り継ぎのあいまの函館駅ホームで立ち食いそばに変更(笑)
函館から海峡線に乗り換えると、途中函館山が見えます。時間があれば函館にも一泊くらいしたかった。
トンネルを抜けて初めての新青森へ。海峡線の途中駅では、予約をすれば見学できるようでした。今度機会があったら寄ってみようと思います。
新青森からははやてに乗車。長い電車の旅も、新幹線に乗ってしまうとあっというまでした。
[洞爺湖温泉 大和旅館](2011年10月宿泊)
■泉質 炭酸水素塩泉 硫酸塩泉 ナトリウム・カルシウム塩化物泉
■所在地 北海道虻田郡洞爺湖町洞爺湖温泉 105
■楽天トラベルへのリンク→洞爺湖温泉 嗚呼、青春の宿 大和旅館