年末年始にかけて知多半島に行ってきました。知多半島は何回も行ってはいるのですが、あまりゆっくり歩いたことはありませんでした。今回、年末の30日に一泊するつもりでネットで宿を探してみたところ、常滑の大野町という駅の近くで激安の「平野屋旅館」を発見。予約はすぐ取れたので、30日の午後からでかけました。素泊まりで2900円。築100年以上の建物だそうです。すごく楽しみ。

しかし30日はさすがに新幹線が混んでいて、「のぞみ」の空席はまったくありません。駅の窓口でいろいろ聞いたところ、「こだま」のグリーン車なら席が少しあることがわかりました。3時間くらいかかります。「のぞみ」の倍くらいの所要時間ですが、立って行くよりいいと思い、これで行くことにしました。

しかしさすがに「こだま」は遅い。名古屋についたのがもう夕方で、宿に着くのもだいぶ遅くなりそうでした。宿の周辺には店がないと聞いていたので、名鉄のコンビニで弁当を買い、夕食はこれで済ませることにして、名鉄に乗り換えました。

まっ暗くなってから到着した大野町駅には人影はまったくなく、駅前にもにぎわいはありません。なぜこんなところに宿があるのかと思いつつ、駅から街道に出て、5分程度のところにあるはずの宿をめざしました。

しばらく行くと遠くに宿らしきあかりが見えてきました。

DSCN2348

暗くてよくわかりませんが、やはりかなり古い建物のようです。なかなか雰囲気がいいです。

DSCN2350

交差点に面した宿の正面が、斜めに切り取られたような変形建築。これは古そう。古い商人宿らしい雰囲気がめいっぱい漂っています。

宿に入って声をかけると女将さんが出てきて、「もう120年たつ建物なので、あちこちガタガタします。申し訳ありませんがご了承ください」などといいながら、2階の部屋に案内してくれました。

DSCN2355
DSCN2360

部屋は6畳で、ふとんが一式出してあります。テレビや暖房器具もちゃんとありました。これで2900円なら上等。まったくもって期待通りの部屋だったので、うれしかったです。食事は頼んでいないので内容はわかりませんが、2食付きだと4700円になるようです。

女将さんが設備を案内してくれて、冷蔵庫やポットは別の納戸のような部屋にそろっていました。

DSCN2358

2階の廊下はせまく、入り組んでいて構造がよくわかりませんでした。部屋数は多そうです。

DSCN2356

浴衣もあったので借りましたが、かなり年期が入ったくたびれた感じの浴衣でした。糊の効いた固さがないので、お肌が弱い人でも大丈夫。

DSCN2365

お風呂は家庭用サイズですが、お湯の出も良く、まったく問題ありませんでした。私は長湯が好きなので、適当にうめながら長湯しました。この日はえらく寒くて風も強かったので、お風呂が気持よかったです。

DSCN2369

お風呂上がりには、みすぼらしい夕食。しかし本当に弁当を買ってきてよかった。この付近に営業している飲食店などは見当たりませんでした。コンビニや商店もなし。食べ物の入手は難しそうでした。そう思うと399円のコンビニ弁当がとても貴重に思えて、大事に食べました。

DSCN2377

常滑市内に泊まるのは初めてですが、何となく焼物で有名だったはず。最近は中部国際空港ができたので、交通拠点としても発展しているのかもしれません。宿でもらったパンフレットを見ると、この大野町周辺は古い商家などが残っているようです。翌日に散歩してみようと思いつつ、この日は早く寝ました。前日が徹夜だったので、ぐっすり寝てしまいました。

朝になって見ると、部屋の中はものすごく寒くなっていました。しかもこの日も風が強く、すきま風ががんがん入ってきます。ふとんから這い出して温風ヒーターをつけると、すぐに暖かくなりました。ちゃんと機能する暖房器具があってよかった。去年の年末に泊まった八戸の宿は、ストープ2台つけても寒かったことを思い出しました。

窓から外を見ると、昨夜は気がつきませんでしが、宿の前の街道にも古そうな家が並んでいます。

DSCN2384

でかける前にちょっと宿の写真を取っておこうと、2階の廊下や1階の入り口などを撮影。

DSCN2388
DSCN2389
DSCN2393

そんなことをしていると女将さんが出てきて、「お客さん、もし古い建物に興味がおありなら、ちょっと変わった造りの部屋があるのでご覧になりますか」と声をかけられました。そういうことであればぜひとも見せてほしいと頼むと、再び2階に案内され、私が泊まった部屋のさらに奥にある部屋に通されました。

DSCN2395

こちらは床の間付きの凝った造りの部屋でした。障子の明かり取りや、縁側の屋根の細工なども非常に珍しいものだそうで、確か川上貞奴の別荘と同じ造りだといっていたような。「うちの宿はペットオーケーなのですが、この部屋だけはペットはお断りしています」ということでしたが、当然でしょう。

1畳くらいある床の間も杉の一枚板だそうで、建築の専門家に聞くと、今では材料がなく再現不可能だといわれたくらい貴重だそうです。「一枚板でもかなり頑丈ですから、人が乗っても大丈夫です。乗ってみますか?」とといわれたので、一応乗ってみました。あまり床の間に乗った経験がないので、ほかとの強度の違いは評価できませんでしたが。

DSCN2398
DSCN2399

欄間の細工も凝っているそうですが、「最近はプライバシーを重視される傾向が強いので、最近手直しした時に板でふさぎました。また世の中が変わって、古い造りが受け入れられるような時代になったら、板をはずせば元通りになります」ということでした。こういう宿が好きな人は、欄間の素通しなんて気にしないような気もしますが、やはりそうもいかないのでしょう。

再び1階にもどって、入り口付近も解説してもらいました。出入り口とその上の部屋は五角形の変わった造りで、120年前にこの宿を建てた時から、かなり凝った造りだったことがわかります。昔の古い飲食店の営業許可証も掲げてありました。

結局このあたりは海産物や陶器、薬などを扱う商人が行き交う街道で、昔はとても繁栄していたようです。大野町というのは、城跡も残る城下町だそうですが、確かに以前の繁栄のなごりが、周辺の家からも感じられました。

DSCN2401

許可証の文字は読みにくくなっていますが、写真を撮りに来る人もいるようです。

女将さんはまだ若い人だったので、「この家のお嫁さんですか?」と聞いてみたところ、「いえいえ、2~3年前に3日間だけ手伝ってほしいといわれてアルバイトできたんです。なぜかその後居ついてしまいました。もとは郵便局員だったんですけど」と笑っていました。

でも、たまたま働くことになったこの家が気に入っているようで、「古い建物で不便もおかけしていますが、それでもお客様がいらしてくださるおかげで何とか維持できています」といっていました。やっぱり家族的な雰囲気の宿なので、常連が多いのかもしれません。女将さん、朝の忙しい時間にも関わらず、建物を案内してくれてありがとうございました。

そんなこんなで宿を出ると、何と雪が舞っていました。どうりで寒いはずです。温暖な知多半島で遭遇する雪は貴重かもしれません。

DSCN2404
DSCN2410

この宿は伊勢湾台風の被害にもあったようですが、それでも建物が無事に残ったのは何よりでした。

ちょっと周辺を歩いてみようと思ったのですが、雪と風でほとんど泣きそうでした。しかし、今度いつこのへんに来れるかわからないので、無理やり歩きました。

DSCN2411

宿の前の街道。いい雰囲気です。

DSCN2416

歩いて5分程度で海へ。天気がよければセントレアや対岸の四日市方面などが見えるのかも。とにかく強烈な風です。カメラのレンズにも雪がたまる状況。

さらに歩くと、お寺があって、付近に2軒の宿を発見。「門前屋」と「恩波楼」。こっちも「平野屋旅館」ほどではないですが、古くてなかなか良さそうです。

DSCN2418
DSCN2421

こんな宿があるということは、やはり昔はかなり栄えたところなんだなと思いました。

さらに歩いていくと川の向こうに古い家並みが見えたので、行ってみることにしました。

DSCN2425

川を渡ってみると、こちらにも古い商家群がありました。このへんは、観光地としてもある程度有名なところのようですが、私はまったく知りませんでした。

DSCN2429
DSCN2431

そんな感じで思わぬ歴史的な街並みに出会い、寒いながらも滿足して再び大野町駅をめざしました。

DSCN2441

昨夜は暗くてよくわかりませんでしたが、駅前ではえびせんべいの店が営業しているほか、商店街の廃墟がありました。一軒だけ、営業しているかもしれない「喫茶店エルザ」があったので、ここで暖まろうかと思いましたが、まずは一気に常滑駅まで行くことにして、寄るのはやめておきました。

DSCN2438
DSCN2439

駅前にも神社らしきものがあり、やはりそうとうな歴史を持った町だということが実感できます。市街地は狭いエリアに密集していますが、おそらく昔は商店や飲食店もたくさんあったのだと思います。もっと時間があれば、さらに探索してみたい感じのところでした。

このあと名鉄に乗って常滑駅をめざしました。常滑駅前でも古い旅館を発見したのですが、その話は次回にまわします。

DSCN2443

[平野屋旅館](2010年12月宿泊)
■所在地  〒479-0866  愛知県常滑市大野町2-84
■楽天トラベルへのリンク→
平野屋旅館
 
人気ブログランキングへ にほんブログ村 旅行ブログ 温泉・温泉街へ