鳥羽の港から「神島」に寄って東京にもどる──。この計画に沿って、答志島、神島、管島を順番に回るルートの市営船に乗り込みました。10時40分発。けっこう乗客がいます。

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まず答志島の和具港に寄り、そのあとが神島。神島は最初から遠くに見えていましたが、どんどん近づいていきます。よく晴れた日に、島の多い海を走る船の気分は最高!!   ほんとうに気持がよかったです。

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船は小型ですがけっこう近代的なやつで、スピードも出ていました。遠州灘と伊勢湾に面した狭い海峡なので、けっこう潮の流れが早いのかどうか、揺れが激しくて、立っていると危険な感じでした。しかし上層キャビンの客はみんなけっこう歩き回りながら周りの風景を見たり、撮影したりしていました。

「神島に寄ってから東京に帰る」というのは、かなり酔狂な企画だと思ったのですが、これだけ乗客がいるところを見ると、それなりに一般的な観光ルートなのかもしれません。

港に近づくと海岸に沿ってけっこう人家もあり、船もたくさん繋留されています。

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さらに意味もなく寄ってみた(©ドンさん)

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「山海荘」という民宿らしき建物の看板も見えました。もし日程があえばこの島に1泊したかった。

浮桟橋の船着場にはちょっとした待合室があり、ここはクーラーがきいていました。いちおう確認してみると、伊良湖岬に行く船は午後2時出航。だいたい2時間30分くらいこの島で時間がありました。

いよいよあの「潮騒」の島に上陸。まさかこんなふうにして突然訪問することになるとは思いませんでした。こんなに無計画でいいのでしょうか。しかし天候に恵まれて、桟橋から見ても本当に海がきれいでした。

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「潮騒」は小説も読んだことがありますが、私の場合、やっぱり印象が強いのは山口百恵・三浦友和版の映画です。

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その昔は吉永小百合・浜田光夫版もありますが、こっちはさすがに見てません。

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ほかにも何回か映画化されていますが、とにかく小説は、三島由紀夫としては珍しい純粋な恋愛小説で、島の漁師・新治と海女・初江の物語。「神島」は「歌島」という名称で舞台になっいてました。

桟橋のそばに小さな島の全体像がわかる観光案内版があったので、これを参考に計画を立てることにしました。 

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基本的には歩いて2時間ほどの島を周回する道路があり、これが一般的な観光コースのようです。これを回ると景色のいい灯台や、小説でも重要な舞台となった「観的哨」という旧軍施設の廃墟などを見学することができます。この廃墟では、有名なシーンが繰り広げられるのですが‥。椎名誠が書いた「わしらは怪しい探検隊」という本に出てくる浜もあるそうですが、しかしかなりの上り下りがある悪路のようで、迷いました。

待合所の人に聞いてみると、「この暑さでは、やめときなさい」という感じでした。ただ平地を2時間歩くならまだしも、スーツと革靴で山道はきついかも。しかもけっこう重い荷物を持っていて、それを預けられるようなコインロッカーなどもありません。まあ、頼めば港に一軒だけあった食堂あたりで預かってくれたかもしれませんが。

とにかくいったんその食堂に入ってアイスコーヒーを飲みながら、地図などを見て考えました。やはり普通に歩いて2時間かかるということであれば、船に遅れる危険もあることだし、一周するのはあきらめることにしました。しかし、港で一緒だったおっちゃん、おばちゃんたち15人ほどの団体は、最初から一周する計画だったらしくトレッキング装備で元気に出発していきました。同じ船に乗っていた若い男女のグループは、釣竿を持って埠頭へ。

ひとり残された私は、まあ、しょうがないので一応今度泊まる時のために「山海荘」をチェックして、そのあと映画にも出てくる「八代神社」にでも行ってみることにしました。

しかしどこに行くにもコンクリートの階段だらけの集落です。山に貼りつくように町ができているのでしょうがありません。

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「山海荘」もこんな階段の途中にあり、なかなか立派な旅館でした。見た感じ、あまり島の宿という風情はなく近代的な建物です。宿泊客もけっこういるらしく、若い女性客が歩いてきたので「これから一周するんですか?」と聞いたら「わたしたちはきのうから泊まっていて、もう一周してきました。けっこうきついですよ」と笑っていました。やっぱりやめておいてよかった。

この宿は日帰り客向けには昼食も出してくれるみたいです。ご当地ハンバーガー「とばーがー」ののぼりも出ていました。

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荷物を持っているのでけっこう大変なのですが、とにかく山の上にほうに向かってみることにしました。狭い路地に古びた民家が並んでいて、素朴ないい雰囲気です。

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少し行くと時計がありました。昔はここの時計台が島で唯一の時計で、島民はみんなこの時計に頼って生活していたそうです。

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このすぐ近くに昔の洗濯場がありました。ここも昔は島の生活にとっては貴重な水場で、また島民のコミュニケーションの場だったそうです。この前にある「寺田さん」というお宅は、三島由紀夫が滞在した時に世話をした家だということです。

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さらにのぼっていくと、「八代神社」に向かう別れ道があったので、そっちから神社に回ることにしました。この付近の高台の道は眺めがよく、集落全体を見渡すことができました。

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せまい土地に、けっこう家が立て込んでいます。向こうの丘にはお寺らしき建物もありました。しかし急斜面に町ができているので、生活するのは大変かもしれません。

このすぐそばが八代神社への石段だったのですが、とてつもなく長い階段で、はるか上に鳥居が見えました。私はふだん長い石段の上に社がある神社の場合、めんどうくさいので下から拝ませていただくことにしています。しかし今回ばかりはトレッキングをやめたので時間があるわけで、とにかく上がってみることにしました。

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この階段は吉永小百合ものぼったみたいです。映画のスチールが看板になっていました。

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しかし実際にのぼってみると、吉永小百合は笑いながらのぼっていますが、かなりきつい石段でした。200段以上。荷物があり、猛暑であることを別にしてもきつい。太股があがらなくなってきました。途中で何回も休みながら、ようやく上の境内に到着。もう全身、水浴びでもしたように汗だくです。

さらに上がったところにある最後の鳥居をくぐると、何か作業していたおっちゃんが「こんにちは」というので、私も息絶え絶えで「こんにちは」とあいさつしました。

しかし途中の眺めは最高でした。知多半島はすぐ近くにはっきりと見え、島のけっこう近くを伊勢湾フェリーらしき大きな船が通るのも見えます。渥美半島は方角が違いますが、もっと近いはずです。

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この景色を見ただけでも、「のぼってよかった」と思いました。境内は森があってまだしも涼しいので、ここで「海月」でもらったおにぎりを食べることに決定。

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なんだかよくわからない写真ですが、おにぎりは昆布とたらこの2種類。飲物は生ぬるいお茶しかなかったですが、実においしかったです。日陰で風が通ると一瞬涼しい気がします。シチュエーションと食べ物が関連づけられた記憶は強く残る。という私の法則からすると、この境内でのおにぎりのおいしさはずっと忘れないでしょう。「海月」の女将、「八代神社」のおっちゃん、その節はありがとうございました。

神社でけっこう時間を過ごしたので山をおり、集落をもう少し見て歩きました。桟橋から上がってきたところの通りには、さっき紹介した「タコめし」なんかを食わせる食堂があって、その前の通りがいってみれば島のメインストリートです。

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公共施設や郵便局などもこの通りにありました。
しかし車がまったく通らないので、子供がスケボーで遊んでいます。おそらく交通事故がほとんどない島。

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暑い中を神社にのぼったので、改めて自販機でアイスコーヒーを買い、公民館みたいな建物の前のベンチで飲みました。やれやれと思っていると、島一周トレッキングにでかけたおっちゃん、おばちゃんたちが、出かけたのとは反対の方角から戻ってきました。なんという体力。どうみても60~70くらいはいってそうなグループなのに。

元気なおっちゃん、おばちゃんたちを見ると、ヘタレてしまったことを反省しました。しかしたぶん一緒に歩いていたらみなさんに迷惑をかけることになったかもしれないので、やめておいて正解だと思います。

そんな感じで1時30分くらいになり、浮桟橋には伊良湖岬に向かう船も到着していました。すごく小さい船でした。近くにいって聞いてみると、「5分前くらいに来て、船の中で料金を払えばいいから」ということでした。

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狭い船室に乗船。船が小さいのですごく揺れるし、海面すれすれに座っているような感覚なのでかなりスリルがありました。神島は鳥羽市に含まれるのですが、距離的には伊良湖岬のほうが近いので、15分くらいであっという間に到着。

伊良湖岬にはさすがに大きなターミナルがあり、大きな売店もバスもタクシーもありました。結局そこからはバスで豊橋鉄道の「三河田原」という駅まで行き、そこから豊橋鉄道に乗って豊橋に到着。

新幹線で東京についたのは夜になりましたが、やはりほんの少しとはいえ「神島」に寄ってよかったと思いました。ただ、やはり少なくとも1泊はしたい。そして島一周のトレッキングをしないことには、本当に行ったことにはならないな、と思いました。

[神島  山海荘]
■所在地 〒571-0001 三重県鳥羽市神島町75
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