鳥羽市といえばまっさきに思い浮かぶのは「鳥羽一郎」だという人も少なくないと思いますが、私の場合は「真珠」と「海女」でした。ここも伊勢神宮と同様、高校時代に一度来ていますが、まったく記憶がありません。今回、伊勢から近鉄に乗って鳥羽駅についたのは3時くらいでした。

天気がいいので鳥羽湾がきれい。駅のすぐそばに「日和山」という小高い丘がありますが、ここは昔の漁師が天気を観望するのに絶好の場所だったのではないでしょうか。

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鳥羽での宿は「旅館 海月」を予約してありました。駅からも近く、「日和山」を背中にくっつけたような山の斜面ぎわに建っていました。

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まだチェックインには早かったのですが、駅のすぐそばなのでとりあえず行ってみました。この宿を選んだのは、宿のホームページで宿の歴史を読んだからです。 この宿がある通りは昔の鳥羽街道で、岩崎通りと呼ばれた主要街道だったそうです。

創業は明治時代で、船大工で棟梁の江崎久助さんという人が、日本伝統の木造船を造る造船所を立ち上げ、商売で江戸や上方、三河などを行き交う商人や船人が泊まる船宿を建てたのが前身ということです。宿のホームページには、昔の宿の写真も出ていましたが、実にいい感じです。

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宿のホームページには、昔の海女さんのようすも。写真はどちらもホームページからお借りしました。

宿の写真は、もう大正か昭和のような気がしますが、もしこんな建物で現在も営業していたら、本当に貴重な宿になっていたことでしょう。すでに建て替えられてこの写真の面影がないのは残念ですが、しかしそれだけの歴史を持った宿ということです。

一応宿の場所を確認した後、再び駅に戻り、駅に隣接した古びた商業ビルで食事をしました。近海の魚介類を出す店でした。この日は宿に夕食を頼んでいないので、3時くらいに食べてしまっても別に問題ありません。

ここで頼んだのが刺身の盛り合わせと大あさり焼きでした。

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この大あさりがあまりにもおいしかったので、今度はネギを加えて醤油焼きにした別バージョンの大あさりを追加で頼んでみました。

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これがまたおいしかったのですが、貝殻に出ている汁を飲んでやろうとして口を付けたら思った以上に熱く焼けていて、くちびるをやけどしてしまいました。店の人が出す時に「すごく熱いから気をつけて」といっていたのに、いいかげんにしか聞いていなかったのが失敗でした。

そのせいで唇を冷やす必要が生じたため、やむなく生ビールを3杯もおかわりしてしまいました。

このあとすぐにチェックインしても良かったのですが、宿方向に歩いていると、宿のすぐ近くで公開されている古民家を発見しました。こういうのを見ると、つい寄理道してしまいます。

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この家は鳥羽に町医者として長く住んでいた、「伊良子清白」という詩人の家だそうです。見学は無料。町医者をやっていたので診察室などもありました。私が中の様子をうかがっていると、「どうぞどうぞおあがりください」と、案内のおっちゃんが出てきました。伊良子清白という人はまったくの初耳で知りませんでしたが、「孔雀船」という有名な詩集の作者で、明治詩壇の鬼才といわれた人のようです。

この家の案内をしてくれたおっちゃんがいうには「伊良子清白の詩は文語調だったため、その後の自然主義のトレンドに乗り切れず、詩人としては、あまり評価されずに終わりましたが、その後再評価されました」ということでした。あちこちを漂白した末に鳥羽市に落ち付いて町医者をやっていたそうで、「鳥羽では詩人というより、医者として知られていました」ということでした。

この家が建っているのは、実際に住んでいた時とは違う場所なのですが、この家からも鳥羽湾の島々がよく見え、さらにちょっと角度を変えると、三島由紀夫の「潮騒」の舞台となった「神島」もはっきり見えるということでした。

とにかくこのおっちゃんは博識で、1階から2階にかけてマンツーマンで案内してもらいましたが、建物の構造から建築資材の特徴、さらに目の前に見える島の歴史や、江戸川乱歩が鳥羽に滞在していた話しなど、いろんなことを語ってくれました。本当におもしろかったです。ただ、あまりに熱心に説明してくれるので、内部の写真は撮り損ねてしまいました。とにかく、本当に住んでみたいようないい造りの古民家でした。

さらに歩いていくと、かの有名な「ミキモト真珠島」がありました。ここでは海女の仕事を見せるデモンストレーションなんかもやっているみたいでしたが、時間が遅いため入るのはやめておきました。その近くには鳥羽湾を遊覧する船も浮かんでいました。

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龍宮城だかなんだか知りませんが、どういうセンスなのでしょう。でも日本の観光地にはあちこちにこんな派手な遊覧船がありますね。鳥羽の海と龍宮城がどういう関係があるのか。よくわからないので、とにかくこれに乗ってやろうと思いましたが、発券所に行ってみると、最終の船がちょうど終わった後でした。

そういうことをしているうちに5時くらいになったので、「海月」にチェックイン。大女将なのか若女将なのかわかりませんが、とにかくとんでもない美人女将が登場。私は芸能人かと思ったくらいでした。言葉は暖かい感じの関西系アクセント。とても洗練された応対で、3階の部屋に案内してくれました。

宿自体は昔と違ってホテルのようなビルですが、部屋は20畳敷きの2間続きで、全体に古びてはいるけれど、私などはめったに泊まったことがないような立派な部屋でした。

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これだと広すぎて、私ひとりでは不便なくらい。ちょっと横になって休んでいるうち、けっこう時間が立って8時くらいになってしまいました。

そうなると、3時頃にビールとおつまみを食べただけで、まともな食事はしていないので、ちょっとお腹がすいてきました。それで、どこか近所でラーメンでも食べたようと思ってでかけることにしました。

宿の前の通りは昔の繁華街かもしれませんが、けっこう寂しい感じです。

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この通りには魚を食べさせる店は何軒もありました。ただ、午後に刺身と貝を食べたので、「できればラーメンがいいな」と思ってしつこく探していると、ついに発見。「中華食道 味一」。

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すかさず入ると店内はいい感じに寂れています。あとはラーメンが当たりかはずれか。

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普通のラーメンを頼んで出てきたのを見ると、スープの色はちょっと濃い感じがして、かまぼこが入っていたので、「和歌山ラーメン系の豚骨か」と思いました。それはそれで好きなのでいいのですが、食べてみると昔懐かしいシンプルな醤油ラーメンで、実においしかったです。チャーシューもおいしかった。ここのおやじ、店に入った時は中日スポーツかなんか読んでいて、あまり愛想は良くなかったけれど、ラーメンについてはただ者ではないと感心しました。

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これで無事食事も済んだので、ちんたら散策しながら宿に帰りました。女将さんが出迎えて「お風呂に入んなはれ」というので、すぐに4階大浴場に直行。このお風呂は翌朝にも入りましたが、海がよく見えて眺めのいい大浴場です。この日午前中は伊勢神宮付近を歩き回って疲れていたのかもしれません。すぐに寝てしまいました。

翌朝は7時30分頃に朝食を頼んであったので、食事処に行くと囲炉裏がいくつか切ってある大きな部屋でした。食事の内容はまあ普通だと思いますが、味噌汁にはやはりこのへんの物らしい海草が入っています。これが濃厚な磯の香りがしておいしかったです。

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フロントに降りてきて精算をしていると、女将さんが「お客さんはお仕事ですか? 今日はこれからどちらへ?」というので、「仕事で来たけど、もうとっくに仕事は済んで、遊んで歩いています。今日は東京に帰るつもりです。でも、どっか近くの島にでも寄ってみようかな」などと話していると「伊良湖まで行く伊勢湾フェリーが9月で廃止になるそうなので、乗ってみたらどうですか?」といわれました。

鳥羽から伊良湖岬へ。「その企画は、ただ電車で名古屋に戻って新幹線で帰るより、なかなかいいではないの」と思いましたが、どうせ船で渥美半島に向かうのなら、例の「神島」へ寄れないものか。三島由紀夫の「潮騒」は私の場合、小説よりも映画の印象が強いのですが、その舞台となった島。吉永小百合も山口百恵もこの島の若い海女の役で、純愛を繰り広げる名作です。小説では「歌島」という名前になっていました。

「神島に行くなら10時前くらいの市営船があるはずやから、今から行けばちょうどいいですわ」と美人女将がいうので、とにかく歩いて10分くらいの港に向かうことにしました。問題は島に渡ったあと、さらに伊良湖岬に行く船が都合よくあるかとどうか。さらにそこから新幹線駅である豊橋までのアクセスは大丈夫か?という点です。まあ港に行けばわかるはず、と思って行くことにしました。

出がけに女将がおにぎりを2個くれました。「趣味で作っているおむすびですけど、よかったらお持ちになりますか」と聞かれたので、ありがたくもらいました。これから孤島に渡れば、飲食店があるかどうかもわかりません。おにぎりを持っていればどれだけ心強いか。心から感謝して宿を後にしました。

港に行ってみると、旅客ターミナルもかなり古いのですが、なかなか大規模でした。いろんなルートの船が出ています。こっちにも変な遊覧船がいました。

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海女の像も置いてありましたが、地元の中学生か、あるいは観光客か誰かが乳首にいたずら。必ずこういうことやるやつがいますね(笑)。

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とにかくいろいろ時間を調べた結果、神島に行く船は10時40分頃に出るやつで「答志島」に寄ってから「神島」に行き、そのあともどって「管島」に寄ってから最後にまた鳥羽に戻るという周回船があることがわかりました。さらに神島からは伊良湖岬へは別の会社の観光船があるようで、おそらく神島では2時間ちょっとの時間が取れるということがわかりました。そうなればもう、気持は三島文学の世界へ。

ちょっと待ち時間があったのでターミナルのUFOキャッチャーなんかで遊びながら時間をつぶし、いよいよ市営の連絡船に乗って鳥羽を出港しました。

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このあと神島に寄ったのですが、その話は次回にします。

[旅館 海月](2010年8月宿泊)
■所在地 〒517-0032 三重県鳥羽市鳥羽一丁目10-52
■楽天トラベルへのリンク→旅館 海月(三重県)
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