木江の古い町並みが残る路地を出たあと、今度は町の中心街に向かってみました。

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だいぶ歩いて疲れたし、暑くて汗だくだし、どこかに喫茶店でもあればいいな、でもないだろうな、と思いながら歩きました。百貨店はありましたが、もう廃業しているみたいな感じです。人通りはあまり多くありませんが、自転車にのった小学生ぐらいの子供が、「こいつは何者か?」とうかがうような感じで、「こんにちは」とはあいさつしてきました。

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この通りの先にめざす「徳森旅館」を見つけました。この旅館は今は営業していませんが、最近までやっていたそうです。そもそも大崎上島に渡ろうと思ったのは、この宿を見てみたいと思ったからです。だいぶ手間取りましたが、ついに目的の宿を発見することができました。

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思った以上に重厚で風格を感じる木造3階建ての宿です。造船や風待ち港としてにぎわっていた頃は、木江でも最高の宿として知られていたのだと思います。こんな宿が商売をやめてしまったなんて、本当に惜しい。

さらにこの宿が変わっているのは、宿の裏に入り江が入り込んでいて、船着場になっていることです。小さい船なら付けられる感じなので、実際に船でやってくるお客もいたのかもしれません。ここの3階の部屋から港を眺めて、のんびりくつろいでみたかった。

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宿の前は厳島神社。なかなか立派な社殿がありました。木江には金比羅様もあったし、広島本土と四国側と、両方の人間が入り交じり、交流が盛んだったことがわかります。

しかし喫茶店はやはりなさそうです。お金をおろすために郵便局を探している時に、スナックとか焼肉屋なんかはありました。「ニュー カープ」(笑)。でもこの店もやっているのかどうか。

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木江の町全体が、ちょっと寂れ傾向にあるのかもしれません。集落は海岸に迫った山と海の間の狭いスペースに密集していて、山の中腹にも家がたて込んでいます。フェリー乗り場から離れた港の付近では、船関係の作業場の廃墟みたいなのもありました。

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木造5階建ての建物もありました。これも宿だったのでしょうか。こんなのは初めて見ました。

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小学校の廃墟というか、校門を発見。二宮金次郎と校門だけが残っていました。金次郎先生も、どこか寂しげ。 

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とにかくどこかで休みたいと思って歩いていると「くみあいマーケット」を見つけました。地元の人向けの貴重なスーパーマーケットでしょう。もはやドトールなんかはありそうもないので、ここで休むことにして、缶コーヒーと「モナ王」を買いました。鮮魚売場には鯛のアラなんかがたくさんあって、おもしろかったです。

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「モナ王」はでかいのでふだん一気食いしたことはないのですが、ここでは残してもしょうがないのでバス停のベンチに座って全部食べてしまいました。

さっきあいさつしてきた自転車の子供が、マーケットの前の入り江で孤独に遊んでいます。平日の午前中なのに学校に行かなくていいのでしょうか。本当は「モナ王」を半分あげたい気持でしたが、変に子供に因縁をつけると、最近は不審者扱いされる恐れがあるのでやめておきました。

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町を一回りしましたが、とにかく古い家が多く、私にとっては夢のような町でした。とてもすべての写真は紹介しきれません。繁栄の痕跡が随所に見られ、しかし時代は変わってしまった。そんな寂しさがつくづく迫ってくる集落でした。しかしある程度見てしまうと時間をつぶす場所がありません。しかたないのでフェリーの待合室に戻りました。

もう昼近いので、2時間くらい歩き回っていたことになります。それでも大三島の宮浦港に渡る船が出るまでまだ2時間以上あります。そこであらためて考えたのですが、2時から大三島に渡ったとしても、生口島、因島と無事に渡っていけるかどうかわかりません。交通手段を見つけられず、どこかで宿を探すとしても、島では思うように行かないおそれもあります。

翌日にはどうしても東京に帰らなくてはならないので、とにかく本土に渡って、そのまま大都会・尾道に一泊する安全策を考えました。本土に渡ってしまえばどうにでもなります。その気になれば、尾道サイドから因島に渡ってみることも可能。

待合室の窓口におばちゃんがひとりいたので、「早く広島本土に渡るにはどうすればいいのでしょうか」と聞いてみました。するとおばちゃんは「木江からだと3時くらいまで竹原に渡る船はない。でもバスに乗って垂水か白水に行けば、フェリーがいくらでも出ているので、30分以上待つということはないはずだ」ということでした。

結局、この通りの作戦でいくことにしました。バス停も待合室のすぐ外にありました。「垂水か白水」というのは、おそらくもっと本土側に近い港だと思ったので、それらの港に行くバスの時間をバス停で確認することにしました。バス停のそばにじいちゃんがひとり座っていたので、「地元の人が待っているということは、わりとすぐにバスが来るのではないか」と期待して聞いてみました。

しかし、じいちゃんは「わしゃあ、バスを待ってるんじゃないけんのう。時間はわからんのう」と。ただバス停のところに座っていただけのようです。バス停はフェリーの埠頭のすぐそばで、荷物の揚げ下ろしに使うのか、海中に続く階段が付いていました。

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珍しいと思って、この階段の写真を撮っていると、待合室からさっきのおばちゃんが駆け出してきて、「あんた、あのバスにのればいいんじゃないかな~」と叫んでいます。振り返ると、私がいたバス停とは反対側の少し離れたバス停にバスが来ています。

おばちゃんに「ありがとう」と叫びながら、私も走ってバスに向かいました。運転手さんは私が手を降って駆け寄っていくので、待っていてくれました。バスに乗り込んで行き先を確認。

私 「このバスは垂水か白水まで行きますか?」
運転手さん 「行きます。フェリーですか?」
私 「はい」
運転手さん 「竹原?」
私 「はい」
運転手さん 「それなら白水で降りるといいですね」

ということで、どうやら竹原行きのフェリーが出る大きな港に行けそうなので、やれやれと安心しました。すべてあの待合室のおばちゃんのおかげです。「ああいう世話焼きのおばちゃんが日本中にいて、いろんな細かいことに気を配っているおかげで、日本の安定した平和な社会があるのだ」とつくづく思いました。バス停にいたのんきなじいちゃんも、奥さん頼みで生きてきたのかなあなど‥‥。

このバスにも小学生がたくさん乗っていましたが、みんな降りる時に私に「こんにちは」と挨拶していきます。やはりこのへんでは、「通りがかりの大人にはあいさつしましょう」という指導があるみたいです。東京あたりでは危険を避けるために、知らない人とは口を聞かない傾向が強い中で、なかなか感動的な光景でした。

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バスは海岸沿いを反時計回りに走っていきます。海沿いを周回するバスみたいでした。海の風景もすばらしかったけれど、集落もいくつかあって、古い家もたくさんありました。いい感じの旅館も多かったのですが、やはり営業している感じではありませんでした。

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しばらく乗っていると「フェリー乗場」という看板が見えたので、運転手さんに「ここで降りればいいわけですね」と確認すると、「いや、ここは垂水で、次のフェリーまで1時間くらい待つので、この先の白水で乗ったほうがいいです」といわれました。フェリーの時間まで把握しているなんて、プロフェッショナルな運転手さんです。

白水についたのでお礼をいってバスを降りました。

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白水は広島本土への玄関口らしく、木江とは比較にならない大きな港でした。ターミナルの前には営業している旅館もあり、待合室には売店や立ち食いうどんもありました。船も大きいです。運転手さんがいう通り、ここでは10分くらいで船に乗ることができました。

時間が許せばもっと滞在したかった大崎上島を後にします。船が島を離れていくと、何となく寂しい気分になるのはしかたありません。今度いつまた来れるのか、と思ってしまいます。

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下の写真は島の全景。観光協会のHPからお借りしました。大きな島が大崎上島で、そのほか無数の小さい島があります。左側のちょっとへこんだ海岸線のところが木江で、手前や右側の集落が集まっているようなところが垂水や白水。手前側が北で広島本土になります。私は木江から白水まで、島の南方から北に向かって半分ほど回ったことになるわけです。

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こういう地理感覚もあとでわかったことで、当日はほんとうにてきとうに歩いていました。私はあまり知識を入れないで出かけて、現地でいろいろ発見したいと思うほうなのです。しかし今回は地図も見つけられなかったし、交通手段にも困りました。やっぱりもう少し下調べして出かけないとダメかなあ、と思いました。

[大崎上島・徳森旅館(廃業)](2010年7月見学)
■所在地 〒725-0401 広島県豊田郡大崎上島町木江273-1
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