このあいだ那須塩原駅近くに行く用事があり、この機会に懸案だった宿に泊まってみることにしました。那須湯本温泉街の中にある「老松温泉・喜楽旅館」です。チラホラ聞こえる情報では、いま時まれに見るボロ宿だとか。しかし酸性の硫黄泉である那須湯本の中で、珍しく弱アルカリ性のすごくいいお湯だということです。前からぜひとも行ってみたいと思っていたところです。

ただブログなどを見ても実際に宿泊した、という情報がなく、様子がわからないのでとにかく電話してみることにしました。電話に出たおっちゃんとの会話。

私 「そちらは宿泊もやってますか」
おっちゃん「やってますよ」
私 「じゃあ、あさって1泊で一人お願いします」
おっちゃん 「‥‥でもねえ、うちはすごいボロだからね~」
私 「かまいませんよ。別に泊まれるわけでしょう」
おっちゃん 「いや、でもけっこうびっくりするよ」
私 「いや、かまいませんからお願いします」
おっゃちん 「そう。じゃあいいけど。でも、うちに来たことはあるの?」
私 「そちらにはないけど、那須湯本はけっこう行っているので場所はだいたいわかりますから」
おっちゃん 「いやあ、場所の問題というより、すごくボロだからね~。どうかなあ~」

とあくまでも警戒している様子。「ボロだから泊まりたいんだろうがっ」と口にするのも失礼なので困りましたけど、

私 「でも例えば那須だと雲海閣さんなんかも行ってますし、たいてい大丈夫です」
おっちゃん 「えっ、雲海に泊まってんの? じゃあ大丈夫だ。あそことはいい勝負だから」

ということで急に話しがまとまって泊めてもらうことになりました。当然素泊まりのつもりだったのですが、食事も用意できるということなので2食付きでお願いしました。

当日は、那須塩原で用事が済んだのが午後3時頃。ここから那須湯本まで直行するバスもあるのですが、駅の観光案内所で聞いてみると、「もう今日のバスは3時前に終わっているので、在来線で黒磯まで行ってください。黒磯からだとたくさん出ています」ということなので、黒磯駅に向かいました。

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黒磯駅で少し時間があったので周辺を歩いてみましたが、けっこう渋い商家などがあり、いい雰囲気の駅前でした。でも全体的に寂れた感じが否めません。昔ほどのにぎわいは失われてしまったようです。

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バスに乗って那須湯本へ。何度も来ているところですが、けっこう久しぶりです。温泉神社も久しぶり。足湯なんかもにぎわっていました。このへんで時間としては5時くらい。雨がポツポツと降ってきました。

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泣く子も黙る那須の名湯「鹿の湯」もにぎわっていました。今回は時間がないのでパス。喜楽旅館は「鹿の湯」と同じ小川沿いの谷にあるので、いったん「鹿の湯」まで降りて、谷沿いの道を歩きました。

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本当はもっと宿に近いバス停がひとつ手前にあるのですが、今回は一応那須湯元まで行ってみました。どうせ歩いてもすぐの距離です。

この谷沿いの道をここまで歩いたことはありません。途中にライトアップされた変なお稲荷さんがあったり、ホテルの廃墟があったり、「鹿の湯のそばのそば」という蕎麦屋さんがあったり、ちょっとわからない通りでした。

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宿に行くにはどこかで小川を渡らないといけないのですが、どうも入り口が発見できません。いろいろ迷っていると、古いホテルの廃墟の脇道を発見。この道が正解でした。

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この細い道が入り口だなんて、なかなか気がつきません。というのも、喜楽旅館に行く本来の道は、もっと那須街道の下側に当たる駐車場経由になるので、こちらはメインではないのでしょう。

とても旅館があるとは思えないような雑草が生い茂った先に、やがて建物が見えてきました。

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雨がけっこう強くなってきてレンズに水滴がついてしまいましたが、そんなことを気にしている余裕も与えないような建物です。

もっと寄ってみました。

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キタ~!! これはすごい!!

さらに意味もなく寄ってみた!! (©ドンさん)

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これは宿というよりただの廃墟では???? 「雲海とはいい勝負だ」などといっていましたが、雲海閣さんにしてみると、一緒にされたくないのでは?

この見えている部分は建物の2階部分にあたり、谷底の下に1階がありました。

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もう崩れ落ちそうです。この部屋に泊まれといわれたら無理でしょう。日本人形が寂しげに転がっていたり、けっこう不気味なムードもあります。でも、事前にかなりボロだといわれていたので、気を取り直して、この建物に続く入り口に向かいました。

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この建物が客室とお風呂がある湯小屋棟です。その向かい側の母屋棟にご主人とおばあちゃんがこたつに入ってこちらを見ていました。

「電話したものですが」というと、「ああいらっしゃい。けっこう降ってきたね。部屋に案内しますから、とりあえず向こうの建物に行って、階段を下に降りてください」といわれたので、いよいよ建物に入りました。

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階段からしてもうかなりきています。この階段を下に降りてみると、どこか別の秘密の通路を通ってきたらしく、おばあちゃんが下で待っていました。

お風呂やトイレを教えてもらいながら部屋へ。お風呂の手前に自動販売機などもあって、「けっこう普通の感じじゃないの」と思ったのですが、さらに奥へ奥へと案内されていくと、客室に続く廊下がまたすごい。

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壁はボロボロにはがれています。強い泉気がもらたした結果でしょうか。天井あたりの染みを見ていると、「仄暗い水の底から」でしたっけ、あれを思い出しました。ホラーの館か。

ようやく到着した部屋は、けっこうまとも。ボロ宿好きといっても、やはり私も限度があるようで、ちょっと安心しました。

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お茶を入れてもらいながら、おばあちゃんと話していると、おばあちゃんはここの人ではなくよそから手伝いにきている「親戚みたいなもんだ」といってました。もともとの主人が、戦後この宿を始めたそうで、徐々に客室なども広げて現在の形になったそうです。

ここまでであまりにも長くなってしまったので、後編に続きます。

[老松温泉  喜楽旅館](2010年6月宿泊)
■所在地 栃木県那須郡那須町大字湯本181
■泉質 不明(硫黄性の弱アルカリ泉と思われる)
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