今年の6月頃に寄居に行った時に、町を歩いていて発見した「山崎屋旅館」。
(その時の記事はこちら。→
東京からも近い忘れられかけた観光地 [寄居 山崎屋旅館])

その「山崎屋旅館」にいよいよ泊まることができました。

東京からはかなり近いので、泊まる機会はないと思っていたのですが、先日秩父三峯神社の「紅葉まつり」を見物に行くことにしたので、そのついでに泊まってみることにしました。秩父にもいろいろいい宿や温泉もあるのですが、今回はまずは寄居に一泊し、翌日は秩父の民宿に泊まることにしました。

出発当日は早めに行って長瀞なんかを改めて見物して、それから寄居に戻って泊まろうと思っていたのですが、この日の仕事が終わらずいつしか時間はお昼を過ぎ、夕方に。もうこの日のうちに到着するのがやっとという時間になってしまいました。

最初は池袋から東武東上線経由で行くつもりだったのですが、少しは早いかと思って、熊谷まで新幹線で行き、秩父鉄道で寄居に行くルートをとってみました。

熊谷駅に着いた時点で、もう日が落ちかけてきました。秩父鉄道の改札口はなかなか渋い感じ。

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寄居駅に到着した時はすっかり暗くなっていました。

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家を出る前に宿に電話して「予定より到着が遅くなる」といったのですが、電話に出たおっちゃんは「ああ、大丈夫、大丈夫」とまったく意に介していないようすです。この日は素泊まりだったので食事の問題がなかったせいもありますが、なんとなく、到着時間なんか最初から気にしていないような、鷹揚というかテキトーな感じでした。

すでに前回の視察で場所はわかっているので、寄居駅からまっすぐ宿へ。いよいよあこがれの宿に一泊することになります。

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玄関のガラス戸を開けて中に入ると、生活感いっぱいのあがり。そういえば昔、「リアリズムの宿」というマンガがありましたが‥。すぐにおっちゃんが出てきて部屋に案内してくれました。

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建物がどういう構造になっているのかわかりませんが、思ったより奥行きが長く、その途中にトイレやお風呂がありました。1階で兼業している食堂には、数人の客が入っていました。

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通された部屋は2階の1番奥。この宿は明治8年創業ということですが、おそらくその当時からの状態に近い感じのなかなか雰囲気のある部屋。

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テキトー鷹揚なおっちゃんらしく、布団は何となく曲がって敷いてある感じ(笑)。

↓このシーツはどういう運命の変転で、この宿で使われるようになったのでしょうか。

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おっちゃんが「今風呂は使っているけど、すぐ空くから空いたら呼びにきますよ」というので、「できたら先に食事に出て、それからお風呂に入りたい」というと、「ああ、いいですよ。いつでも」というテキトーな返事。

こういう宿は決まった時間にお風呂に入れといわれることが多いので、私は「いつでも入れるんですか。そりゃあ便利ですね」と聞いてみると、おっちゃんは「そりゃあ、いつでも入れるよ。朝でも夜でも、夜中の2時でも3時でも4時でも。別に一緒に入ろうってわけじゃないんだから、好きな時間に入るといいよ」と笑っていました。

そういうわけで夜の寄居の町に出て、どこか飲食店を探すことにしました。この宿自体が食堂をやっているので、そこに入る手もありました。

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しかし、それも芸がないし、駅前には「華屋与兵衛」があることも知っていましたが、仮にも旅先でそういう店に入ってもしょうがないので、散歩がてら、夜の寄居の町を歩いてみることにしました。
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実は前にみかけたこの食堂を狙いたい気持もあったのです。↓

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しかし営業しているのかどうかはっきりしない感じ。この食堂を写真に撮っていると、通りかかりのばあちゃんが「なんだってそんな写真を撮ってるんだね」と聞いてきました。

ボロい家が好きなんだ、などといっても理解してもらえないと思ったので、「いや別に‥。」とごまかしつつ、立ち去ろうとすると「どっから来たね」と聞いてきます。「東京から」というと、「私も昔は東京に住んでたんだ。新橋だけどね。古い話だから懐かしいね。今は年を取って足腰が弱るので、毎日このへんを散歩してるんだ」などと、いろいろ話好きな感じです。

かなりの年のばあちゃんにしては、妙に派手に化粧をしていて、ウィッグらしきものを使用している感じは、ちょっと不気味というか、おもしろそうなばあちゃんだったのですが、つきあっていると長くなりそうだったので、適当に逃げて食堂探しを続けました。

前に来た時に駅近くの路地で飲食店を何軒か見かけたのですが、結局そのとき見かけたような店以外は見つけられず、路地奥にあるラーメン屋に入ることにしました。

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確か「横浜屋」とかいう店名。ラーメンののぼりが出ているので入ってみると、何となく雰囲気がラーメン屋というより、昔のスナックみたいな感じ。

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若い女将さんがいて「食事できますか」と聞いたら「できます、できます」というので、ここで生ビールを飲んで、ラーメンを食べました。メニューにある「大人のラーメン」は、ラー油がきいた辛口ラーメン。そのほかいろんな変わったラーメンがあって、けっこうメニューに凝るタイプの店だということがわかりました。

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女将さんというか、ママというか、そんな感じの女性に、いちいち「このラーメンはどんなやつですか」と聞くと、ていねいに教えてくれます。「本当は違う名前にしたかったんですけど、それで定着してしまったものですから」などと。

私はビールと野菜炒めの後に、半ラーメンを頼んでみました。オーソドックスな醤油ラーメンでしたが、化学調味料の味がしない自然派ラーメン。私は化学調味料がきいていないとおいしいと思えないほうなのですが、ここはけっこう気合を入れてダシをとっているようで、それなりにおいしく感じました。

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その後常連らしきおっちゃんがきて飲み始めたので、適当に店を後にしました。この店はたぶんラーメン屋でもあるけれど、主に飲み屋として地域に親しまれている店だと思います。

食事後は再び寄居駅前を通って山崎屋旅館へ。駅前も薄暗く、あまり人通りはありません。
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宿に戻って早速お風呂に行きました。思ったより広い近代的浴槽でしたが、浴室自体はかなり古いものだと思います。天井の感じからして、もしかしたら明治時代のものかもしれません。なかなか快適でした。

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全体的にかなり古い旅籠の雰囲気は残しているものの、それなりに便利なように工夫されていることがわかります。地デジがスタートしたせいなのか、薄型テレビも完備。シャワートイレもありました。

何となく玄関といい、廊下といい、片づかない感じのテキトー素朴な感じの宿なのですが、要所要所に近代設備が導入されており、古い宿にありがちな不便というのはあまり感じませんでした。

ほかに宿泊客もいないようだったので、隣のふすまも開けてみました。隣の部屋と比べると、私が通されたのは角部屋のなかなかいい部屋のようです。

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掛け軸や置物なんかもあるし。

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この日は部屋で少しテレビを見て、翌日の山歩きに備えて早寝しました。

翌朝起きてみると天気は曇りでした。雨の予報もあったので、降ってないだけましです。

改めて泊まっている2階を探検してみました。かなり古い建物ですが、明治というほどではないような気もします。


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階段なんかも相当古そうでいい雰囲気です。

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期待していた以上に古い宿で私としてはすっかり気に入りました。こういう宿は本当に貴重なので、長く営業を続けてほしいと思います。

朝食も頼んでいないので、早めにチェックアウトしようとすると、おっちゃんは見当たらず、食堂の厨房にいた女将さんが対応してくれました。

素泊まりだったこともあり、ほとんど野放し状態の対応でしたが、なかなか快適な宿でした。必要以上に客をかまわないというのもある意味気楽に感じます。

改めて外から見ると本当に貴重な建物だと思います。

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できたら、奥の部屋ではなく通りに面した側の部屋に泊まってみたい気もしました。

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通りに面した本館は、奥の部屋とは別棟になっているらしく、階段も別にありました。この通りも古くは栄えた街道筋の雰囲気がありますし、往年の繁栄時代に訪ねてみたいという妄想も。

隣にはよくわからない「美髪忍館」という古い電髪屋さん?もありました。

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このあと秩父鉄道を乗り継ぎ、長瀞、秩父、三峯神社などを巡ったのですが、その話は次回以降にします。

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[寄居  山崎屋旅館](2011年10月宿泊)
■所在地  埼玉県大里郡寄居町寄居938
■楽天トラベルへのリンク→山崎屋旅館

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