大菩薩峠越えの甲州街道裏街道として発展した青梅往還沿いには奥多摩湖の奥に、丹波山という村があります。この村には「のめこい湯」という日帰り温泉施設ができていて、一度日帰りでいったところ、ぬめっとしたお湯の感じが気に入りました。しかもここに附属している食堂の蕎麦がえらくおいしいのです。そこで後日、今度はもっと存分に風呂に入ろうと、1泊して出かけることにし、宿を探しました。

丹波山の集落は、奥多摩湖を過ぎて山中をだいぶ上がっていったところにこつ然と現れます。まわりはすべて山と渓谷に囲まれたこじんまりとした集落で、俗世間を離れた別天地のような趣があります。場所によっては富士山も見えました。

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結果的には何回も行きましたが、最初は「かどや旅館」というところに泊まりました。ここは街道沿いの要所に建ち、おそらく歴史もある立派な宿で、「ボロ宿」とはいえない宿です。料金もそこそこ高かったと思います。「のめこい湯」には歩いていける近さで便利でした。入浴の割引券もくれました。それと食事のボリュームが半端ではない。写真に写っている以外に、普通の蕎麦一人前、ハヤトウリのスープとかが出ました。3階の部屋から丹波山の集落が見渡せ、軒下にはたくさんのツバメが巣を作っていたのが印象的でした。

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もともと「のめこい湯」に入るのが目的なので、宿自体はもっと安いところを探そうと、頼んでみたのが「民宿たちばな」です。こちらも「のめこい湯」まで歩いていける近さです。

このときはちょうど台風が来ており、バイクで出発はしたものの、奥多摩の先で大雨による通行止めにあってしまいました。ここはよく通行止めになります。しかしここまできたら丹波山はもう目と鼻の先なので、通行止めをしているおっちゃんたちに「自己責任」ということで通してもらいました。そうやって苦労しながら、ようやく「民宿たちばな」にたどり着いたわけです。

「民宿たちばな」は小規模ですがきれいな民宿で、期待の「ボロ宿」ではありませんでしたが、家庭的でいい雰囲気の素朴な宿でした。どうやら登山客や釣り目的の客が多いようです。宿のおばちゃんは、「この天気なので朝から何度も電話したのに出ないから、本当に来るのかどうか心配していた」といっていました。こっちは渋滞を避けたいと早朝に出発してたので、連絡が取れなかったわけです。

朝出てどこにも寄らずに来たので到着はちょうど昼前くらいでした。しかし肝心の「のめこい湯」も、青梅街道の通行止めのため、休業になっていました。ここがやっていないとなるとほかに食堂などもあまりありません。宿のおばちゃんがいくつか心当たりの食堂に電話してくれましたが、どこもやっていませんでした。結局宿でありあわせの昼食を出してもらいました。無事に到着してようやく雨から解放され、ホッとしたせいか、この時のビールと食事は本当においしかったです。

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↑は「たちばな」の食事部屋です。結局この宿に昼から籠もって、3食食べてしまいしまた。温泉がやっていないとなると何もすることがないし、外は暴風雨が吹き荒れています。

昼食後は宿のおっちゃんが「一緒に居間でテレビでもみよう」といってくれましたが、早起きして疲れてもいたので、ふとんを出してもらってとりあえず昼寝しました。その「とりあえず」が、結局「夕食まで」になってしまい、昼寝をしにきたようなことになってしまいました。しかし、どうしてよその家にきて昼寝すると、いつも以上に気持よく眠れるのかが自分ながら不思議です。

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夕食は普通のつましいメニューでしたが、「かどや旅館」と同じように蕎麦がついていて、これがすごくおいしかったです。昼食に続いておいしくビールも飲みました。翌朝から温泉も復活。でがけにハヤトウリをたくさんもらいました。このへんでたくさん取れるみたいで、漬物もあったし、ハヤトウリばかり食べていたような気がします。

さらに、その次はすぐ近くにある小菅村の民宿にいきました。ここは丹波山の山向こうで、こっちにも「小菅の湯」という日帰り温泉施設があります。ここから歩いて2分くらいの「山水館」という民宿に泊まりました。丹波山から小菅に向かう山道はたいした距離ではありませんが、なかなか眺望もよく雰囲気のいい道です。

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「山水館」は見た目はかなり古くていい感じでした。2階の客室は改装してきれいにはしてあるものの、建物は古く、襖で仕切った昔風の作りでした。しかも当日はほかに客がおらず「適当に好きな部屋を使っていいから」といわれたので、襖を開け放ち、広々とした気分でくつろぎました。あまり写真を撮っていないのが残念です。

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ここは夕食に大量のヤマメが出ました。宿のおばちゃんによると「大きいヤマメがなかったので、数で勝負した」ということで、塩焼きに加えて、みそ詰めとか、岩魚の刺身とかいろいろ出ました。それと朝食に大量の漬物が出て、これがすごくおいしかったです。

夕餉
やまめみそ詰め
朝餉

この宿では、最近ワサビを知り合いからたくさんもらったということで、川魚やこんにゃくの刺身は自分で1本のワサビをすりおろして食べるという贅沢さでした。ちなみに翌日出発する時にも、ワサビを数本くれました。

どうもこのへんの山中の宿では、宿泊客に何か手持ちの食糧をあげる風習でもあるのか、もらってばかりで恐縮してしまいます。とにかく東京からごく近いこうしたエリアにも、素朴で味のある民宿が多いことに感心しました。

[のめこい湯]
■住所 山梨県北都留郡丹波山村778-2
■泉質 アルカリ性低張性高温泉 「のめっこい」とは丹波山村の方言で「ツルツル」「スベスベ」というほめ言葉。ここのお湯に入ると、本当に肌がツルツルします。

[かどや旅館](2004年8月宿泊)
■住所  〒409-0300山梨県北都留郡丹波山村2583

[民宿たちばな](2004年10月宿泊)
■住所 〒409-0306 山梨県北都留郡丹波山村2578番地

[山水館](2004年11月宿泊)
■住所 〒409-0211 山梨県北都留郡小菅村3555番地
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